三重県いなべ市に住む31歳の女性が、健康的な美を競うコンテスト「ベストボディ・ジャパン」で2022年、県の大会で優勝し、全国大会へと駒を進めた。女性は2人の子供を持つシングルマザーだ。三重県から日本一を目指す挑戦に密着した。

■主婦が県代表に…健康的な肉体美を競う全国大会に出場する女性

 三重県いなべ市に住む砂井夏美(すない・なつみ 31)さん。

【動画で見る】健康的な肉体美等競う…31歳シングルマザーの“ベストボディ”日本一への道「挑戦するママの姿を子供達に」

小学生の2人の息子と暮らすシングルマザーだ。

砂井さんは2022年7月に開催されたベストボディ・ジャパン津大会の優勝者で、小学生の2人の息子と暮らすシングルマザーだ。全国大会まで1か月前の10月、砂井さんに体の状態を聞いた。

砂井夏美さん:
「私的には結構ムチムチなんですけど、今。めちゃくちゃムチムチです」

この時点の体重は…。

砂井さん:
「52.0キロなので…、49キロは切りたいなってのはあります。(全国大会では)もちろん、グランプリ取れたら嬉しいですけど。やる以上は順位がつく競技なので予選突破して10人のうちにまず入る、これが一番ですかね」

より美しい体を目指し、家事と育児の合間を縫って、自宅でもトレーニングを欠かさない。

食事の管理も徹底している。冷蔵庫には肉や野菜が、グラムごとに小分けにされていた。

砂井さん:
「大体、1日でトータルして1200(キロカロリー)から1300(キロカロリー)で抑えてるので、大体(1食で)350(キロカロリー)くらいを目途で摂って、夜は糖質を控えめにしようかなってことで、お米はなしで糖質はカボチャだけにして。とにかく野菜でお腹一杯にさせる感じですね、私は」

空腹を紛らすのは、専ら炭酸水だ。

■大会出場で子供に伝えたい思い「挑戦することは素晴らしいこと」

 健康的な肉体美だけでなく、美しい身のこなしや、品格といった項目も審査の基準となるベストボディ・ジャパン。

地元のフィットネスジムで受付として働いていた砂井さんは2022年3月、このコンテストへの出場を決め、週2回のトレーニングに励んでいる。

出場のきっかけは…。

砂井さん:
「子供を産んで生活する中で、ずっと同じ毎日をずっと過ごしてきたので、自分の人生的にはちょっと寂しいなというのもあって、何か自分の好きな事で人前に出てみようという風に思って」

子供たちに伝えたい思いもある。

砂井さん:
「(子供たちが)サッカーをやっているんですけど、勝って嬉しいとか努力が実ったとか、挑戦していくママを子供達が見て『何かに向かっていくことは素晴らしい事なんだよ』っていうのを伝えたいと思っています」

砂井さん:
「ママ、日本大会頑張るわ。何位に入ったらすごい?」

兄:
「1位」

弟:
「2位か1位」

砂井さん:
「じゃあ2位か1位になるわ」

弟は砂井さんがトレーニングしているのを見て、楽しそうだというが…。

砂井さん:
「ママは結構辛いけどね。だけど楽しんでやっていると思われていて、よかったと思います」

自分を追い込みながら、鍛錬に励む砂井さんだったが、大会まであと2週間となった11月上旬…。

砂井さん:
「緊張で、ストレスでとか…。先週くらいまでずっと寝られなくて。どうしても感情の起伏って激しくなっちゃって」

精神的に追い詰められていた。

■大会直前に講師からメンタル面に指導 「もっと自信持って」

 大会まで10日に迫った日、砂井さんは名古屋市昭和区のジムを訪れた。ベストボディ・ジャパン公認講師、大竹仁美(おおたけ・ひとみ 44)さんからポージングや、ウオーキングのレッスンを受けるためだ。

