2023年2月、名古屋市中区にある回転寿司チェーン「くら寿司」の店舗で「迷惑行為」を撮影してSNSに投稿し、21歳の男が逮捕・起訴されました。NEWSONEでは4月21日、身柄を保釈されたばかりの被告に取材し、迷惑行為に及んだ理由や、現在の心境などを聞きました。

■保釈直後の第一声「本当に、本当に、本当に…」迷惑動画投稿し逮捕・起訴された男

 2023年4月21日の金曜日、愛知県警中署。第一声は、「謝罪」でした。

吉野凌雅被告:
「ご迷惑をかけて本当にすみませんでした。本当に二度としないので、本当にもうまじめな環境に身をおいて、本当にもう反省してるので、本当に申し訳ございませんでした」

【動画で見る】「攻めれば人気者に」くら寿司で醤油さしを口元へ…“迷惑動画”巡り逮捕・起訴 保釈後に男が明かした後悔

“本当に”と何度も何度も連呼する、吉野凌雅(よしの・りょうが)被告(21)。

「反省」を語る理由は、大きな代償を払った行動からです。呆れと非難の声が巻き起こった、15秒間の動画。

2023年2月、名古屋中区栄の回転ずしチェーン「くら寿司」の店内で、醤油さしを口元まで運んでいるのが、金髪だった吉野被告でした。動画は瞬く間にSNSで拡散し炎上。事態を重く見た店側は、被害届を提出しました。

吉野被告を待っていたのは「威力業務妨害」容疑での逮捕・起訴でした。

逮捕から45日経った4月21日、保釈保証金150万円を納付し保釈。

起訴されているため法の裁きを待つ身ですが、吉野被告は保釈された当日の同行取材を受けました。

■「ご迷惑をおかけした分返済していく」…保釈直後に事件を起こした店に謝罪へ

 保釈後、弁護士とともに最初に向かったのは、事件を起こしたくら寿司の店舗です。

吉野被告:
「まず真っ先に出てきたら、弁護士さんと話したんですけど、ご迷惑をおかけしたくら寿司さんに、反省文を渡しに行こうと思っていました」

Q.内容は?
吉野被告:
「このようなことはしないっていう反省と、もう自分は…今回はほんとに流されやすい性格が原因だということと、ちゃんと仕事をしてご迷惑をおかけした分返済していくということです」

吉野被告(SNSの動画)
「この度は、寿司を乱暴に扱ってすみませんでした」

問題の動画を撮影した頃、吉野被告はSNSに「謝罪」とした動画をアップしていましたが、決して誠意を感じるものではありませんでした。

くら寿司に入店後、5分ほどで吉野被告が店を出てきました。反省文はエリアマネージャーと店長に渡したといいます。

Q.何を言われましたか?
吉野被告:
「謝罪したってことは、責任をもって本社の方に伝えてくれると言っていました」

Q.相手の表情は?
吉野被告:
「真剣でした」

Q.真剣に話は聞いてくれましたか?
吉野被告:
「はい。本当にとんでもないことをしてしまった本人なのに、その本人に貴重な時間を割いていていただいて、作っていただいて本当に感謝しかないです」

吉野被告を弁護する田村健一弁護士:
「ほんまにこれからです。反省の気持ちを伝えていくのは、今日が始まりと思っています」

迷惑をかけた店には、この日も多くの客が「食事のために」足を運んでいました。

■“その場のノリ”に押し寄せた「称賛と非難」は逮捕への焦りへ

 その数時間後、吉野被告が降り立ったのは、大阪の街です。

吉野被告:
「グリ下来たのは3~4か月ぶりですね。集まってそこでお酒飲んだりタバコ吸ったりとか、コールして回し飲み」

大阪の「グリ下」、名古屋の「ドン横」など、居場所を求める若者が集まる繁華街の一角に通っていたという吉野被告。

問題の動画も、そんな生活を送っていた時に撮影したといいます。同じ時期、SNSには悪質な迷惑行為が次々と出回っていました。

吉野被告:
「面白半分というか、そういうので撮ってみたら人気になれるんじゃないかって感じですね。本当にそれだけの理由で…ここまで大きくなると思っていなかったんで」

