名古屋市で「街路樹」がいま、次々と伐採されている。かつては街に潤いを与えてくれた存在が、邪魔モノ扱いされている。街の樹木に何が起きているのか。

■全てなくなった通りも 伐採続く名古屋の街路樹

 名古屋市中区の外堀通。

いま、この歩道のアスファルトには、補修した“痕”が点々とある。以前、ここには街路樹があった。

1年前の同じ場所を写した写真には、高さ10メートル以上ある街路樹が青々と茂っていた。これが2023年3月、通行の妨げになっているなどとして全て伐採された。

さらに、名古屋市科学館前の道路にも両脇の歩道にケヤキの木が植えられていた。

しかし2023年7月、13本全てが伐採された。

近くで働く男性:
「2カ月くらい前に1回、上の方が切られて、その数週間後に根から(撤去された)という感じでした。何があったのかなと」

名古屋の街路樹にいま、何が起こっているのか。

■空洞にかかり木も…市の職員が危険な街路樹を巡回

 7月、名古屋市の職員が、中区の官庁街を自転車で巡回していた。

名古屋市中土木事務所の職員:
「木の幹にある開口部を確認していました。全体に健全な木のなかにも、ここから腐りが発生したり、木自身が弱まってくることがありますので、点検の一つのポイントになります」

名古屋市が長年行っている街路樹の巡視点検だ。市内に“街路樹”は9万6000本以上あるというが、中区では2カ月に3回、自転車で巡回しながら腐食がないか、枝が折れていないかなどを確認している。

土木事務所の職員が木の幹に「きのこ」を発見した。

名古屋市の職員:
「きのこの菌が中に入って、それが原因で街路樹が腐朽する可能性があります。きのこがあるということは、なにかしら異変があるという指標になります」

この日の点検では、折れた枝が危険な状態になっている「かかり枝」や…。

腐食が進んだことによる木の空洞など、5か所の異常が確認された。

名古屋市の職員:
「大きな惨事としては、街路樹が倒木するということが考えられます。異変を感じ取りながら、大惨事になる前に事前に対応するために、巡視が大切になります」

■「白い街」から「緑の街」へ変貌した名古屋…40年経ち倒木相次ぐ

 名古屋市で街路樹が一斉に植え始められたのは、昭和40年代だ。このころの名古屋は緑が少なく「白い街」とも言われていた。

「街に緑を」と一斉に植樹を行った結果、現在、名古屋は全国の大都市の中でも街路樹の数がトップクラスに多い都市になっている。

しかし、それから40年あまりが経ち、2022年8月には中区栄の大津通りでケヤキが倒れて乗用車を直撃した。

乗用車に乗っていた男性:
「聞いたことのないようなメリメリっていう、なんかおかしいなっていう音が聞こえて、すぐに倒れてきた」

倒れた木の樹齢は約40年。その後の調査で、老朽化により木の内部の腐食が進んでいたことが原因と判明した。

2023年7月12日には、暴風により名古屋市中区の公園で倒木があった。高さ約15メートル、幹回り180センチにもなる大木が突如倒れた。

街路樹が老朽化するなか、市が2021年に打ち出したのが「街路樹再生なごやプラン」だ。危険性が高かったり、生活の支障になっている街路樹を洗い出して地図で表示し、2025年度までに3800本を伐採するなどして、街の緑を整備する計画だ。

名古屋市緑政土木局の担当者:
「植栽してから40年以上経過したものが、全体の約4割を占めておりまして、道路空間の許容範囲を超えて大きくなっていたり、老木化か進んでいるなど、安全性の確保が課題となっています」

とりわけ計画の中で危険性が指摘されたのが「アオギリ」という街路樹だ。成長スピードが速いことから、高度経済成長期に積極的に植えられた。

中区の地下鉄丸の内駅近くの道路では、両側の歩道に700メートル以上に渡って植えられているが、倒木の危険性が高いということで、全て伐採して別の木に植え替える計画だ。

緑政土木局の担当者:
「成長が早いという特徴から、数多く植えられてきた樹木なんですけど、その多くが老木化しておりまして、近年、倒木などの事例が起こっているものですから、事故リスクの高い樹木と位置付けまして、植え替える作業を計画しています」

しかし、街路樹の伐採を巡っては街では反対する声も聞こえてきた。

街の女性:
「今日も照り返しが強いので、樹木のおかげで風がよくなびいて良いんじゃないかなと思います」

街の男性:
「自然を取り入れたいい環境だと思っていたんですけど、(伐採されて)風情も何もないなという思い」

■古い街路樹を伐採し植え替える 緑との“共生”進める地域も

 住民、そして街に潤いを与えてきた“街路樹”。その共生を目指す動きもある。愛知県豊橋市牛川町では、街路樹の整備で、行政と住民が一体となって計画を進めている。対象となっているのはユリとケヤキの並木道だ。

大木化が進み、枝が電線にかかるなど見るからに危険な状態にあった。

さらに住民を悩ませているのは、手のひらほどの大きさの「ユリ」の葉だ。

住民の男性:
「落ち葉がすごい。雨で流れて側溝に詰まって、歩道がかぶるくらい水が溜まるときがある」

この地区で自治会長を務める、岩田博之さんは、悩みを抱える住民たちと一緒に、豊橋市が開いたある取り組みに参加した。

牛川校区自治会長の岩田博之さん:
「グループになって、付箋に気づいたことを書き出したものを張り合わせていって、樹木への関心を高める時間もあった」

住民参加型のワークショップだ。街路樹に対し、住民の抱える課題や要望を聞き出したり、専門家を招いて樹木への知識を深めるなどした。

岩田さん:
「今まで植えられていたような木のような高さには成長しない。大量の落ち葉はないであろう。なおかつ、時期になると花が咲く。地元の方の意見を反映した形で決定した」

大きな葉が住民を悩ませていた「ユリ」の代わりには、一年中葉が落ちない「ヤマボウシ」を選んだ。

ケヤキの代わりには、赤く綺麗な花を咲かす「ハナミズキ」だ。どちらも大きくなっても5メートルほどで、倒木の危険性も低くなる。

岩田さん:
「これがヤマボウシ、新しく植えた木です。咲いて、咲き終わりました。かわいいですよ、まだ数は少なかったですけど」

新しい木は、住民たち自ら植樹に携わった。今後、豊橋市は残っている古い街路樹の伐採を進め、2024年度中には全ての植え替えを完了させる計画だ。

岩田さん:
「成長する様子や花が咲くのを見るのも楽しみですし、今後安心して、今までの苦労が解消される形で、どなたにとっても良いかたちでいけるかなと思っております」

各地で再整備が進む街路樹。安全の確保と身近に住む住民の理解、その両方が求められている。

2023年8月2日放送