11月20日、名古屋市守山区などで野生のイノシシ2頭が出没し、その後も名古屋市周辺で目撃情報が相次ぎました。イノシシの生態について専門家に話を伺いました。

 11月20日、名古屋市守山区の矢田川河川敷を走る2頭のイノシシ。

駆け付けた警察官が拳銃を構えて「撃つぞ!」と大声で威嚇したところ、イノシシは逃げていきました。発砲はせずケガ人もいませんでした。

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逃げたイノシシは体長1メートルほどで、その後も名古屋市周辺で相次いで目撃されました。

 イノシシの生態について、野生動物の研究をしている長岡技術科学大学の山本准教授に伺いました。

イノシシは時速40キロくらいで走り、大人のオスには牙が生えるため、全速力で襲われて牙が刺さると、大ケガや死に至ることもあります。頭が良く、おいしい食べ物があることを知っているので、里山近くに生息しています。

 その他にも意外な習性があるといいます。

山本准教授:
「基本的には臆病な生き物だといわれています。本来は昼行性といって、昼間も行動する動物です」

イノシシは夜行性と思っている人が多いかもしれませんが、本来は昼に行動する動物です。ただ臆病なため、人目を避けられる夜にも動くことがあるといいます。

また、今回は矢田川沿いで多く目撃されましたが、これには理由があります。

山本准教授:
「イノシシは泳ぐのがすごく得意ですので、全然川も泳ぎますし、海も何キロも泳ぐ力を持っています」

イノシシは泳ぐことが得意で、器用に顔を出し、犬かきのように泳ぎます。エサを求めて海を渡り、離島にまでたどり着くイノシシもいるということです。

そして市街地に出てくる時は、山から川の流れに乗って下流にやってくることが多いことから、矢田川で多く目撃された可能性があるといいます。

 もしイノシシに遭遇してしまった時は、どうすればよいのでしょうか。

山本准教授:
「イノシシというのは臆病なので、自分に逃げる余裕があれば逃げてくれると思うんですけど、自分がもう逃げられない・危ないって思うと、最後は人間に突進してきます」

電柱や木に隠れたり体を丸めるなど、刺激しないことで攻撃される可能性は低くなるそうです。

 イノシシによる農作物の被害もでています。被害額は愛知県で年間約1億円、全国で約47億円もあります。また、イノシシの「穴を掘る」という習性によって、金額以上の被害もでています。

山本准教授:
「イノシシってすごく掘るのが得意な動物なんですね。鼻を使ってにおいを嗅ぎながら、バフバフって土を掘ります。掘ることによって、例えば農地の法面が掘られてしまったり、道路の斜面、そういう所がバカバカってイノシシに掘られて穴が開いたり」

農作地やゴルフ場の芝が荒らされたり、斜面が削られて土砂災害の危険性が増すのだそうです。

 山本准教授によると、農村では過疎や高齢化により耕作放棄地が増え、イノシシが里山に下りてきやすくなっていて、「農村を守るための対策」を考えていかないといけないと話しています。