愛知県半田市で町の名物を作ろうと、老舗料亭と生産者がタッグを組み、新しい「すき焼き鍋」を開発しました。ありそうでなかった「みそ味」のすき焼きで、地元の名物がたっぷり入り、人気を呼んでいます。

■言われてみればなぜないのか…醸造文化根付く地域で生まれた“みそ味”のすき焼き

 2023年、2月1日に初めてお目見えした愛知県半田市の新名物「知多すきやき」。

男性客:
「初めて食べた味で、半田市じゃないと食べられないんじゃないかと思って」

女性客:
「おいしいですよ!溶けるようで。最高!」

と、お客さんからも大好評です。一見、普通のすき焼きのように見えますが…。

【動画で見る】割り下でなく「みそ味で」が出発点…『知多すき焼き』を地元の新名物に 老舗料亭の3代目と生産者がタッグ

味付けを割り下ではなく、みそ味で仕上げた珍しいすき焼きです。

市内の高級料亭・古扇楼(こせんろう)の料理人、城平直人(じょうへい・なおと)さんです。

城平直人さん:
「すき焼きでもみそ味はなかったんですよ。なぜないんだろうな、ということから始まって…。こういうみその味のすきやきに行きつきました」

城平さんは古扇楼の3代目で、この道40年の凄腕です。

創業100年以上という半田市でも3本の指に入る老舗の料亭です。

城平さんの作り出す色鮮やかな日本料理が、長年地元の人たちに愛されてきました。

今回、新しい名物にすき焼きを選んだ理由を聞きました。

城平さん:
「昔からお酒、酢、たまり蔵がございまして、そういった醸造文化が大変栄えていますので。年末年始にこの辺りでは、すき焼きを食べる風習がありまして、正月はみなさん家に集まってすき焼きにする家庭がかなりあるそうで…」

地域の人たちが大好きなすき焼きを、地元の醸造文化の1つでもあるみそで味付けし、これまでにないすき焼きとして地元の新名物にしようと考えたといいます。

■地元の老舗醸造蔵から仕入れたみそを使用 さっぱりとした甘みがすき焼きにぴったり

 みそは、地元半田市で明治29年(1896年)から続く、老舗のしゅうゆ・みそ蔵「中利(なかり)」のものを使っています。

中利は、老舗ですが最新の醸造技術で豆みそと米みそをブレンドし、滑らかな舌ざわりでコクのある甘さが特徴のみそを作り出しています。

中利からすき焼きに使うなら是非と勧められたのが、豆みそを多めにブレンドした「京好み八丁赤だし」(670円)です。

城平さん:
「割と塩分が少なくて、少し甘くなっています」

この豆みそは、肉の臭みをまろやかにすることに加え、くどくなくさっぱりとした甘みが、すき焼きにぴったりだといいます。

■「けっこう脂とみそが合う」…肉は8年連続県知事賞受賞の上質な知多和牛

 すき焼きのメインの牛肉は、市内で70年以上続くオグリ牧場の「知多和牛」です。

3代目、小栗道政(おぐり・みちまさ)さんが育てている牛を使っています。

小栗道政さん:
「うちの牧場だと約1000頭の和牛がいますね。この牛たちは出荷されると、この辺りだと知多和牛といって流通することが多いです」

知多和牛は、やわらかな甘みのある肉質と味わいが特徴のブランドビーフです。

オグリ牧場では、その肉質と脂の味をより高めるために、中利のしょうゆかすや中埜酒造の酒粕をエサに混ぜた、独自配合のエサを使っているといいます。

小栗さん:
「中利さんのはたまりのカスで、たまりって大豆ばっかりで作るので、大豆の絞りかすだと」

牛の成長を促し、肉質にもいい影響を与えるといわれる大豆がたっぷり入ったエサを与えていました。畜産にも半田市の醸造文化が生きています。

肉質へのこだわりが評価され、オグリ牧場の知多和牛は8年連続で愛知県知事賞を受賞しています。名古屋の有名デパートにも卸していて、その品質は折り紙付きです。

今回、すき焼きに提供したのは、中でも上質なA5ランクのサーロインで、サシがきれいに入った極上のお肉です。

小栗さん:
「けっこう脂とみそがあうんですよね。そういうのもあるので僕は、脂身が多いところをなるべく使って欲しいかなと思って。そこのハーモニーを楽しんでもらえるものだと思います。あんまり半田でうちの肉を名前を出して売ってくれるところはないので、近くで食べてもらうことは大事なことかなと思います」

■調味料や肉の切り方にベテラン料理人の工夫…みその香ばしい香りがたまらない逸品に

 半田市の中利の豆みそ、オグリ牧場の知多和牛、そして老舗料亭の古扇楼。地元生産者と飲食店がコラボし新たな半田市の名物をと開発した、珍しいみそすき焼き。

料理人歴40年の城平さんは素材の味を生かすのはもちろん、みそが溶けて肉と絡みやすいよう、みりんなどを加えて、少しやわらかくする、ベテランならではのひと手間もかけていました。

肉の切り方も工夫していました。

城平さん:
「このサイズですので、なかなか火が通りにくいので、少し薄めにしてあります。通常のしゃぶしゃぶとすき焼きの間ぐらいです」

そして鍋は、パッと見てもみそが見えませんが…。

城平さん:
「お肉で隠れますので。下に潜んでいるという形です。『あれ?みそが乗ってないな?』という、ハハハ」

遊び心も加えながら1か月かけ完成させた、みそ味のすき焼き「知多すき焼き」(7700円)。刺し身や揚げ物などがついたセットとして提供しています。

より美味しくなる“食べ方”もあるといいます。

城平さん:
「このまま火にかけていただいて。若干、火が通りだしますと、豆腐とか野菜とかから水分が出ます。その水分でみそがやわらくなりますので、そこでお肉のほうを火を通していただいて」

野菜の水分だけで調理する無水料理。肉に火を通しながら、みそとよく混ぜあわせれば食べごろに…。

みその香ばしい匂いが漂ってきます。

■地元での試食会でも上々の反応 半田の新名物となるか

 取材した日は、販売を1週間後に控え、ちょうど地元観光協会主催の試食会が行われていました。一般のお客さんに出すのはこの日が初めてです。

城平さん:
「どういう反応になるかちょっと心配なんですけど、自信はありますので」

女性:
「お~!」

別の女性:
「すごい!」

見た目の反応はバッチリです。味の評価は…。

女性:
「おいしいね!普通のすき焼きとはちがって、コクがある。お肉はね、とろみがあってお口の中でとろけちゃったので、ちょっと感激します。買いにいきたい!」

別の女性:
「おいしかったですよ。初めてだね、すきやきでみそは初めてだね」

お客さんの反応も上々で、城平さんも一安心した様子です。

城平さん:
「お客さんの反応を見たら、みなさんおいしそうに食べてくれたので、よかったかなと。私どもはみそすき焼きという形で打ちだしていますが、知多すきやきというカテゴリーで立派な店がたくさんありますので、いろんな味付けでやっていただけると思います。生産者の方からも、新たな後押しをいただきながらやっていきたいなと思います」


2023年2月8日放送