恋愛感情を悪用して複数の男性から多額の現金をだまし取った「頂き女子りりちゃん」の事件で、被害にあった男性と、裁判中の渡辺真衣被告を取材すると、見えてきたのは、それぞれの心のスキマだった。

■突然泣き出し裁判が中断する場面も…検察が求刑し結審

「頂き女子りりちゃん」こと渡辺真衣被告(25)は、「借金を返済しなければいけない」などとウソを言って、男性3人から合わせて1億5500万円余りをだまし取ったほか、その所得を申告せずに4000万円を脱税した罪などに問われている。渡辺被告はこれまでの裁判で、いずれの罪も認めている。

【動画で見る】互いの“心のスキマ”埋めるように…ホストに金貢ぐ女と金を渡した男性『頂き女子りりちゃん事件』の深層

3月15日の裁判で検察側は、「入れあげていたホストをナンバーワンにするため、真剣な交際を求める独身男性の心情につけ込み、繰り返し金銭を拠出させた卑劣な犯行」と指摘。懲役13年と罰金1200万円を求刑した。弁護側は、「罪の重さを自覚していて長期の収容は必要ない」と主張した。

この日の裁判の中で被害の弁済について聞かれた渡辺被告は、「お金は少しずつ返す」と述べたものの、突然泣き出し、裁判が2分ほど中断する場面もあった。

■被害男性「この一時を助けて、ただ一緒に暮らしたかった」

被害に遭った男性(50代):
「蓄えは全て持っていかれちゃった。何もできないっていうか、生活するだけで精一杯」

茨城県土浦市に住む50代の男性は渡邊被告に約3800万円もの現金をだましとられたという。

被害に遭った男性(50代):
「マッチングアプリで出会いました。お互いに『いいね』って相互評価しまして、『アパレル会社に勤める真衣です。同世代の人とはいろいろあって男性恐怖症になっちゃっているから、少し年上の人がいいかなということで“いいね”しました』みたいな」

2023年4月、付き合っていた女性と別れたのをきっかけに、マッチングアプリに登録した男性。はじめてマッチした相手が 「りりちゃん」だった。

被害に遭った男性(50代):
「アプリ上のメールで意気投合しまして、翌日こちらまで来て1時間ほどお茶をしました」

アプリでやり取りをした翌日、りりちゃんは男性に会うため茨城県まですぐに来てくれたという。

被害に遭った男性(50代):
「実際に会った時には、ちょっとおとなしめの子だな、みたいな感じの印象を受けました。“りりちゃん”として派手なメイクに感情豊かにしゃべる様子とか、まるっきり別人ですね。こんな若くて可愛い子が“いいね”してマッチングして、こちら(茨城県)でお茶して、『次も会ってくれるの』みたいな感じでのめり込んじゃったんですね」

その1週間後、秋葉原で食事をした日には…。

《りりちゃんからのLINEでの手紙》
デート1日目
秋葉原で待ってた ドキドキしてた 私喋るの本当に苦手なのに
あんなに沢山喋れる自分に驚いています 自然に笑顔になって笑えるんです
たくさん笑わせてくれて幸せな気持ちにしてくれてありがとう。すきです

りりちゃんは、食事を「初デート」と伝えていた。

被害に遭った男性:
「一目惚れプラス趣味が合って、相手の『どこどこ行きたいね』とかそういうのを夢見てというか、想像して好きになってしまった、きっと」

しかし、この“初デート”から2日後。

被害に遭った男性:
「LINEのやりとりをしていまして、『私いなくなるかも』と。『どうしたの?何があったの』って(聞くと)、実は親からお金…、不仲だから(親が)『養育費を払え』と、『そのお金を工面しなくちゃいけない』と…」

不仲だという親との手切れ金として800万円が必要だと男性に打ち明けたりりちゃん。男性は、生命保険を解約し、800万円をりりちゃんに手渡した。

被害に遭った男性
「(お金を)出してあげる代わりに、『LINE上でも電話口でもいいから、親御さんに会わせて』と。高いけれども、その結納金ということで。ただこの一時を助けて、ただ一緒に暮らしたかった。今にして思えばなんですが(初めて会った日の)帰り際にぼそっと漏らした、『実は親と不仲なんだ』っていのうが布石だったような感じですね」

初めて会った日の帰り際に、親と不仲だと打ち明けられたこともあり、男性は信じてしまった。さらにその約2週間後には、りりちゃんがアパレル会社を立ち上げるために「池田」という人物に借金をしたと説明し、2700万円の借用書まで見せられたという。

