わずか3時間で売り切れるというベーグル専門店が名古屋市中区の大須商店街にあります。前日の夜から寝ずに仕込む働き者のご主人と、夫の背中を押した妻が営む人気ベーグル店を取材しました。

■朝から行列ができるベーグル店 わずか開店3時間で売り切れ

 名古屋市中区の大須商店街にある「タオベーグル」は、朝から行列ができるお店です。

【動画で見る】開店わずか3時間で売り切れ…夫婦二人三脚で営む超人気ベーグル店 “大好き”を仕事にしたい夫を妻が後押し

 お客さんの目当ては、ショーケースにずらっと並んだベーグル。

女性客:
「前から気になっていて、今日やっと来れたので」

別の女性客:
「インスタで見て。なくなっちゃうと聞いたので、早めに来ようと思って」

また別の女性客:
「めちゃめちゃおいしいです!」

わずか3時間で売り切れてしまうといいます。

2022年の秋にオープンした「タオベーグル」。

人気の理由は、素材のおいしさにあります。

女性客:
「味も食感も他で食べたことないように感じる」

生地には北海道産の無農薬の小麦を使い、外はパリッと、中は柔らかもちもち。

「プレーン」は1個200円。

あんがたっぷり入った「自家製あんこクリームチーズ」など、定番のスイーツ系も充実しています。

「自家製あんこクリームチーズ」(1個320円)。

旬の食材を使った期間限定商品も豊富に揃っています。紫芋の生地の中に入っていたのは、焼き芋。ほどよい甘さが口の中に広がります。

季節限定ベーグル「焼き芋」(1個340円)。

特に人気が高いのは、“総菜系”ベーグルです。スパイスから作った自家製キーマカレー入りは、ボリューム満点で、男性にも人気だといいます。

「自家製キーマカレー」(1個400円)。

男性客:
「もちもちですごくおいしいです。しっかりお腹にもたまるので、すごくいいと思います」

■「美味しくなかったら許さない」時に厳しいことも…妻の助言で独立し人気店に

「タオベーグル」には、こうした商品が25種類揃っています。

切り盛りするのは、オーナーシェフの関戸祐介(せきど・ゆうすけ 43)さんと…。

妻の美紗子(みさこ 43)さん。

祐介さんが作るベーグルについて美紗子さんに聞くと…。

美紗子さん:
「美味しいと思いますよ。美味しくなかったら許さないので」

祐介さん:
「普通にダメ出しされる」

Q美紗子さんは厳しい?
祐介さん:
「厳しい…」

大手イタリア料理チェーン店でシェフとして働いていた祐介さん。

38歳の時に、店で美紗子さんと知り合い結婚しました。

美紗子さん:
「私が『独立したら』とずっと言っていたんですけど。(祐介さんは)ベーグルはもともと好きでいろんなところ食べに、買いに行ったりしていたので、ベーグルに特化してやりたいと言うので、『じゃあやってみたら?』と言って」

美紗子さんの後押しもあり、2020年に独立。大好きだったベーグルを、通販やマルシェなどで販売し始めました。

作り方はYouTubeなどを見て独学で習得。

祐介さん:
「なので、ベーグルじゃないと言われようが、『これはタオベーグル』ということですね。やっぱりこだわって作っているので、無添加だったり、無農薬オーガニックというところを全面に押し出して、それを求めて来ている人が多いんじゃないかな」

こだわりのベーグルが評判となり、2022年9月には念願の店舗を構え、わずか2か月足らずで完売必至の人気店になりました。

祐介さん:
「こんなになるとは思ってなかったです。おいしかったとか言っていただいているので、やりがいは出てきますね」

■ベーグル作りは完成までに7時間 材料から作り方まで徹底したこだわり

 祐介さんは前日の夜9時から仕込みを始めます。

まずは、ベーグルの命でもある生地作りから。北海道で無農薬栽培された小麦3種類を混ぜて使用。

祐介さん:
「小麦によって味もそうなんですけど、膨らみ方とかも違ってくるので」

そこに、塩、ハチミツ、酵母、水を入れて練り合わせていきます。

混ぜ合わせた生地は大きくカットしてから、丁寧に丸めて袋に入れて冷蔵庫へ。

祐介さん:
「低温でやることでゆっくりゆっくり育っていくので、小麦の味が強くなるので、(発酵は)だいたい6時間ぐらいですかね、最低」

生地を寝かせている間に、ベーグルの中に入れる具材を仕込みます。食材は無農薬のものにこだわり、すべてイチから手作りです。

午前3時、生地の発酵が終わり、成形作業へ。

手際よく形作ったベーグルを、再び30分発酵させます。

2度の発酵を経て、次はお湯の中へ。

祐介さん:
「表面の発酵を止める。止めることによって、焼いた時にそこは固く膨らまない。中だけが膨らむので、ぎゅっとした食感になるんです。パンは全体的に膨らませたいので、ベーグル特有ですね」

表面の発酵を止めたところで、ようやく窯に入れて焼き上げます。ここまでで約7時間。

作業は全て祐介さん1人で行っています。

祐介さん:
「黙々と作業するのが好きなんですよ。まぁ楽しいですね」

根っからの職人です。

ここからは店の一番人気でもあり、祐介さんが最も力を入れている総菜系のベーグル作り。

トマトソースを混ぜた赤い生地に、さらにトマトソース。

そこにモッツアレラチーズとナチュラルチーズを加えます。

祐介さん:
「これはマルゲリータ、僕がイタリアンやってたので、それを使わないともったいないと思って」

元イタリア料理店のシェフという経験を存分に生かしたメニュー、これが人気だといいます。

「マルゲリータ」(1個320円)。

特にファンが多いのが祐介さんの得意料理、きのこのアヒージョとカマンベールチーズを包んだ「きのこカマンベールアヒージョ」(1個400円)。

きのことガーリックの香りに、ゴロっと入ったカマンベールチーズのうま味が相まって絶品です。

■妻「どちらが欠けてもできないベストな夫婦の形」…二人三脚で生み出した大人気ベーグルはこの日も完売

 朝7時、店に出た美紗子さんが、自慢のマルゲリータやきのこのアヒージョなど、ベーグルを店頭に並べます。

祐介さんが仕込みを始めてから14時間経った午前11時、いよいよ開店しました。

開店と同時に、次々と注文が入ります。中には“大量買い”の客も。

女性客:
「何個買ったんだろう?1人6種類とか。きのこアヒージョも気になって買いました」

男性客:
「8個!よかった、買えて」

女性客:
「よかったです、ラッキーです!」

ベーグルは飛ぶように売れていき、あっという間に最後の1つがなくなりました。

美味しいベーグルを作るため、時間をかけ黙々と作業する職人・祐介さんと、夫の“やりたいこと”を見極め、背中を押した妻・美紗子さん。どちらが欠けてもこの店は作れなかったと2人はいいます。

祐介さん:
「妻がいなかったら、ずっと僕は決められたレールの上を歩いていた。ここに導いてくれたのは彼女なので、感謝しています」

美紗子さん:
「2人でいるからやれるねということが、すごくうれしいですね。どっちが欠けてもできないというのって、夫婦の形としてもベストだなと思って」

夫婦二人三脚で生み出した愛のベーグルは、この日も完売。

美紗子さん:
「こんな感じで、2人でぼちぼちやりたいなというのが希望ではあるので。ね!」

祐介さん:
「今日は終わりです!(帰って)寝ます!」

2022年11月28日放送