値上げラッシュの中、“激安”で知られる名古屋市天白区のスーパー「タチヤ」がリニューアルオープンし、大勢の客で賑わった。熱意と工夫で“安さ”を維持する店長とバイヤーの奮闘に密着した。

■青果も鮮魚もスペース拡大へ…生鮮食品が安い「タチヤ」八事店がリニューアルへ

東海地区に20店舗を展開するスーパー「タチヤ」は、お値打ちな生鮮食品で有名な激安スーパーだ。

【動画で見る】値上げラッシュも“熱意と工夫”で安さキープ…激安スーパーのリニューアルに密着

2022年6月には名古屋の繁華街「錦」にも出店し、話題となった。

創業は1964年で、天白区の八事店が第1号店だ。

三留店長:
「新入社員の時に旧八事店に配属されまして、同じ店で恩返しができるように」

その八事店が、2022年11月にリニューアルオープンすることになった。オープンを1週間後に控え、新店舗の下見に訪れたのは、店長の三留征(みとめ・せい)さんだ。

三留店長:
「(入口の)外にも果物いっぱい並べるので、果物コーナーあっての入口ですかね。この通りが全部野菜コーナーです」

野菜や果物売場のスペースは、以前の店舗の倍以上になる。冷蔵ショーケースを特注し、鮮魚コーナーも拡大する。

三留店長:
「ウチは青果・鮮魚・精肉と生鮮3品で、占める割合が7割5分から8割ぐらい。生鮮がしっかりしていないとお店が成り立たない」

■「これだけは100円で売らせて」価格を抑えるバイヤーの“必死の交渉”

 リニューアルする八事店では、お値打ちな生鮮食品を、さらに前面に押し出す方針だ。

三留店長:
「お疲れ様です。店舗リニューアルオープン前のミーティングを行います」

カギを握るのは、仕入れ担当の「バイヤー」たち。

スーパーは通常、本部がまとめて一括で仕入れるが、タチヤでは各店舗のバイヤーが市場で直接交渉し、商品の値段を決定する。大きな権限を委ねられている。

オープンまであと4日となったこの日、野菜・魚・肉の各バイヤーが、リニューアルの目玉にしようとしている商品を発表した。

鮮魚担当バイヤー:
「目玉でいきたいのは、朝締めの真鯛一尾1000円で」

精肉担当バイヤー:
「国産豚は100グラム128円で売ります」

野菜担当バイヤー:
「野菜は、鍋物商材を中心に白ネギ100円」

このところ値上げが続いているが、食材の価格を抑えて客に喜んでほしいと、バイヤーたちが知恵を絞る。

野菜担当バイヤー:
「一般食品とかお菓子とか全体に高くなっているので、その分野菜で一気に還元できればいいかなと。(卸売りで)全部買うから安いわけじゃなくて、ちょこっとだけだから少し安くしてとかいうのも戦略としてあるので、その時その時によって臨機応変に一番お値打ちに買えるところを探して」

大量にまとめ買いするだけが、安くする方法ではない。バイヤーの腕の見せどころだ。

リニューアルオープン前日、名古屋市の中央卸市場に野菜担当のベテランバイヤーの姿があった。

青果の仲卸業者との交渉にやってきた。目当ては初日の目玉商品に考えている「白ネギ」だ。

野菜担当バイヤー:
「100円で売ってもいいですか?」

仲買人:
「ハハハハ」

野菜担当バイヤー:
「やっぱ鍋なので今。もう白ネギメインで行きたいなと…これだけは100円で売らせてもらいたい」

「これだけは」と熱意で押し、長年の付き合いがある仲買人から、特売用のネギを格安で購入した。

仲買人:
「ざっとこれくらい(の量と予算)で何ケースほど(必要か)って話は聞いて、たくさん数を買ってもらえるのもあるので、協力できるところは協力していく」

果物担当の若手女性バイヤーは、リニューアル初日の目玉に、旬を迎えるミカンを据えた。

仲買人:
「いくらで売るの」

果物担当バイヤー:
「980円ぐらいで売れると嬉しい」

仲買人:
「これ、熊本の一流のやつなので見た目もいいし、糖度12度以上あるミカンなので、すごい味も乗っていて濃厚。しゃ~ないね」

果物担当バイヤー:
「ありがとうございます、いつも」

箱売りのミカンを、激安価格で確保できたようだ。

果物担当バイヤー:
「配達料や原油も高くなっているし、ちょっとずつ上がっていると思います、去年(2021年)に比べると。そういう中で安い物を見つけて、市場の方も協力してくれてるので、毎回ありがたいなと思う」

