
藤井聡太七冠は将棋界“八大タイトル独占”へあと1勝で、10月11日に王座戦第4局を控えています。1996年に“全制覇”を達成した羽生善治九段ですが、重要な戦いが三重県鳥羽市のホテルで行われていました。元支配人の男性が当時の緊張を振り返りました。

前人未到の八大タイトル独占に期待がかかる藤井聡太七冠ですが、27年前の1996年、当時7つだったタイトルを全て制覇したのが羽生善治九段です。
七冠をかけ戦った場所の一つが、三重県鳥羽市にある「鳥羽シーサイドホテル」でした。
【動画で見る】勝てば全冠制覇に王手…27年前に羽生九段が七冠独占かけたシリーズ 対局場の元ホテル支配人が明かす緊張感

当時の支配人の中島さん:
「こちらのお部屋でございます。ここの畳2枚の間に盤を置きまして、真上にカメラを取り付けた」
当時の支配人だった中島松平さん(79)は、世間の注目が集まる中、対応の責任者でした。

中島さん:
「対局の通知をいただいて3カ月ぐらい前から、いろいろと細々した備品、屏風とか備品の調達にあたりました」

六冠の羽生さんが、当時王将だった谷川浩司さんに挑んだ王将戦七番勝負の第3局。シリーズ2連勝中で、第3局で勝てば七冠達成に王手がかかるという重要な一局でした。

対局室は当時、一番豪華な部屋だった608号室で、直前で発生したNHKの中継にも対応したほか、写真がその場で現像できるよう専用の部屋「写真室」も用意しました。

一番気を遣ったのが「音」だったといいます。
中島さん:
「静かな環境の中でやっていただくということですね。それが第一でございまして。ホテルですから、掃除機の音とか絶対に出してはダメと。当日は音が出るといけませんから、全部閉鎖しております」
静寂を確保しなければいけない中、大盤解説会場には多くの人が集まりました。当時は無料で出入りも自由だったということで、用意した200畳の部屋にはファンやマスコミなど200人以上が詰めかけたといいます。

対局は終盤攻め合いとなり、上手く寄せ切った羽生さんが勝利し、シリーズ3連勝で七冠達成に王手をかけました。

中島さん:
「七冠に王手をかけたということで、伝説に残る対局でもあったかと思います。ホテルの歴史に残るものですね」
一夜明けた日には、王将戦おなじみ「勝者の罰ゲーム」と呼ばれる記念撮影も行われたということです。

中島さん:
「対局者にとって、快く気持ちよく対局ができるように、そういう雰囲気・環境を作ってあげるということがスタッフの使命でもあろうかと思います」