自動車の「自動運転レベル」は全部で5段階ある。日本の国内ではいま「レベル4」の段階で実証実験が行われている。しかし海外では、すでに無人のタクシーが走っているほど実用化が進んでいる。日本の自動運転もここまできたといえるのか、まだこのレベルとしかいえないのか。自動運転における「ニッポンの現在地」は。

■“国内最先端”の自動運転はレベル4 福井県永平寺町

 田んぼの脇を颯爽と走るカート。

【動画で見る】国内は実証実験の場が不足…世界では進む『自動運転』の実用化 大胆な実験しにくい風土“日本の現在地”

運転席は無人の「自動運転」の車だ。

福井県永平寺町(えいへいじちょう)は、自動運転の実用化が日本で最も進んでいる場所だ。

運転操作は不要で「乗っているだけで」OKだ。取材カメラの近くに車が来ると…。

<クルマの自動音声>
「クルマが通ります。ご注意ください」

速度を落としてカメラの前を通過し、再び加速した。障害物はフロントにあるセンサーなどで検知する。この技術の発展が、日本社会の課題解決につながると期待されている。

自動運転の分類は全部で5段階ある。障害物を検知し、自動でブレーキをかける「衝突回避機能」などがレベル1の「運転支援」。

永平寺町のカートは、法改正で2023年4月に公道での走行が可能になったばかりのレベル4だ。限られた区間なら運転手は不要で、国内で唯一の「無人運転サービス」として、地元の人などを運んでいる。

「国内最先端」だが、その仕組みはいたってシンプルだ。

ZENコネクトの平元師史さん:
「道路上に電磁誘導線がひかれています。この上を電動カートは走っていきます。ゴルフ場と同じような仕組みです」

カートが走るのは、町名の由来となった永平寺の参道付近から近くの国道までの約2キロで、ほかの車が来ない「遊歩道」だ。

平元さん:
「こちらは京福電鉄の永平寺線の廃線跡地になります。一般車両が入ってこないということで、今回ここでレベル4の運行ができるようになった」

場所の利点を生かし、永平寺町は自動運転を進める国のプロジェクトに参加。実証実験を進めるべく、2017年に第三セクターの「ZENコネクト」を設立し、どのようにセンサーが反応するかなど、実証実験でカートの走行を重ね、データを集めてきた。

ZENコネクトの遠隔監視室。

カートに取り付けられた9個のカメラで、「人間」がモニタリングしていた。監視室の人間が行うのは、最初の出発を指示するだけだ。地元の大学生や高齢者がアルバイトで座ることもあるという。

平元さん:
「こちらに座るのは、特定自動運行主任者という職名になるんですけれど、運転免許のない人でもここには座れるようになりました。1人が3台を同時に動かせるということで、人員削減になるということがメリットです」

これに注目しているのがバス業界だ。運転手の平均年齢は53.4歳と年々高齢化が進み、「人手不足」の解消に期待を寄せている。

■海外では既に実用化始まる 北京では5分で無人タクシー到着

「自動運転サービス」は、海外ではすでに実用化が進んでいる。中国の北京市では、スマホのアプリで呼べば、運転手のいない無人のタクシーが約5分でやってくる。

北京の街を走る無人タクシーは、自動運転の開発で提携するトヨタ自動車から出資を受ける、中国のスタートアップ「Pony.ai(ポニーエーアイ)」が運営している。

利用者は、車に乗り込んで「行程開始」のボタンをタップすれば動き出す。前に車が停まっていれば避けるように進み、歩行者がいれば減速して止まる。

違和感のない走行で、細い道や急な飛び出しにも細かいハンドルさばきで対応する。15台以上のカメラとレーダーで周囲360度の状況を常に把握し、車に搭載した「AI」が瞬時に判断して自動走行している。

■「自動運転に期待」は7割もうち半数は「不安ある」…日本のカギは“社会受容性”

 こうした「今までにない技術」の開発には、実証実験でのデータ蓄積が欠かせないが、自動運転の場合は「社会受容性」がカギになる。

70代の女性:
「まだちょっと怖いな」

50代の男性:
「どこまで信用していいのか、自動ってなった瞬間に。そこのところの課題がでかいな」

20代の女性
「安全なイメージもありますけど、機械の作動によっては事故とか起こったらどこに責任がいくのかなとか、そういう不安もあります」

経産省などの委託で第一生命経済研究所が行った、自動運転に関する意識調査では、「期待する」という意見が全体の7割近くを占めた。

ただ、その半数はまだ「不安がある」と回答した。人の命にかかわる技術という面が、人を慎重にさせている。

日本の研究者も、こうした状況に課題を感じている。

名古屋大学の森川高行(もりかわ・たかゆき)教授らの研究チームは、春日井市石尾台の公道で、自動運転カートによる移動サービスを手掛けている。

名古屋大学の森川高行教授:
「やはり日本は慎重に行こうと。かなり安全側にふった実験しかできない。アメリカとか中国は割と大胆に、すぐに無人で走らせてみたりとか。なかなか大胆な実験はしにくいという風土はあるかなと思います」

自動運転レベルは「2」。運転席に人が乗る必要はあるが、障害物はセンサーやカメラなどで回避する。地図データと連動し交差点では自動停止するため、運転席では「ほぼ」何もしない。

しかし、交差点を進む際には、運転席の男性が周囲の安全を確認する必要がある。

安全確認の後、運転席で発進ボタンを押すと、再発進だ。

森川教授:
「例えば対向車の情報です。時速何キロで向こうから走ってきて、何秒後に自分の目の前を通り過ぎるかという予測です。その予測の技術のところが、まだきちんとできていない」

安全に進むための判断を行う「AI」の知能を向上させるために欠かせない「実証実験の場」が、日本の自動運転ではまだ足りない。

森川教授:
「膨大なデータを読み込ませて運転知能、人工知能をすごく賢くしていかなくちゃいけないということがあります。これがまだ日本の場合は、なかなかそこまでいけていないというところが現実かなと思います」

2023年7月28日放送