名古屋市昭和区の鶴舞公園の桜は、28日に満開になりました。美しい桜をベストな場所で見るには「場所取り」が必須ですが、花見をするその時まで待ち続ける、陰の立役者たちに密着しました。

 桜の名所・名古屋市昭和区の鶴舞公園。28日朝8時、すでにちらほらとブルーシートが敷かれていました。

20代の女性会社員:
「7時半くらいから。私はコロナ禍での入社だったので、今まであまりこういった機会を先輩方と取ることもなかったので、若手の方から『ぜひいかがですか?』と今回お声がけをしました」

 コロナ禍で通信会社に入社した女性は、テレワークでコミュニケーションもなくなる中、自ら花見を提案し、先輩と共に待つことにしました。

名古屋大学相撲部のマネージャー:
「これから名大相撲部の新歓があるんですけど、それで場所取りしていて」

 2022年は部員が4人と、存続の危機に陥った名古屋大学相撲部のマネージャーは、新入生を相撲部に誘うために必死です。

【動画で見る】「10時間半ここで待つのが仕事です」名古屋の桜の名所・鶴舞公園 “花見の場所取り”にみる様々な人間模様

 手際よく椅子を並べる男性に話を聞きました。

ベンリーコーポレーションの大川さん:
「10時間半、今からここで待つのが仕事です。企業さんからのご依頼で『花見をしたいから場所取りをしてほしい』と」

 男性は様々な困り事に応える、いわゆる「便利屋」。庭の草むしりをしたり、ある時は屋根裏に挟まった子猫を救出したり。この日のミッションは「ベストポジションでひたすら待つこと」です。

ベンリーコーポレーションの大川さん:
「ここの桜が一番きれいなんですよ。そこの前に陣取るのが一番いいかなと」

 おめかしする子供もいました。

父親:
「娘の誕生日写真を(撮りに)。本当は4月が誕生日なんですけど、桜の花があるうちにと」

母親:
「桜に合うので色も、桜と合わせて撮ったらかわいいかなと思って」

 中国人の母親の提案で、伝統衣装を着て撮影です。

父親:
「去年やおととしより自分でポーズしたりするので、けっこう成長したなと思いますね」

 この日の名古屋の最高気温は20.2度。

20代の女性会社員:
「疲れちゃいました…朝早かったので」

 昼過ぎに名古屋大相撲部の皆さんがやって来ました。

名古屋大学相撲部のマネージャー:
「僕は普段は『関取』ではないですね。今日は『席取り』で来ました。めちゃくちゃ満開でちょうどよかったです。やっと大盛り上がりで気分満点です」

 この日来た新入生は2人。

新入生:
「(Q.相撲部には…)入ります!」

 午後3時、新たな待ち人がいました。

20代のホスト:
「(Q.誰を待っている?)職場の同僚です。飲み屋です、ホスト。今日はお休みをいただいていて、リフレッシュという感じで集まります」

 名古屋市中区の栄でホストとして働く男性です。3時間ほど待って同僚がやって来ました。

ホスト:
「世界って78億人いるんだって。1秒に1人出会っても250年かかるんだって。俺たち1年目じゃん、これ何?奇跡!カンパーイ!!」

別のホスト:
「普段と違った雰囲気でお酒が飲めて、すごく気持ちいいです」

20代のホスト:
「太陽の下で酒を飲むことがないですし、みんなで外で楽しめるのは一つのリフレッシュかなと思います」

 待つこと10時間半、便利屋の男性の所に仕事終わりの依頼者が到着しました。

ベンリーコーポレーションの大川さん:
「一番いいポジションを確保しましたので、宴会を満喫していただいて」

依頼者:
「私が新入社員の頃は若い人が待つのが通例でしたが、ちょっと時代的にそういう時代でもないので、今回は利用させていただきました。ものすごくいい場所を取っていただいて非常にありがたいばかりで、これからの宴会が楽しみです」

 花見を提案した通信会社の若手社員のもとにも、会社の同僚たちが集まっていました。

20代の女性会社員:
「お集まりいただきありがとうございます。カンパーイ!」

20代の女性会社員:
「オンラインでの飲み会しかしたことがなかったので、こうやって対面で直接お話したりというのも初めてになります。先輩方の趣味のお話だったりもお伺いができたので、これからはもっとその話がしたいなと思います」

 長時間の苦労が報われ、桜も皆さんの笑顔も満開に。花見の場所取りには、様々な人間模様がありました。