大竹さんは、2019年に全国大会で2位を獲得したことのある実力者。

3人の子供を持つ母親でもある。

大竹さん:
「背筋がうまく使えてない。めっちゃ背筋が使えてない」

大竹さんは技術的な指導はもちろん、メンタル部分でも砂井さんにアドバイスした。

大竹さん:
「日本大会は自分の味方にしなきゃ、会場も観客も。だから自分が飲まれちゃダメ、行かなきゃ。その行くパワーを表現、最後は日本大会は内面だよってのはそこ」

砂井さん:
「負けることが恥ずかしいんですよ、本当に。プライドだけがなぜか高くて、イヤーってなる」

負けることへの恐怖心が、彼女を追い詰めていたようだ。

大竹さん:
「私は、(ステージに)出てきてライトがついた瞬間、『わー』ってなる。そこにいる自分が好き。最高じゃん。だって、たかが主婦よ、普通の主婦よ、子供がいるんだよ、子供が」

砂井さん:
「私はやっぱ、本当に普通の人なのにそこに立って『かわいいね』ってみんなが言ってくれるじゃないですか、見てくれるし。それが好きなんですよ」

大竹さん:
「いいじゃん。だったらもっと自信持って、『私ここにいるの好きよ、ああ快感』って」

大竹さんの個人レッスンから8日。大会前、最後のトレーニングの日。自信を取り戻した砂井さんの姿があった。

砂井さん:
「勝てるね、これ」

トレーナー:
「勝てる勝てる、勝つしかイメージ無いもん」

砂井さん:
「頑張ろう、行こう」

トレーナー:
「勝つよ」

砂井さん:
「山の向こう側へ」

大竹さんの指導をきっかけに、再び目覚めたようだ。

気にしていた体重は…。

砂井さん:
「48.7キロですね。いい感じですね」

1か月前の52キロから、目標だった48キロ台への減量に成功していた。

砂井さん:
「見た目的にもお尻は(筋肉が)ついてきたと思うので、いい感じで臨めると思います」

■結果は予選落ちで約3時間姿現さずも「来年も出場する」

 全国大会は2022年11月23日、東京の両国国技館で開催された。

砂井さん:
「もう楽しむだけと思っていたんですけど、やってきたこと思い返すと勝ちたいなと思っていて、あとはぶつけるだけですね」

砂井さんが出場するのは、30歳から39歳までのレディースクラスだ。予選会は、地方大会を勝ち抜いた総勢49人で争い、上位10人が決勝に進める。

いよいよ、砂井さんの組の番だ。

司会者:
「それでは参ります、フロントポーズ、サイドポーズ、バックポーズ、サイドポーズ、フロントポーズ」

切れのあるポージングもさることながら、このステージに立つ瞬間が最高に楽しい、その想いを表情でアピールする。

司会者:
「19番」

エントリー・ナンバーをコールされた砂井さんが前に出る。8か月間取り組んできたトレーニングの集大成だ。

目指してきたステージは、あっという間の3分間だった。

予選の結果は控室に貼り出される。

しかし、結果は予選落ち。目標の決勝進出は叶わなかった。ショックが大きく「すぐには話ができない」と落ち込んでいた。

そして3時間後、砂井さんがようやく心境を聞かせてくれた。

砂井さん:
「足が震えちゃっていてグラグラだったので、それをどうにかしなきゃって思いでいっぱいだったので、どうしようって思ったままステージが終わっちゃったんですけど…。悔しかったですね。初めての挫折ということで、これを知って。ここからじゃないですかね、自分がどう変われるのか」

挑戦を終え、三重県で待つ子供たちに結果を電話で報告した。

砂井さん:
「ダメだったわ」

息子:
「お疲れ」

砂井さん:
「ありがとね、見てくれた?」

息子
「見たよ」

砂井さん:
「ありがとね、応援してくれて、お留守番もありがとう」

砂井さん:
「子供達には、『やってれば報われるんだよ』って言って日々過ごしてきたので、ちょっと情けないなって感じですけど。この年になってやっと頑張ることとか地道に続けることとか努力とか、そういうことをできるくらい打ち込めるものを見つけられたということがまず良かったなってことと、これで終わりじゃないので、またベストボディ・ジャパンが来年あればまた来年も出場するし、自分の頑張れるものって興味あるものしかできないので、それにまた打ち込めたらなと思います」

2022年11月30日放送