エース西田優大を欠く中、「Next Man Up」を体現

ウィングアリーナ刈谷で行われた信州ブレイブウォリアーズとのゲーム。シーホース三河は、2月3日のGAME1を85-76で、2月4日のGAME2を80-67で勝利。満員のホームで連勝を飾った。

西田優大が1月28日の群馬クレインサンダーズ戦後、左ハムストリング損傷のため離脱。しかし信州戦では、西田優大の弟・西田公陽がプロ初得点を記録、さらに怪我で長らく戦列を離れていたシェーファーアヴィ幸樹が復帰するなど、三河にとって明るい話題が多い2試合となった。

今節のハイライトは、やはりシェーファーの復帰だろう。昨シーズン、3月26日に行われた大阪エヴェッサ戦で、右膝前十字靭帯断裂の大ケガを負ったシェーファー。実に314日ぶりの復帰となったGAME1では、9分22秒出場して3得点を記録。3Pシュートを決めた瞬間、シェーファーは小さく拳を握り、満員のアリーナは大歓声に包まれた。GAME2は欠場となったが、シェーファーは「もともと欠場は決まっていたこと」と話す。

「痛みがあったとか悪化したとかではありません。今日は様子を見るために欠場が決まっていました。ライアン(リッチマンHC)は、出場するタイミングやプレータイムのことを事前に伝えてくれていたので、とても準備しやすかったです。久しぶりにコートに立ったときは感慨深いものがありましたね。三河に加入して4年目ですけど、(コロナ禍で)声出しの制限がないホームゲームを経験したことがなかったんですよ。3Pシュートを決めたときは声援を受けて体が熱くなるような感じで、それがすごく気持ちよかったです」



「ファンや仲間、代表選手の存在がリハビリの励みになった」

高校からバスケを始め、瞬く間に日本代表に選出。シェーファーは貴重な日本人ビッグマンとして、順風満帆のバスケ人生を送ってきた。そこに訪れた右膝前十字靭帯断裂というアクシデント。

「(ケガをしたときは)これまで経験したことのない痛みでしたし、大きなケガであることはすぐに分かりました。辛かったのは、ケガをしたときよりも翌日ですね。MRIで診断結果を伝えられたときが一番ショックでした。この先、1年くらいバスケができない、そもそもまともに生活ができなくなる。そんな現実を突きつけられて、さすがに落ち込みましたね」

しかし、長く落ち込んでいる暇はなかったそう。家族や友人、チームメイト、ファン、そして日本代表で躍動する仲間がいたからだ。

「友人や家族がすぐに駆けつけてくれました。手術前後もサポートしてくれて、常に誰かがそばにいるような状況だったので、早々に気持ちを切り替えることができましたね。シーズン中の出来事でしたし、戦うチームメイトの姿も励みになりました。あと、日本代表の活躍もリハビリを頑張れた理由の一つです。代表で一緒にやっていた仲間が頑張って、W杯で勝利という結果を出しました。ちょうど解説などで関わらせていただく機会があって、彼らの活躍がとてもうれしかったですし、パリ五輪出場の権利を勝ち取ってくれたおかげで、その舞台に立てるチャンスも生まれました。もちろん、悔しさもあります。その舞台に立てなかったこと、僕はW杯や東京五輪で勝利を経験できなかったけど、僕がいない間に彼らがいろいろと成し遂げたこと。正直、選手として悔しい気持ちもありました。でも、もう一度、こうした舞台に立てるかもしれないと思って、リハビリを前向きに取り組むことができました」

復帰となればいろいろと期待したくなるものだが、状態についてはシェーファー自身が一番理解している。「丁寧に、焦らずパフォーマンスを上げていくことが大切」と話すように、自身のコンディションについて冷静に捉えている。

「ワークアウトはシーズンが開幕した頃から始めていました。12月上旬から別メニューで練習に参加するようになって、12月中旬からチーム練習に加わり、まずはコンタクトなしで、それからコーチと1対1、他の選手と1対1、2対2、3対3…そして5対5と、少しずつ強度を上げていきました。5対5もハーフコートをやってからフルコートなど、順を追って取り組んできました。ライアンがNBAやGリーグで実践していた、ケガをした選手の復帰プログラムに沿ったものです。トレーナー陣と相談し、膝の状態を伝えながら、段階を踏んで準備することができたので、特に不安はありませんでした」

リハビリ中に新しい発見もあったそう。

「まず、シュートフォームを修正することができました。上半身の筋力もアップしました。あとは体の使い方をイチから見直すことができ、以前よりも動きやすくなったと実感しています」

今の三河は、スピーディーなトランジションオフェンスが一つの武器だ。ダバンテ・ガードナーを起点にしたハーフコートバスケットもある。シェーファーには走力も高さも体の強さもあり、どちらのスタイルにも対応できる。そして、シェーファーがインサイドに加わることで、ジェイク・レイマンが3番ポジションでプレーできるようになれば、相手チームにとって脅威となる。

「練習に参加できなかった頃、僕が戻ったときにどういうことをしてほしいか、チームにどういうプラスを与えてほしいか、ライアンは考えを伝えてくれました。それがモチベーションの維持にもなりました。ジェイクは本来、3番の選手なので、僕がプレーすれば彼の助けになれると思っています。あと、僕とザック(オーガスト)とダバンテで超ビッグラインナップなど、ライアンもいろいろなバリエーションを試したいと言ってくれています。まだまだ練習不足でこれから修正が必要ですけど、臨機応変なスタイルというか、すごく面白いバスケが披露できると思っています」

ケガでチームメイトを欠いたとき、リッチマンHCは「Next Man Up(誰が代わりにやってくれるのか)」のメンタリティを説いていた。シーズンは折り返しとなり、これまで以上に重要な試合も増えていく。連携面も含めて最高の状態になるのは時間がかかるだろうが、シェーファーが三河のラストピースとなり、チームを次のレベルに上げてくれることを期待したい。


GAME1
シーホース三河 85-76 信州ブレイブウォリアーズ
三河|21|21|24|19|=85
信州|17|24|13|22|=76

GAME2
シーホース三河 80-67 信州ブレイブウォリアーズ
三河|22|19|21|18|=80
信州|15|21|12|19|=67