前の車に接近し、料金を支払わずETCレーンを不正に通行する「カルガモ走行」は、ETCが導入された当時から起きていたといいます。「カルガモ走行」がなくならない背景と、対策について取材しました。

■カルガモ走行で750万円の支払いを逃れたか 愛知の陸送会社が検挙

 前を走るトラックの後ろにぴったりとくっついて走るトラック。同じスピードで料金所に差し掛かり、ETCレーンを通過しました。あまりにぴったりと後ろを走っているため、2台目のトラックが通る際、料金所のバーは上がったままでした。

【動画で見る】走りながら“親トラック”探す…ETCで前の車にぴったり通過『カルガモ走行』支払い逃れる悪質な手口とは

これは横浜市にある東名高速の料金所で、神奈川県警が撮影した映像です。2022年10月、2台目のトラックが通行料金を払わずに料金所を通過する、不正行為の瞬間が捉えられています。

前後にぴったり連なる様子から、この不正は「カルガモ走行」と呼ばれています。親にひな鳥がぴったりとくっついて歩くカルガモの姿に由来しています。

「カルガモ走行」とは、高速道路の料金所に設置されたETCの出口で、前の車と車間距離をあけずに走行して、ETCのセンサーに1台の車両と誤認させて通行料金を免れる行為です。

神奈川県警は「カルガモ走行」をしたとして、愛知県の陸送会社社長の男(55)と元従業員の男(61)を、道路整備特別措置法違反などの疑いで逮捕しました。調べに対し、社長の男は「陸送代を浮かせるため何百回もやった」と容疑を認めています。

この会社は、2023年春ごろまでの3年間に850回ほどの不正を繰り返し、約750万円の支払いを逃れた疑いがあるということです。

検挙された会社では、愛知県や兵庫県などのオークション会場で落札された中古車に乗り、東名高速道路や首都高速道路で千葉県の自動車販売会社に運んでいました。その都度、違う車で通行していたということです。

手口としては、まずはETCが設置されていない入口で通行券を受けとります。

そのまま高速道路を利用し、出口が近づいてきたら、走りながら「カルガモの親」になりそうなトラックを探します。

親となるトラックを見つけると密着を開始し、ETCが設置されている料金所で「カルガモ走行」をして、料金の支払いを逃れる行為を繰り返していたということです。

■なぜなくならない「カルガモ走法」 高速道路会社の対策は

「カルガモ走行」は以前から問題視されていました。自動車評論家の国沢光宏さんは20年ほど前からあったといいます。

自動車評論家の国沢光宏さん:
「1年間に96万台とか、そんな台数みたいですね。大体2007年とかの話です」

今は数が明らかにされていないものの、2年前には神戸市で、600回以上・約70万円の不正通行を繰り返した男が、2023年1月には大阪で、オートバイに乗り364回・36万6510円の支払いを免れたとしてアルバイトの男が、それぞれ道路整備特別措置法違反などの疑いで逮捕されるなど、「カルガモ走行」はなくなっていません。

背景について、国沢さんは「ゲートを遠くから見ている分にはわからない。外からは見えないから」と分析しています。

実際に愛知県内の高速道路の料金所を通過して確認してみました。

(リポート)
「料金所に差し掛かりました。前の車、かなり団子状になってはいますが、カルガモ走行かどうかはわからないですね」

確かに料金所で取り締まろうにも、ゲート通過は一瞬のことで見分けがつきませんでした。

国沢さん:
「いつも同じ車が同じ場所を通っていればわかりますけど、色んな車でやられると非常に追っかけにくいです」

 高速道路会社はどんな対策をしているのでしょうか。

国沢さん:
「高速道路を通過する車は、全車写真を撮っているんです。全てのナンバープレート・車種はデータで残っています」

ネクスコ中日本では料金所などにカメラを設置して監視し、通過する全車種を記録。不正通行車を確認した場合は警察に通報しているということです。

■カルガモ走行の割増金は“不法に通行した料金の倍”

 料金所通過の際、ETCカードの挿し忘れや期限切れなどで誤って通過してしまうケースもあるといいます。その場合の対応は、そのまま料金所を通過し、家などの落ち着いた場所から高速道路会社に連絡し、料金を支払えば問題ないということです。

「カルガモ走行」は違法で「30万円以下の罰金」という罰則も設けられています。また法律では、「不法に免れた通行料金」と「割増金(不法に免れた通行料金の2倍相当の額)」を支払わなければならないと決められています。

愛知県の陸送会社のケースでは、750万円に加えて割増金として1500万円、合わせて2250万円を支払わなければいけないということです。

2023年6月30日放送