ニュースONEでは、11月に行われたアメリカの中間選挙の際、女性の政治への参加について、ニュースアプリのスマートニュースの協力を得て、入社4年目の女性記者が現地で2週間取材しました。

2022年7月に公表された、日本の政治参画におけるジェンダーギャップ=男女格差を表した順位は、146か国中139位と低い位置にあります。(世界経済フォーラム調べ)

先進国の中ではもちろん、女性の権利を制限しているとされているアフガニスタン(107位)やサウジアラビア(132位)をも下回っています。

女性が政治の分野で活躍するにはどうすればいいのか。女性議員が増えているアメリカの現状と背景を取材しました。

■NYの街中は“コロナ前”の光景に…円安ショックでスタバは1人約1500円

 アメリカ・ニューヨーク。4年に1度行われる大統領選挙の真ん中の年に、全米で一斉に行われる中間選挙の3日前、私たちは到着しました。

ジョン・F・ケネディ国際空港では、まだ多くの人がマスクをしていましたが、ニューヨークの街では、歩いていてもマスクをしている人はもうほとんどいません。

【動画で見る】州知事選は最多12人当選確実…トランプ大統領誕生で「女性が政治に目覚めた」

タイムズ・スクエアには無料でPCR検査を受けられるテントが…。同様のテントは街のいたるところにあり、気軽に検査を受けられるのも印象的でした。

 円安の影響で、物価はふだんより高く感じました。スターバックスで「ラテ」「クロワッサン」「ドーナツ」をカメラマンと2人分で18.95ドル。この日、11月5日のレートは1ドル=148.34円で、日本円に換算すると2811円。高価なスタバでした…。

スーパーの野菜コーナーで見つけたアボカドはひとつ約3ドル。日本円で450円近くです。覚悟はしていましたが、取材そのもの以外にも注意を払う必要がありました。

■深夜に街中で「私に投票して」…日本と異なる選挙活動とイメージと違った中間選挙直前のNY

 取材はNYに到着した翌11月6日から開始。中間選挙は連邦議会の上院と下院の議員、そして一部の州知事や州議会議員などを選ぶ大規模な選挙のため、投票日直前は日本の国政選挙のように、街のいたるところで街頭演説をしていたり、ポスターが掲示されているのかと思いましたが…。

この日は世界最大規模のマラソン大会、ニューヨークシティマラソンの開催日で、街には観光客らが溢れていましたが、街頭演説をする候補者など選挙を感じさせるものは見当たりませんでした。

 取材2日目の11月7日の午後。投票日前日のウォール街で、ようやく1人の候補者のポスターを発見。

ヘレン・チウ(Helen Qiu)さん。ニューヨーク州議会議員に立候補した、共和党の候補者です。(※州議会議員は日本における都道府県議会議員)

早速連絡して、ここから車で10分ほどの「チャイナタウン」にある事務所に伺いました。

選挙を目前に控え、多忙を極めているというチウさんは「インタビューは選挙に勝ったら」と詳しく話を聞くことはできませんでしたが、午後9時頃になって、これから投票を呼びかけるポスターをウォール街に貼ると言い、同行しました。

驚いたことが2つありました。まずポスターは、サイズも貼る場所も自由。チウさんは横断幕のようなポスターを木にぶらさげたり、地下鉄の入口に貼ったりしていました。

そしてもうひとつが選挙活動の時間です。日付が変わるころになっても、道行く人に「I hope you vote for me.(私に投票してね)」と呼びかけていたチウさん。日本とは違い、選挙活動の時間に定めはありません。

 そして選挙当日の11月8日。中間選挙は、11月の第1月曜日を含む週の火曜日に行われるため平日です。

街中には「I VOTED」=「私は投票しました」というステッカーを胸に貼って歩く人が大勢いました。

それだけでなく、取材の合間に入ったカフェや古着屋の店員にも、身に着けている人が多くいました。

これは投票するともらえる、日本の「投票済証」と同じようなものですが、このステッカーを貼っている人が大勢いることは、選挙で投票したことが誇りで、周囲にそれをアピールしたいという市民の思いを感じました。

