恋愛感情を利用して、男性らから1億円以上の金をだまし取ったなどの罪に問われている「頂き女子りりちゃん」の裁判が6日、1カ月ぶりにあった。

茨城県の50代男性から約3850万円をだまし取ったとされる罪の裁判で、検察の冒頭陳述から、「頂き女子」が犯行に至る経緯から手口まで、克明に明らかにされた。

■裁判長にこの日も「ないでーす」

 縁がクリアなメガネに白マスクを着用し、紺のスウェットに黒のチノパンを履いて入廷した“頂き女子りりちゃん”こと、住所不定・無職の渡邊真衣被告(25)。髪は耳の下あたりからが茶色く、1カ月前の初公判に比べると黒い部分が増えた。

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この日は「親と縁を切るためにこれまでの養育費を払わないといけない」などとうそを言い、マッチングアプリで知り合った茨城県の50代の男性から、約3850万円をだまし取った罪についての裁判。

裁判長に住所や職業を聞かれると「ないでーす」と、初公判と同じように語尾を伸ばして答えた。

■2680万円の振り込みを受けた翌日 Xに「何千万と振り込んでくれているジジイ」

 起訴内容については全面的に認め、検察の冒頭陳述では、渡邊被告が犯行に及んだ理由や手口が克明に明らかにされた。

渡邊被告は遅くとも2018年ころからホストクラブに通って豪遊を始め、指名するホストに対し、一度に数百万円から数千万円を使うようになったという。

資金を作るために「頂き女子」と称して、マッチングアプリで知り合った中高年の男性から金銭をだまし取るやり方を思いつき、2023年4月ごろ、マッチングアプリで被害者と知り合い、その後、実際に会ってLINEで連絡を取り合うようになった。

4月26日、渡邊被告は被害者に、親と不仲で手切れ金が必要になり、これまでの養育費800万円を請求されたとウソを言い、被害者は渡邊被告の口座に200万を振り込んだ。被害者は生命保険を一部解約して、残りの600万円を用意したという。

5月11日には渡邊被告がLINEで「『池田』という人間に借金していて、返済できなければ風俗店で働かされる」とウソの相談をすると、被害者はそれを信じこみ、渡邊被告が借金が解決したら同棲すると約束したため、生命保険を解約してさらに2680万円を振り込んだ。

「池田」は架空の人物で、被害者が借用書や使途の証拠を求めたため、渡邊被告は「池田」に借金があるように装い、ニセの借用書や「池田」とのLINEを見せて、被害者にウソを信じこませていたという。

被害者から2680万円の振り込みを受けた翌5月12日、渡邊被告は「私にこれまで何千万と振り込んでくれているジジイ。でも、絶対ジジイにごめんねとか私の心を殺してしまうようなことを一生涯思わないよ」とX(旧ツイッター)で投稿していた。

■辛い生い立ちや家族の不仲等…「詐欺マニュアル」にも載せた騙すための“下準備”

 渡邊被告は騙すための下準備として、辛い生い立ちで家族仲が悪いというウソを、被害者に伝えていた。

被害者には、好意を抱いてるような言葉のほか、金銭的な問題を抱えていて、解決しないと別れなければならないとも仄めかしていたという。

渡邊被告に好意を持っていたため、被害者はその言葉を信じ、抱えている金銭問題を解決したら、同居や結婚をしたいと度々伝えていて、渡邊被告も受け入れるようなそぶりを見せていた。

■生きる価値は「ホストの売上を1位にすること」

 取り調べの中で渡邊被告は「彼女を演じていたが、同居する気はない」「借金をした池田は架空」「金を求めた理由は全て嘘」「実際はホストクラブで使う金が欲しかった」と供述していて、また、頂き女子として活動していることが勤務していた風俗店の客に知られ始め、新しい「おぢ」を探す手段としてマッチングアプリを利用したきっかけだったことも明らかになった。

ホストにのめりこみ詐欺を始め、1度で数百万から数千万円を使ってそのホストの売上を1位にすることが自分の生きる価値や生きる意味と考えた渡邊被告。

次回は2024年2月16日、横浜市の男性から1億1700万円を騙し取った罪について裁判が行われる。