リニア中央新幹線の建設に反対してきた静岡県の川勝平太知事が、建設の早期実現を目指す会合に初めて出席しました。静岡工区の工事着工に向け、一歩前進となったのでしょうか。

 2023年5月31日、都内で開かれたリニアの早期実現を目指す期成同盟会で、挨拶に立った静岡県の川勝平太知事。建設を推進するこの会合に初めて参加しました。

川勝平太静岡県知事:
「昨年7月に期成同盟会に入会を認めていただきました」

 2022年6月、中部圏の知事が集まる会議で突然「建設推進」を表明。

川勝静岡県知事(2022年6月):
「(リニア建設を)促進するつもりであるということを明確にしたく」

 県内の水資源をめぐる「建設反対」の立場から一転し、建設促進期成同盟会への加盟を申請。参加が認められていました。

 初参加となった31日の会合で、発言が注目されていましたが…。

川勝静岡県知事:
「静岡県は一貫してリニアに賛成しております」

 あくまで建設に「賛成」の立場だと主張。

【動画で見る】“山梨での調査”で新たな火種…川勝静岡県知事がリニア建設推進の会合に初参加 出席者から釘刺す発言相次ぐ

 しかし、川勝知事を巡っては、新たな火種が生まれています。

川勝静岡県知事(2023年5月29日):
「『掘るな』と言っているんじゃないんですね。われわれにとって懸念があるまま工事が進みかねないので、心配しておりますということ」

 その火種とは「ボーリング調査」。地質や地下水の状況を把握するため、JR東海が山梨県側で行っている調査ですが、川勝知事は静岡県の水が流出する懸念があるとして、県境までの300メートルの区間は掘り進めないように求めています。

 これに対し、調査の現場である山梨県の長崎幸太郎知事が反発。

長崎幸太郎山梨県知事:
「静岡県さんの議論には大変強い違和感を感じております」

 山梨で行われている調査に、静岡が「待った」をかけたことに対し、「民間事業の行政権は、国か山梨県にあるべき」として強い不快感を示しました。

 お膝元の静岡市長も…。

難波喬司静岡市長:
「(川勝知事に)私は賛同しておりません。ボーリングについては、山梨県境まで掘ってもいいと思っています」

 川勝知事の発言に異を唱えた、難波喬司静岡市長。土木工学に精通した国交相の元官僚で、静岡県でリニア担当の副知事を務めた川勝知事の元部下です。工学のスペシャリストとして、川勝知事の主張に疑問を呈しました。

難波静岡市長:
「風呂の水の底をポンと抜いた時に、300メートル先まで水を引っ張るということは考えられないですよね。したがって何も問題はないというのが私の考えです」

 そんな火種を抱えたまま迎えた31日の会合。出席したメンバーからは、川勝知事に釘を刺す発言が相次ぎました。

阿部長野県知事:
「静岡工区が止まってしまっているというのは、最大の課題だと」

古田岐阜県知事:
「線路はつながってなんぼであります」

大村愛知県知事:
「静岡工区の工事はまだ着手できていない状況でございます。一日も早く、より良い解決方策を見出して進めていただくように強く望むものでございます」

 会合では「静岡工区の問題を期成同盟会で話し合う部会を設けるべき」といった意見が出され、矢面に立った川勝知事は話し合いに積極的な姿勢を示しました。

川勝静岡県知事:
「(リニアのルートの)南アルプストンネル工事の問題について、なるべく早く問題の解消を図っていきたい。大村知事のリーダーシップのもとで、研究会が建設的に行われることを切に望むものです」