10月、バスケットボールのプロリーグ「Bリーグ」が開幕した。2023年は、ワールドカップで日本代表がパリ五輪出場を決め、バスケ人気を定着させる空前のチャンスだ。

愛知県刈谷市を本拠地にする「シーホース三河」はバスケ界のレジェンド、佐古賢一(さこ・けんいち)さんをフロントに招致し、集客に注力している。開幕戦までの佐古さんの奮闘に密着した。

■バスケ界のレジェンド・佐古賢一さん 古巣に12年ぶり“復帰”

 佐古賢一さんは、シーホース三河の前身「アイシンシーホース」でプレーし、日本代表でキャプテンも務めたバスケ界のレジェンドだ。

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華麗なプレーに、ついた呼び名は「ミスターバスケットボール」。

女性ファン:
「『ミスターバスケットボール』」

男性ファン:
「もう僕らの年代の神ですからね」

別の女性ファン:
「待ちに待った佐古さんが帰ってきてくれて本当に嬉しいです」

現役を退いて10年以上が経つが、未だ人気は衰えていない。佐古さんは、ワールドカップの日本代表の活躍を嬉しそうに振り返る。

佐古賢一さん:
「めちゃめちゃ感動しました。渡邊、富樫、河村っていたるところで聞きますので、本当にバスケット熱が今ボンってあがったなと感じますね」

佐古さんは2023年7月、12年ぶりに古巣の「シーホース」に戻り、シニアプロデューサーに就任した。

佐古さん:
「色んなことに携わってもらいたいというだけで(最初は)よくわからなかったんです。ただオファーを引き受けたのは、三河に帰ってきたいという思いだけです」

■新1部リーグ参加の高い障壁 強豪シーホースの知られざるピンチ

 Bリーグは2016年に開幕。愛知県は、24チームからなる1部=B1に、4チームが所属する「バスケ王国」だ。

シーホースも実力のあるチームだが、佐古さんを頼ったのには理由があった。

佐古さん:
「1番の壁は入場者数なんですよ。下手すると2030年までBプレミアに参戦できなくなるんですね。頑張り時なんです」

Bリーグは2026年に、新しい1部リーグ「Bプレミア」を立ち上げると発表。参加には入場者数や、試合をするアリーナの基準を満たす必要がある。

シーホースは、三河安城駅近くに新しいアリーナを建設する計画だが、大きな壁が“入場者数”だ。昨シーズンの1試合の平均は2806人で、基準の3000人に届いていない。

佐古さん:
「なんでもやりますよ、僕は。近所でちょっと興味あるっていう人がいたら、僕を呼んでくれたら説得してでも連れていきますけどね(笑)」

「なんでもやる」と宣言したレジェンドは精力的に動いた。この日はチームのスポンサー、アイシンを訪問し、PRへの協力を要請した。

佐古さん:
「是非皆さん、力を貸してください」

シーホースにとって勝負のシーズン。ほぼ全席で値下げを実施し、ホームでのほとんどの試合で、高校生以下の子供200人無料で招待することにした。

■一過性の人気では「もったいない」日本中が沸いたW杯の興奮

 ファンを増やすには強いチームであることも重要だ。佐古さんは練習場で選手に積極的に話しかけ、アドバイスを送る。

シーホースとしても追い風にしたい日本代表の活躍。ファンの感動を呼んだワールドカップは、かつての代表のキャプテンも胸に迫るものがあったという。

佐古さん:
「興奮どころじゃない、涙ぼこぼこ出てきました。我々が現役でやっていたころは、『俺たちが時代を作ってやる』っていう思いがすごく強かったんですよね。今年のチームを見て、『あーお前たちだったか』ってすごい思いました」

長年、日本のバスケ界の浮き沈みをみてきたミスターバスケットボールには、「この人気を止めたくない」という強い思いがある。

佐古さん:
「このキュッてさ、怖いのは反動があるよね。このギュッとあがったときそのときの核になった選手たちっていうのは人気かもしれないけど、一過性で終わらせちゃったら本当にもったいない」

■「強いチームあることを知ってもらいたい」ドルフィンズもコートの内外でファンにPR

 今シーズンにかけるのは、シーホースだけではない。9月9日、「名古屋ダイヤモンドドルフィンズ」はホームの愛知県体育館でのプレシーズンゲームで、本番さながらのプレーを見せ、ファンにアピールした。

来場した男性ファン:
「選手から近いよね、サッカーとかと比べて」

来場した女性ファン:
「迫力がすごいあるので。選手の靴の音とか、ボールつく音とかがすごい好き」

プロ野球やJリーグに比べて選手との距離が近く、迫力あるプレーを楽しめるのがBリーグの醍醐味だ。

また、この日は試合が始まる直前まで、イベントブースでファンとふれあう選手の姿があった。

女性ファン:
「選手をアイドルとして見ているところもあって、カッコいい。推し活ですこれは」

名古屋ダイヤモンドドルフィンズの中東泰斗(なかひがし・たいと)選手:
「ファンとの距離が近いというのは魅力だと思うので、そこもポイントとして推していきたい。ドラゴンズやグランパスに負けない強いチームがあるんだというのを知らせていきたい」

ダイヤモンドドルフィンズでは、こうした試合以外の選手の様子もSNSで積極的に発信している。

名古屋ダイヤモンドドルフィンズの広報担当者:
「W杯でバスケが盛りあがっているシーズンなので、ぜひこれを機にプロの選手のプレーを見てバスケにハマって、毎試合にでも来るようなファンを少しでも増やしていけたらいいなと思っています」

■ホーム開幕戦は目標を大きく超える来場者 佐古さん「まだ始まったばかり」

 10月14日、シーホース三河のホーム開幕戦の会場には、佐古さんの姿があった。

佐古さん:
「始まりますね、ドキドキしています。今まではロッカーとコートの行き来だけだったので。いいおもてなしができればと思います」

来場者を直々に出迎えたレジェンドに、たちまち行列ができた。

男性ファン:
「こんな近くで佐古さんに接するのは、ドキドキするぐらい申し訳ない気持ちになります」

女性ファン:
「もうレジェンドもレジェンドなので、待ちに待った佐古さんが帰ってきてくれて本当に嬉しいです」

別の男性ファン:
「僕らの年代の神ですからね」

この「神対応」に、試合が始まる前からファンも興奮気味だ。

セレモニーを会場の隅から見守ったあと佐古さんは “ハッピ”に着替え、スタンドのファンにお菓子を配って盛り上げた。

シーホース三河は、日本代表チームでも活躍したファジーカス選手を擁する川崎ブレイブサンダースと対戦。

この日、佐古さんが試合展開以上に気になっていたのが、入場者数だ。試合が始まるとすぐにコートを離れて確認した。

スタッフ:
「4000人は超えます、あともうひと踏ん張り」

別のスタッフ:
「今から手売りに行ってきます」

スタッフはさらに客を呼び込もうと、駅へ向かった。

試合は、シーホースが残り7秒で同点に追いつく白熱の展開でしたが、惜しくも敗戦。しかし、目標の3000人を大きく上回る4456人のファンが声援を送った。

佐古さん:
「惜しかった~、勝ちたかったですね。その中でも4500人という方々が体育館に足を運んで頂いたということに感謝しかないです。まだ始まったばかりなのでファンの皆さんと一緒に成し遂げる1つの施策として、僕も一生懸命頑張りたいと思います」

2023年10月17日放送