愛知県警岡崎署の留置場で男性が死亡した問題からおよそ1カ月が経ちましたが、その後の取材で、男性が葛藤を綴ったメモの存在が明らかになりました。

 店舗の駐車場に集まったパトカーと警察官。2022年11月25日に愛知県岡崎市で撮影された映像には、パトカーの後部座席に1人の男性が乗せられようとする様子が映っていました。

店舗の中から、男性が一部始終を目撃していました。

目撃した客:
「(店の)中にまで『殺せ』って聞こえるから、暴れとるじゃんって。見たらパトカーいっぱいおるし、こうやって押さえつけられて」

 乗せられたのは43歳の男性です。公務執行妨害の疑いで逮捕されると、その9日後の12月4日、岡崎署の留置場で息をしていない状態で見つかり、その後死亡しました。

【動画で見る】葛藤綴られる…警察署の留置場で死亡した男性 父親も知らなかった『メモ』存在明らかに 警察対応の問題点は

男性の父親:
「気持ち的に、最初の時は人を傷つけずに警察に捕まって、やれやれと思った。だけど大間違いだったということ」

こう話すのは男性の父親です。亡くなっておよそ1カ月、整理していた遺品から男性のメモが見つかりました。

<死亡した男性のメモ>
「ありがとうという感謝の心。すみませんという反省の心」

男性には精神疾患があり、忘れないよう書き留めていたのではといいます。

男性の父親:
「このノートの中に挟んであった。ペット以下の扱いをされた子供がむなしくて、悲しくて」

 警察は勾留中に暴れた男性を保護室に隔離し、延べ130時間にも渡りベルト型の手錠などで手足を拘束しました。

<留置担当の署員>
「拘束は長すぎると思ったが、上司の指示がなかったため外せなかった」

関係者によると、担当した署員は警察の聞き取りに対し、こう話したといいます。

また拘束中、幹部も含む複数の署員が、横たわる男性の体を足で動かす様子が監視カメラに捉えられていて、暴行していた疑いが浮上しています。

また、便器に後頭部が入った状態で水を流していた疑いもあるほか、持病の糖尿病の薬を与えていなかったことなどが明らかになっています。

男性の父親:
「適当に足で蹴ったり、便器に頭が浸かっているような感じでも平気でおったり、人間扱いじゃない。自分の子供だったらそんなことできるかって」

 暴れたとはいえ、なぜ男性はこうした扱いを受けたのでしょうか。6年前、車同士の衝突事故をきっかけに統合失調症を発症したこの男性は、「日常生活が著しい制限を受ける」などとされる「2級」の障害者に認定されていました。

遺品から見つかったメモの中には、「悩みと相談事」と題した職場の上司とのやり取りもあり、仕事についての葛藤が赤裸々に綴られていました。

<死亡した男性のメモ>
「いくらやろうと思ってもできないなら居ない方がいい。どうしたらいいか考えても頭の中がぐちゃぐちゃになって、自分で答えが出せない状態なので助けてください」

男性の父親:
「俺もここまで(悩んでいるとは)知らなんだな。自分がだんだん追い詰められたんだろうな」

また「何者かに襲われる」と不安を感じることも多かったといいます。

男性の父親:
「(実際のものと)同じタイプで、ここがもうちょこっと曲がっとった。護身用だわな、護身用。持ち歩いていた」

男性は連行された当時、警察官が来ると様子が豹変したといいます。現場近くの店舗には、窓の格子に金属製の棒で殴ったとみられる跡が残っていました。

 勾留中に暴れたことがきっかけで手足を拘束された男性は、統合失調症の持病について、留置場では医師の十分な診断を受けることができなかったとみられています。

収容施設での問題を研究する専門家に聞きました。

龍谷大学法学部の石塚教授:
「精神科の病院であれば、閉鎖施設だったら暴れてしまうような患者さんっているじゃないですか。その人たちを制止する方法、きちんとテクニックをもっていて対応するでしょ。技術を持っていない人がやれば、当然素人がしていたらとんでもないことになるわけですよ」

精神疾患などが認められた場合、専門家が対応できる収容施設に速やかに移送すべきだったと指摘します。

石塚教授:
「捜査と勾留がくっついちゃっている日本の実務の中では、身柄を遠くにしちゃうのが嫌だったんだと思います。だけどもう1つは、それが当たり前になっちゃっている日本の刑事司法の異常さがあると思う」

男性の父親:
「日本の治安を守る警察がやることか、冗談じゃない。陳謝して謝ってもらいたい」

 男性への対応に過ちはなかったのか、なぜ死亡する事態にまで発展したのか。警察は特別公務員暴行陵虐の容疑で署員らを取り調べるなどし、真相究明に努めるとしています。