強制感があるPTAに苦しんでいるのは母親で、街の声も参加は「妻任せ」「母親が大半」という声が多かったが、強制せずに自由に楽しく父親たちが関わっている学校もある。

■「PTAは母親がやるもの」のナゼ

 多くの母親が理不尽なPTAに苦しめられてきたが、父親たちはどこか“他人事”だ。

30代女性:
「PTAは母親が大半ですね。時間とられるし面倒くさいですよね」

別の30代女性:
「子供がいながらの(PTA)の仕事は大変な時があります」

70代女性
「やりたくなかった。仕事もしていたし、色々煩わしいじゃないですか」

30代男性:
「(PTAは)なくていいと思う。仕事で出張とかもあるし、変に関わってもいなくなるから」

50代男性:
「どうしても妻任せになっちゃいますよね」

別の30代男性:
「仕事時間的にやっぱりどうしても次の日に備えてのんびりしたいですね」

取材してきた多くのPTAも、会長こそ男性が多かったが、ベルマーク運動など実際にやる多くの活動は、女性が担うところがほとんどのようだ。

【動画で見る】PTAはいつまで女の仕事なのか…「女性ばかりじゃ申し訳ねぇ」小学校の“オヤジの会”に見る本来のカタチ

共働きも一般的な時代だが、「PTAは母親がやるもの」なのはなぜなのか。

PTAに詳しいライターの大塚玲子さん
「日本のPTAが立ち上がってきた時期っていうのが、男性が外で働いて女の人が家事育児をやるよねっていう時代だったので、PTAは専業主婦がやるものっていう前提でずっとこう回っていたわけですよね。母親も働くという家庭が増えていくと、『なんで自分たちばっかりに負担が増えていくのか』っていう思いになって。仕事を押し付け合って、ぶつかり合っている状態」

PTAが全国の学校につくられたのは、戦後まもない70年以上前だ。数年で人が入れ替わることなどから変化が進みにくく、時代に合わないと思えるような慣例が長く残りがちだ。

大塚さん:
「そもそもPTAの会長が男性ばかりだから、女性にもちょっとこう地位を与えようみたいな感覚で、母親代表というポジションが作られたと思います」

■「ハハダイ」経験者の母親が感じたPTAの「固定観念」

 その一つが、東海地方のPTAで広くみられる「母親代表」=通称“ハハダイ”というポジションだ。組織のトップは男性ということを前提に、日常の活動を担う女性たちの中から会長とは別に、実務上のトップを決める慣習のことだ。

愛知県名古屋市・岐阜県岐阜市・三重県津市のPTAに対して行ったアンケートでは、男性が会長を務めるPTAが90.9%と圧倒的だった。

また「母親代表」など、性別を限定した役職は50.3%のPTAに存在していることもわかった。

2023年の春、子供が中学校を卒業した塚本祐佳(さちか 51)さんも、名古屋市緑区の中学校で「ハハダイ」を務めた。

塚本祐佳さん:
「副会長、よくいう『ハハダイ』という役職についておりました。なんの疑問もなく会長はお父さんで、副会長以下はお母さんがやるみたいな」

役員の強制をやめて活動のスリム化にも取り組んだ塚本さんは、PTAにはたくさんの「固定観念」があると感じたという。

塚本さん:
「すごく古臭いイメージがどうしてもあって、パトロールだとか忙しいのに人が必要だから無理やり集められているみたいな。でも実際は、これはやらなくてもいいよねとか。(PTAの参加は)お父さん半分、お母さん半分くらいだとバランスがいいと思うんですけど、どうしても女性が多いので、そこにお父さんが1人2人ポツンと入るとやりづらいのかなという気はします」

■強制なしで自由…PTAの「別動隊」のような「オヤジの会」も

 PTAはいつまで「女の仕事」なのか。父親がPTAに関わる学校も出てきている。岐阜県岐南町の西小学校には「オヤジの会」という父親のグループがある。この日は学校で祭りの準備をしていた。

オヤジの会のメンバーの父親:
「オヤジの会で、資源回収の手伝いからスタートした」

別のメンバー:
「女性ばっかりじゃ申し訳ねえって」

10年以上前に立ち上がり、今は50人以上の「オヤジ」が参加していて、校内の草刈りや整備、運動会のテント張りなど、PTAの「別動隊」のような形で力仕事を中心に担っているという。

毎年、PTAとオヤジの会が、学校を会場にした夏祭りを企画。メインは恒例の「お化け屋敷」だ。

3つの空いている教室を使い、足場を組んだり小道具を作ったり、本格的なお化け屋敷を1週間足らずで作り上げた。

おばけが飛び出すタイミングを練習しながら、オヤジたちは少年のようにはしゃいでいた。PTAにつきものの「強制感」はないようだ。

西小学校のPTA役員 堀場陽子さん:
「大人の男性の方が楽しく遊んでいる感じですかね(笑)。PTAはやらなきゃいけないけど、『オヤジの会』はそうではなくて『やりたい人集まれ』で来ている。PTAもなかなか難しい時代なので、やりすぎてもいけないですし。家事をやらないオヤジたちかもしれないですけど、ちょっと余っているオヤジが学校で子供のために動いている感じ(笑)。お母さんはいっぱいいっぱいなので」

楽しいことばかりの親父たちに色々と思うこともありそうだが、これが“本来のボランティアのカタチ”なのかもしれない。

夏祭り当日、「オヤジの会」が担ったお化け屋敷は、狙い通りに子供たちを楽しませることができた。

参加した児童:
「最高だった」

別の児童:
「お化け屋敷が一番楽しかった」

西小学校のオヤジの会会長 岩田漢さん:
「どうしてもPTAって、ある程度型にはまった中で色々なことをやっていかなければいけないけど、(オヤジの会は)絶対来なきゃとかないし全部自由。それが子供たちに還元できればいいなと思ってやっているんですけど、一番オヤジたちが楽しんでいる(笑)。PTAとみんなで一緒になって、うまくやれているんじゃないかなと思っていますけどね」

2023年8月8日放送