被害に遭った男性
「借用書偽造してまでやるっていう頭は、私には全然なかった」

りりちゃんと出会って4カ月の間に男性が渡した総額は、3800万円もの額になっていた。

なぜ、男性は多額の現金を渡してしまったのか。

■「ひとりで寂しい人なのかなって」…隠されていた1つ1つの行動の「意味」

 記者が裁判中のりりちゃんと接見し、男性とのやりとりについて話を聞くと、その言動の1つ1つに「意味」が隠されていたことがわかった。

記者:
「男性にすぐ会いにいったのはなぜですか?」

りりちゃん(接見):
「まず会ってみて、お金をもらえる人なのか確かめたい。会いたいって言ってくるってことは、ひとりぼっちで寂しい人なのかなって」

マッチングアプリで知り合った翌日に会いに行ったのは、男性に「寂しさ」など「心のスキマ」があるかどうか見極めるためと説明した。

さらに男性と初めて会った日の帰り際に、「親と不仲」と打ち明けたあの時も…。

りりちゃん(接見):
「仲良くなったと思わせてから影を見せるように言うと、リアリティが出てきませんか?このテンションの落差が大事で、『あれ?気になる』ってさせるんですよ」

そして、りりちゃんは狙いをつける男性についても決めていた。

りりちゃん(接見):
「自分の中では遠慮なくメッセージ送れたのが50代。特に出会い系アプリを始めたてで、返事が早く入り浸っている人は、独りぼっちで寂しい人。女の子にひっかかった経験のない人を探していた」

りりちゃんは、毎日のように男性に、「好きだよ~」「ありがとう~」などのメッセージ動画も送っていた。

男性の家を訪れ、帰り際にシュークリームをもらった日には…。

被害に遭った男性:
「シュークリームあげたりして、『めっちゃおいしかった』とか(のメッセージ動画が届いた)。雨に濡れて駅に送っていくときも、『風邪ひいちゃうから』と俺の体を心配してくれた」

被害男性:
「女性と全然交流がなかったとかはないけれど、それが恋愛関係に発展してくることはなかなかなかった」

記者:
「結婚願望はありましたか?」

被害男性:
「もちろんあります。それもあるから、焦りもあったというのも事実ですし」

相手の気持ちを感じ取り、「心のスキマ」に入り込んだりりちゃん。

それができた理由は、りりちゃんから記者に届いた手紙から見えてきた。

《りりちゃんからの手紙》
「私は人間が何を考えているのか、どんな人なのかがわからない状態にとても恐怖を感じてしまうので、相手がどんな人間か読み取る、見極めようとする事に敏感なのかなーと思います。それはきっと私が人一倍、人に嫌われることを恐れているから」

《りりちゃんからの手紙》
「私は小学生から中学生の時、アトピーの湿疹が体にありました。言葉でも目線や態度でも、私の肌がきたない、こわいきもちわるいと示されました。自分が生きている価値が全く分からなくなってしまいました。もうこれ以上人に嫌われたくなくて、また少しでも傷ついたら全部こわれてしまいそうで。人といる時はずっと相手のことを考えて嫌われないようにするのが、ずっとクセづいてました」

学校で居場所がなかったりりちゃんは、父親から包丁を突き付けられるなどの虐待を受けていて、家にも居場所はなかった。ホストクラブに居場所を求め、担当のホストに貢ぐことで、その「心のスキマ」を埋めるようになっていた。

記者:
「男性がなぜ喜ぶことが分かったのですか?」

りりちゃん(接見):
「自分が担当(のホスト)にしてもらったらうれしいことをしてあげた。思い出をたくさん作るのが重要なんです。『あの子のためなら』ってなるから。どうしたら自分といると楽しいかを常に考えていました」

ホストに認められるために金を貢ぐ自分と、そんな自分にお金を渡す男性。お互いの「心のスキマ」を埋めるように、詐欺行為は繰り返されたのかもしれない。

記者がりりちゃんに被害に遭った男性に伝えたいことを尋ねると「私のことをどう思ってるのか、聞いてきてください」と話した。

そのりりちゃんの問いを記者が男性にぶつけると、男性はこう語った。

被害男性:
「きちんと罪を償ってほしいっていうのはもちろんありますけど、あくまでそれは建前上。(本音は)親を説得してでもいいから弁償しろって。第2、第3のりりちゃんを作らないように」

そしてりりちゃんは、手紙や接見を通じて、こう語った。

りりちゃん(接見):
「今は所持金がない。どうやってお金を稼げるかは考えている最中です。刑務所を出た後、仕事をして返していかないとなって思っていますよ」

《りりちゃんからの手紙》
安心して自分の身を落ち着かせられる場所が、絶対に1人1つないと、人間は壊れてしまう。自分が出所した後は、その問題改善のために、何か役に立てたら良いなと考えています。

裁判は、4月22日に判決が言い渡される予定だ。

2024年3月15日放送