2022年11月、愛知県長久手市に大きな期待を背負ってオープンしたジブリパークには、490億円もの愛知県の税金が投入されている。その経済効果がどうなっているのかを独自に調べた。

■ジブリパーク開園から1か月あまり…意外なところに「経済効果」

 2022年11月、長久手市の愛・地球博記念公園に誕生したジブリパーク。

【動画で見る】490億円もの税金投入…ジブリパークの経済効果を独自調査 重要な“県外からの宿泊客”どれだけいるのか

来園した女性:
「ジブリファンにはたまらなかったです」

別の来園した女性:
「お土産をたくさん買えたので。ポニョを買いました」

開園から1か月、いまもパークには連日行列ができ、多くのファンが訪れている。

ジブリパークに期待されているのが「地域への経済効果」だ。

大村愛知県知事:
「世界中から多くの観光客を受け入れることで、愛知の観光経済を盛り上げていきたい」

オープンから1か月、効果は出ているのか。

調べてみると、それは意外な場所に現れていた。大手焼肉チェーンの「あみやき亭 長久手店」はジブリパークに続く幹線道路沿いにあり、パークの開園以降、客足に変化が出ているという。

あみやき亭長久手店のチーフ:
「10月(1週目)に対して11月(1週7目)は125.1%のお客様に来て頂きました。今までは地域の方が多かったんですけど、県内外いろいろな所から来ていただくお客様が増えた印象があります」

新型コロナの第8波に突入した時期と重なるにも関わらず、ジブリパークオープン直後の11月1週目と1か月前の売上を比較すると、25%も増加したという。

11月から全店で「家計応援フェア」として、割安で販売するカットステーキも、長久手店ではジブリパーク効果と相まって特に売上が好調だ。

同・チーフ:
「ジブリパークも今より広がり、いろいろなお客様が来られると思うので、そういったお客様にあみやき亭という名前を知ってもらえたらいいかなと思います」

■ “県外や海外の宿泊伴う来場客”…専門家が指摘する年間480億円の経済効果達成へのカギ

 早速、経済効果を生み出したジブリパークだが、その整備には、愛知県が施設の建設費や周辺道路の整備費として、あわせて490億円を超える税金を投入している。

県は2023年度、新たに「もののけの里」と「魔女の谷」の2つのエリアがオープンした際の年間来園者数を180万人、その経済効果を480億円と試算。

投入した莫大な税金に見合う効果は得られるのか、経済の専門家に話を聞いた。

中京大学の内田俊宏(うちだ・としひろ)教授:
「県内のお客さんだけで、地元のお客さんがリピーターになるというケースになると、経済波及効果の480億円の達成は正直難しくなると思います」

中京大学の内田教授は、年間480億円もの経済効果を達成するには、来場客1人あたり1万6000円の支出が必要と指摘。オープン間もない現在はグッズの売上が好調なため、一定の水準を維持できていると推測しているが、長期的にみると、県外から宿泊を伴う客が多く訪れないと達成できないと話す。

内田教授:
「長期滞在することによって、他の集客施設に対する消費支出の効果も出てくると思います。県内のリピーターだけではなくて、県外、さらには海外からの来場者を増やすことが必要になってくる」