■今回の州知事選では“過去最多”の12人の女性候補が当選確実に

 夜になって訪れたのは、2021年8月、州知事が辞任して誕生したばかりのニューヨーク州初の女性知事、民主党のキャシー・ホークル(Kathy Hochul)さんの集会場です。今回の選挙で再び知事に立候補していました。

会場に着いた午後9時頃には既に大勢の支援者が集まっていて、午後11時過ぎに当選確実が伝わるとキャシーさんが登場し、「ニューヨークの全ての少女と女性に、女性も選挙で当選することができるということを知って欲しい」と女性に向けたメッセージを発信。

 今回の中間選挙では50州のうち36の州で知事選挙が行われ、過去最多の12人の女性候補が当選を確実にしています。

アメリカでは、州知事を務めた人が大統領になるケースも多く、今後有力な「女性大統領候補」が生まれることも期待されています。

■進むアメリカの女性議員の増加…きっかけは2016年の大統領選

 2018年に行われた選挙で女性候補が躍進し、連邦議会では、上院下院合わせて535議席の23.7%に当たる127人が女性議員となりました。(※連邦議会は日本でいう国会)

その前の2016年の中間選挙までは1%程度の増加が続いていましたが、2016年から2018年にかけては4%以上、一気に伸びました。(※2020年は26.9%・144人 いずれもCAWP調べ)

州議会議員の割合も、2020年の中間選挙で初めて30%を超えて30.3%に。日本の都道府県議会における女性議員の割合は11.4%で、アメリカはその3倍近くです。女性議員の活躍が進んでいます。

 ニュージャージー州にあるラトガース大学のアメリカ女性と政治センター(CAWP)で、アメリカにおける女性議員について研究しているデビー・ウォルシュ(Debbie Walsh)所長は、女性候補が増えたのは6年前の大統領選がきっかけだったと話します。

デビー・ウォルシュ所長:
「2016年にドナルド・トランプ氏がヒラリー・クリントン氏の対抗馬として大統領選に立候補し、女性が本当に動員され、活性化したのです」

女性蔑視発言を繰り返し、度々波紋を呼ぶトランプ元大統領が、6年前の大統領選で女性候補のヒラリー・クリントン氏を破ったことで、「女性が政治に目覚めた」と指摘。

デビー・ウォルシュ所長:
「2018年に女性が立候補し、民主党ではほとんどが勝利するのを私達は目の当たりにしました。2018年は、有権者としてだけでなく候補者としても女性が動員され、これまで以上にステップアップして活動する姿を目にした年でした。そしてわかったことは、女性が立候補しても勝てないということではなく、立候補する女性が少ないということでした」

■アメリカの女性に根付く「VOTES For WOMEN」の精神

 市民は女性の政治参画についてどんな思いを持っているのか。ニューヨーク中心部にある投票所で、有権者に話を聞いてみました。

男性(41):
「私は、政府で指導的立場の女性がもっと増えるべきだと思います」

女子大学生(19):
「アメリカでは今、多くの女性が権力のある地位に就いていると思います。21世紀ですから、女性でも男性にできることは何でもできますから。私たちは男性と同じように一生懸命働いています。だから私たちは男性と同じポジションに就く資格があるのです」

黒人の女性:
「男性に反対しているわけではありませんが、女性にも与えられるべき機会だと思います。なぜなら、キャリアを積んでいる人たちが同時に家族を持とうとするとき、その人たちを尊重し、同時にそのような機会を与えるべきだということを、女性政治家たちはもっと受け止めてくれるからです」

 連邦議事堂のギフトショップで、印象的なフレーズをみかけました。マグカップにかかれていた「VOTES For WOMEN」=「女性に参政権を」。

アメリカで白人女性に選挙権が与えられたのが、今からおよそ100年前。自由と平等の国で、女性たちが勝ち取った権利。その精神が、今の女性たちにも強く根付いているように感じました。

2022年12月5日放送