田村弁護士:
「その場の空気ってこと?」

吉野被告:
「その場の空気ですね。その場のノリというか。炎上したんですよね。知り合いには『すごい』みたいな『おもしろい』みたいな感じでありましたけど、他の人は『汚い』とか『迷惑してる』とか、コメントたくさん来ていしたね」

Q.そういうコメントを見てどう思いましたか?
吉野被告:
「捕まるかもしれないっていう焦りですね、逮捕怖かったんで。スシローで炎上してるみたいにやっちゃったんで」

Q.漠然と逮捕されるかもという?
吉野被告:
「そうですね、やばいという気持ちが本当にありましたね」

その場のノリの後押し寄せた「称賛」と「批判」。頭によぎったのは、逮捕への焦り。その焦りは逮捕後、反省と後悔に形を変えました。

Q.逮捕後考えていたことは?
吉野被告:
「本当に反省したというか、親とかにごめんなさいという気持ち、申し訳ないという気持ち。あとはなんでこんなことしたんだろうって後悔しましたね。あの時、寿司屋行かなければよかった、とか」

その後悔とは「あの時店に行かなければ」。

■「自分で職業選択の自由を奪った」社会復帰支援する企業からも厳しい言葉

 大阪に来た目的は、元受刑者らを雇用し、社会復帰を支援する企業との面談のためです。

裁判を控えた吉野被告のケースは異例ですが、弁護士のはからいで串かつチェーンの会長と建設会社の社長が、手を差し伸べようとしていました。

串かつだるまの上山勝也(うえやま・かつや)会長:
「まぁ君はそこまでこんなんなるとは思ってなかったと思うわ、実際はな。ちょっとほとぼり冷めるまで、飲食店では雇いにくいかな。あなたのやったことは、自分で『職業選択の自由』を奪ったわけですよ」

カンサイ建装工業の草刈健太郎(くさかり・けんたろう)社長:
「自分のやったことで、誰か生活無くなっている可能性もあるということをね、考えなあかん。やったことは悪いんやから、自分自身見つめ直して、どうやってやっていくのか考えてほしい。いい目しとる」

吉野被告:
「自分は働きたいんで。環境さえ自分の中に取り込めて、ちゃんとおかしな環境に行かなかったら大丈夫だと思うので」

■あえて聞いた「迷惑動画をあげようとする人に思うこと」

 逮捕のきっかけとなった「動画」を、改めて自分の目で振り返ってもらいました。

吉野被告:
「目立ちたかったってことですね。(先に炎上した)スシローの(動画の)影響があったっていうのはあります。湯呑舐めたりだったんですけど、“自分は口につけていないので”、口につけなければ言い訳がたつと思って、際どいところを攻めれば知名度も上がって人気者になって、あと面白いと思ったので」

醤油さしに「直接口は当たっていない」。逮捕後から続けている、吉野被告の言い分です。あえて、吉野被告に聞いてみました。

Q.迷惑動画をSNSに上げようとしている人に思うことは
吉野被告:
「本当にやめた方がいいと思います。どれだけ被害を与えるとか、考えた方がいいと思います」

Q.被害を与えるから上げない方がいいのか
吉野被告:
「それもありますし、そういうことをして楽しく…楽しさを求めるのも間違っていると思います。最初は謝ったら許してもえると思ったけど違って。いろんな刑事さんとかの話とか聞いていく中で、大きくなっていることを実感しましたし、これじゃダメって思ったし。反省して今後に生かしていこうと思っているので」

吉野被告からの謝罪文の取り扱いについて、くら寿司側は24日午後5時時点では「担当者が不在のためお答えしかねます」とコメントしています。

吉野被告の初公判は、5月31日。

犯した罪が裁かれるのは、これからです。

2023年4月24日放送