かつてはよく見かけた、黒、白、緑のあんを使った「3色あんパン」を、最近はみかけなくなりました。なぜ見かけなくなったのか調べました。

■パンの老舗でも「ありません」…どの年代の人に聞いてもほとんど知らない「3色あんパン」

 まずは名古屋市の中心部・栄で「3色あんパン」を知っているか聞きました。

若い女性:
「知らない!」

年配の女性:
「知らない…」

別の年配の女性:
「初めて聞く…」

幅広い年代の方に聞きましたが、3色あんパンの存在を知らないという人ばかりでした。

【動画で見る】黒・白・緑のあん入るという証言が…幻の『3色あんパン』は今も存在するのか 独自調査で行きついた別の3色

約2時間、聞き込みを続けると、ようやく知っているという人がいました。

女性:
「普通のあんと緑と白あん。緑はうぐいす豆」

この女性にどんなパンなのか絵で描いてもらいました。

女性:
「違うかもしれないけど、(パンの中に)緑・黒・白という感じかな」

3つに生地が分かれていて、それぞれに黒あん、白あん、うぐいすあんが入っているといいます。

しかし街頭での取材では、3色あんパンを販売しているところまではわからず、創業80年以上という名古屋市千種区のベーカリー「中屋パン」を訪ねました。

店内には、昔懐かしい雰囲気が漂うパンばかりが並んでいます。

3色あんパンを販売していないかを尋ねましたが、残念ながらありませんでした。

■緑あんは「ピスタチオ」…令和版にアレンジされた3色パンの数々

 次に、インターネットで「3色あんパン」を検索すると、売っているという店が見つかりました。名古屋市名東区の藤が丘駅近くにある「まこパン」です。

店を訪ねてみると…。

店主の水野誠さん:
「あります!こちらですね。これは、桜・小倉・ピスタチオのあんになります」

出してくれたのは3色のあんパンでしたが、探していたものとは違いました。「黒」のあんは同じでしたが、ほかの2つが「白あん」と「うぐいすあん」ではなく「桜のあん」と「ピスタチオのあん」。

令和版にアレンジされていました。

その後も検索して、「3色あんパン」を売っているとするお店に電話で問い合わせましたが…。

(電話先)
「白あん・ジャム・クリームです」

(電話先)
「ジャムとクリームとチョコです」

アレンジの3色ばかりで、特にうぐいすあんがなかなかありませんでした。

■「うぐいすあんって何だっけ?という感じ…」3色あんパンが激減した理由は

 次に頼ったのが、専門家です。パンに詳しい「お気楽パン会」代表の石臥博代(いしぶし・ひろよ)さんに、中身が黒あん、白あん、うぐいすあんの3色あんパンを販売している店が東海3県にあるか聞きました。

石臥さんは、名古屋で日本最大級のパンイベント「パンマルシェ」を主催する、東海地方のパン事情に詳しいスペシャリストです。

石臥さん:
「すごく難しい題材で、あんが…いろんなあんがありまして、その3色あんぱんは、ほぼないと思います」

“パンのプロ”の答えも「ない」でした。

石臥さん:
「果たしてみなさんが、3色に分かれたあんぱんを食べたいかにもよる。あんが好きな人はいるんですが、今はどちらかというと『あんバター』というコクがあるものが好きだと思うんです」

3色あんパンが減った理由の1つは「そもそもニーズがない」。

石臥さんによれば、時代と共にあんパンも進化していて、最近はあんとバターをサンドした「あんバター」のスタイルが人気になるなど、昔ながらの3色あんぱんは食べたいという人が減ってきているのではないかといいます。

石臥さんは別の理由も指摘しました。

石臥さん:
「うぐいすあんを知っている方って…知ってらっしゃいます?うぐいすあんって言われても、うぐいすあんって何だっけっていう感じだと…」

3色あんパンが減ったもう1つの理由は「うぐいすあんがイメージしづらい」。青えんどうで作るうぐいすあんは、特に若い世代には馴染みが薄く、昔ほど出回っていないといいます。

石臥さん:
「あるといいですけど、実際はすごく厳しいかな」

結局、3色パンを見つけることはできませんでした。

■「今後流行ってくれたら…」元祖3色あんパンを再現

 石臥さんの取り計らいで、知り合いのお店が特別に3色パンを作ってくれることになりました。

後日尋ねたのは、50年以上続くという愛知県春日井市の「モンシェル」です。

20年ほど前までは3色あんぱんを作っていて、ノウハウもあるといいます。

当時の作り方を再現してもらいました。

モンシェルの榊原清人さん:
「これが小倉あんですね」

あんを生地に詰めるのは、種類ごとに違うスタッフです。

榊原さん:
「(どのあんを入れたか)分からなくなってしまいますので…」

3色なので、3人で作業します。

榊原さん:
「3色になると小さいのを3個作らないといけないので、手間もかかりますね。だからパン屋さんでやらなくなったのもあるのかも」

3つの生地を合わせて成型し待つこと1時間。

榊原さん:
「こちらが幻の3色あんパンです」

幻の3色あんパンができあがりました。

表面のゴマで中身がわかるようになっています。

食べてみると、あんの優しい甘さと柔らかいふわふわの生地がマッチしていて、3つの味の変化を楽しむことができるパンが、今ないのは残念です。

榊原さん:
「今後、流行ってくれることを祈っています」


2023年3月28日放送