名古屋市瑞穂区にある、生鮮食品などを扱う市場「クック瑞穂」が14日で閉店し、76年という歴史に幕を下ろします。常連客や店主、それぞれの思いを取材しました。

 地下鉄桜山駅から徒歩1分、瑞穂通商店街にあるクック瑞穂には、青果店や鶏肉店など、生鮮食品を扱う5店舗が並びます。

常連客:
「ずっとここで、もう超常連です、(通って)10年以上ですかね。とにかく良い物がいっぱいお値打ちに売っているので、すごくいつもありがたく利用させてもらっています」

 鮮魚店の「吾東(ごとう)」。

【動画で見る】戦後の“闇市”の店主たちが開業…名古屋の生鮮市場『クック瑞穂』76年の歴史に幕 店主や常連客達の思い

 2代目のご主人・五藤久雄さん(73)です。

五藤さん:
「(父が)30年と(私が)45年なんで、親子2代で。生活の拠点ですよね、自分の生まれた頃からだから」

 クック瑞穂の始まりは、1947年でした。

 戦後、市民の生活を支えた闇市の店主たちが集まって「瑞穂百貨店」という名前でオープンします。

 最盛期には食料品や呉服店など50店近くが軒を連ね、地元客を中心に賑わいました。

 その後、1991年に老朽化した店を建て替え、クック瑞穂としてリニューアル。

 しかし、大型スーパーの進出や後継者不足などにより店の数は減り続け、市場の組合長でもある五藤さんは、76年続いた市場全体を閉じることを決めました。

五藤さん:
「寂しさっていうより、悔しさみたいなものの方が強かったですね」

 4種類の塩をブレンドして仕込む自慢の塩鮭を売るのも、あと僅かです。

五藤さん:
「(Q.閉店までどういう思い?)最後の注文が多すぎて、14日に閉店してひょっとしたら解体が始まる15日も、ここでごそごそやらなきゃ駄目じゃないかという前代未聞の注文で、本当にありがたいことですけども」

 夫婦で営む鶏肉専門店、「若どりのシバタ」。

 店の自慢は、ローストチキンをはじめとした鶏肉の惣菜です。最後の買い物をと、朝から多くの客が詰めかけ、作っても作っても品切れ状態になりました。

3代目店主の柴田さん(76):
「(鳥を丸ごと)さばいてお肉にしていく、毎日やらん日がない。結構力がいるんだわ、だからだんだんできなく」

 鶏肉をさばくのは力仕事ですが、客に喜んでもらうため、76歳まで毎日続けてきました。

常連客:
「(お惣菜)美味しい、みんな美味しい。卵焼きも美味しいし」

別の常連客:
「何食べても美味しいです。残念、美味しいのに」

3代目店主の柴田さん(76):
「感無量のとこまでいかん。ちょっと内心ほっとした部分もあるしね。あっちゅう間の短さやった。国内で見てない所もあるもんで。星野リゾート行きたいわ」

 今後は夫婦水入らずで旅行をする予定だそうです。

 地元に新鮮な青果を提供してきた「山中青果」。客に店も子供も育ててもらいました。

山中青果の服部さん:
「休みの日も(子供を)どこも連れていってあげられないから。ずっとお店にいるから、お客さん皆さんにかわいがってもらってね、いっぱいお菓子もらったりね」

山中青果の服部さん:
「主人のお父さんとお母さんがやっていたお店なので、もう2人とも亡くなったんですけど。お父さんとお母さんが働いていた時の姿が、今でもね…。お父さんはすごいよく働く人で、ずっと動いてました、本当に休まない。大好きでしたね、八百屋が。でも見守ってくれてるかなと思ってますけどね」

 今後、別の場所で青果店を続けるそうです。 店それぞれの思いを抱きながら、クック瑞穂は惜しまれつつ、14日に76年の歴史に幕を下ろします。