■「スタッフ総出で袋詰め」「カートやかごは再利用」 安く売るため徹底的にコスト削減

 オープン前日の午前9時、各バイヤーたちが買い付けてきた商品が、店に集まってきた。

バイヤーも一緒になり、スタッフ総出で陳列作業。ここにも、安く売るための工夫があった。

果物担当バイヤー:
「加工代が乗らない分安く売れるので、自分の店で詰めるのが多い」

袋詰めされた状態での仕入れもできるが、タチヤではコスト削減のため自社で行うのが基本だ。

コスト削減は、ほかにも徹底されていた。

三留店長:
「買い物カートもそうですし、買い物かごも全部、前の店からまた持って来た感じですね。本当は新品にしたいですけど、その分お客さんに値段の方で還元できれば」

カゴやカート、レジなど使える物は全て前の店から流用して経費を節約し、その分を「価格」に反映させた。

タチヤに求められているものが何か、検討を重ねた結果だ。

■オープン当日は開店前から大行列…予想以上の来店客に「商品が足りるかな」

 リニューアルオープン当日の11月11日。夜も明けきらないうちから鮮魚が次々と運び込まれ、開店に向けて店頭に並べられた。

野菜担当バイヤーが交渉した特売用のネギや、前日に総出で袋詰めした野菜も揃った。

果物担当バイヤーが用意した目玉、箱売りミカンは店の入口に置かれた。

三留店長:
「おはようございます。7か月ぶりに八事店がオープンいたします。皆さん、いろいろ力をつけて帰ってきたと思います。全力で今日はやりきりましょう。よろしくお願いします」

店の外には、開店を心待ちにする客が長い行列を作っていた。

三留店長:
「おはようございます。おまたせしました」

午前10時のオープンを1時間繰り上げ、9時に開店。

リニューアルを待ちわびていた客で、店内は早速、大賑わいになった。

女性客:
「きれいになって広くなった。前、すごく古かったので」

別の女性客:
「シメジが4個で200円で、タマネギとかジャガイモも大袋で200円だったので…」

「お徳用袋詰め野菜」(1袋216円 ※撮影日の価格)に次々と客の手が伸びる。

野菜担当バイヤーが仕入れた「白ネギ」(1束108円 ※撮影日の価格)も人気だ。

野菜は並べるたびに売れ、次々と補充されていた。

箱売りの「夢の恵ミカン」(1箱4キロ 1059円 ※撮影日の価格)も順調に売れていた。

果物担当バイヤー:
「ミカン、やっぱ売れています。最高です。残り出ているだけです!」

 約20種類の魚が並んだ鮮魚コーナーの目玉は、刺身にも使える新鮮な真鯛。

男性客:
「安いですね。今日の夜、お刺身にしようかなと思っています」

一匹まるまる販売される鮮魚は、注文すれば三枚におろすサービスもある。

三留店長:
「ただいま、松阪牛切りたて出てます」

三留店長も自らマイクを握り、お値打ち品をアナウンスして売り込む。客はカートいっぱいに買いこんでいた。

女性客:
「ありがたいです。近くにこんなの作っていただいて」

値上げラッシュの中、各バイヤーの交渉力や、コスト削減の工夫でお値打ち価格を維持した八事店。リニューアル初日は、予想を2割上回る約3500人が来店した。

三留店長:
「もう、予想以上で最高ですね。逆に商品が足りるかなっていう。地域貢献にもなりますし、自分たちのモチベーションにもつながるので、どんどん強気で売っていきたいと思います」

2022年11月14日放送