■「あなたはどこから?」100組の来場者に聞いた結果は

 実際、来園者はどういった地域から来ているのか。2022年12月、平日と休日の2日間に分け、あわせて100組の来園者にアンケートを実施した。

カップル:
「豊田市。車で(来ました)」

別のカップル:
「名古屋市名東区です。ユニバ、ディズニー、ジブリパークみたいな感じで、愛知に住んでいてうれしいなと思います」

家族連れ:
「長野県です。車で来ました」

別の家族連れ:
「埼玉から来ました。(子供の)名前がカンタです」

カップル:
「千葉県です。もう大満足です」

アンケートの結果は、県内が51組、県外が49組となり、ほぼ半々の数字だった。

県外からの客には宿泊をするかも尋ねた。

群馬県から来た家族連れ:
「泊りで。遠いから泊まるしかない」

三重県から来たカップル:
「日帰りです。近すぎるので泊まらないですね」

滋賀県から来た女性2人:
「滋賀県です。日帰りです。(ジブリパーク近くの)イケア寄って帰る」

茨城県から来た女性:
「茨城県です。新幹線で名古屋まで来て、駅前のビジネスホテルですけど取りました。午前中は名古屋城に行って、ひつまぶし食べて、帰ろうかなと思って。今日の夜は世界の山ちゃんに行こうかと」

神奈川県から来た家族連れ:
「神奈川県の横浜です。日帰りですね。泊まろうっていうのはなかった。観光地って言われてもあまり思いつかないです、名古屋城しか…」

県外からの来園者のうち、「宿泊する」と答えたのは約6割の29組。今回アンケートを取った100組の中で見ると3割ほどという結果だ。

この結果について内田教授は、年間480億円の経済効果を生み出せる「可能性のある水準」と指摘した。

■温泉旅館「バブルというほどでは」…経済効果を継続・拡大するのに重要なことは

 実際に周辺の宿泊施設の利用客は、どの程度増えているのだろうか。ジブリパークから車で15分、豊田市の猿投温泉ホテル金泉閣。

猿投温泉ホテル金泉閣の支配人:
「藤が丘駅とこちらをつなぐ無料のシャトルの便を毎日運行しているんですけども、そちらの中に時間を調整をさせていただいてジブリパークも停まって、なおかつジブリパークからもこちらに来られるような…」

ジブリパークとホテルを結ぶシャトルバスの運行を始めたほか…。

お土産コーナーにジブリグッズのコーナーを新設。

さらに、当日のジブリパークのチケットの半券を見せれば、日帰り温泉が200円引きで利用できるキャンペーンも展開するなど、あの手この手で集客を狙っている。

その効果もあってか、これまでは県内からの宿泊客が多かったもののジブリパーク開園後、県外からの宿泊客が増加したという。

大阪から来た家族連れ:
「昨日から来て1泊2日です。2日間チケット取れたのと、1日で回ると多分大変だろうなというのを含めてですね。子供が小さいので、市内のホテルのベッドだとしんどいかなと思って、ここだと温泉で和室があるから」

しかし、想像を超えるインパクトではないようだ。

同・支配人:
「バブルというほどでは、やはり今現状ではないかなと思っています。やっぱり、地元だったり東海圏ではジブリパークがオープンする情報はある程度耳にされているかなと思うんですが、全国的にジブリパークがオープンというのは、あまり知らなかったという印象を正直受けていまして」

ジブリパークに関連した宿泊者はまだ全体の5%ほどで、さらに大きな効果を期待している。

同・支配人:
「遠くから来られるのであれば、必ず宿泊がセットになってくると思うんですね。その時に温泉入りたいという方もいらっしゃると思いますので。『一度行ってみようか』という方が、足を運ぶきっかけをどれだけ作れるかなというところは、外から見ていて一番大事なところなのかなと思います」

愛知県の歴史に大きく刻まれた「ジブリパーク」の開園。滑り出しは好調だが、10年、20年先も地元に良い影響を与え続けることができるだろうか。

内田教授:
「愛知県は製造業が強くて、観光業を積極的にやらなくても地域経済が好循環を実現できたわけですけど、産業構造全体を強化するためにも、観光立県として企業も県民も観光を重要な産業としてやっていくんだという共通認識が必要だと思います」

「製造業」で発展してきた愛知県。観光業で成り立ついわゆる「観光立県」ではなかった長い歴史がある。しかし、テーマパークに500億円近くの税金が投入されていることも事実だ。その経済効果をしっかり享受できるのか、そして今後長期的に人気を維持したり拡大できるのかは、観光に力を入れていくという視点がより大切になる。