■高い修正力で13点差を跳ね返して逆転勝利

3月1日・2日に刈谷市体育館で「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25シーズン」のB1リーグ第22節が開催され、シーホース三河は千葉ジェッツと対戦。GAME1は96-98で敗れたものの、GAME2は85-68で勝利。ワイルドカード上位を争う千葉Jを相手に価値ある1勝を手にした。

GAME1は、試合後にライアン・リッチマンHCが「プレーオフのようなゲームができた」と話すように、両チームが激しいディフェンスを上回って得点を決め合うハイスコアゲームとなった。このゲームでは、千葉Jは3Pシュート成功率58.1%を記録。クリストファー・スミスは34得点を上げ、“理不尽”とも言えるようなシュート力で三河は千葉Jに押し切られた。

GAME2では、どのような“カイゼン”が見られるかを期待したが、この日も千葉Jの3Pシュートは止まらない。前半の3Pシュート成功率はまたしても50%を超え、前半を終えて43-50と、三河は終始追いかける苦しい展開を強いられる。

3Qに入ると千葉Jにリードを広げられ、残り6分半で43-56。13点のビハインドを背負った時点で、リッチマンHCはタイムアウトを要求する。ここから試合の流れが変わった。

リッチマンHCはタイムアウトの場面について振り返る。
「ディフェンスに対してのメンタリティを改めて話しました。オフェンスでは、一方にボールが停滞していたので、サイドチェンジをするなどボールを動かすことを伝えました。タイムアウト直後のオフェンスは得点につながりませんでしたが、ザック・オーガスト選手がいいカタチを作ってフリースローを獲得。13点差という困難な状況に追い込まれたときにチームとスタッフが一体となって、必要なことを自分たちで見出して遂行できた。戦う姿を見せられたことは誇りに思います」

3Q残り3分半になったところで、三河のセカンドユニットがコートに揃うと反撃の狼煙が上がる。千葉Jのミスを誘い、大きなランを生み出すことに成功。長野誠史はアシストを連発し、角野亮伍は値千金の逆転3Pシュートを決め、3Q終了時点で63-61と試合をひっくり返した。勝利の立役者の一人、シェーファーアヴィ幸樹はこう振り返る。

「昨日はミスコミュニケーションがあり、打たせてはいけない選手に3Pシュートを許してしまいました。そこを修正してGAME2に臨み、前半はリズムをつかめないところがありましたが、後半はいいカタチで抑えることができました。自分たちはディフェンスチームです。やるべきことを遂行できたゲームでした」

最終的に後半は千葉Jを18点に抑え込み、85-68で勝利。結果だけ見れば快勝だが、簡単に崩れない粘り強さ、ゲーム中の修正力、そしてオフェンスリバウンドに対する変化などが垣間見られた、非常に意味のあるゲームだった。



■シェーファー「全員でオフェンスリバウンドに対する意識を変えた」

この2試合で明らかに変わったのはオフェンスリバウンドだ。三河のオフェンスリバウンド数は1試合あたり平均10本未満で、リーグで下から数えたほうが早い。しかし、千葉J戦ではGAME1で17本、GAME2で16本を記録した。GAME2で4本のオフェンスリバウンドを奪ったシェーファーは、この変化について説明する。

「今シーズン、オフェンスリバウンドは自分たちの課題でした。これまではオフェンスが終わったらディフェンスと、攻守の切り替えを強く意識していました。ファストブレイクをあまりやられないのが自分たちの強みですが、もうワンステップ上のチームになるためにオフェンスリバウンドも意識しようと。バイウィークにしっかりと準備して、意識を変えるだけでここまで結果が出るとは思いませんでした。ビッグマンが狙うのは当然ですけど、ガード陣も含めてみんな飛び込んでくれて。そこが大きな違いだったと思います」

印象的なプレーもあった。3Qのラストプレー、ゴール下でシェーファーがジョン・ムーニーにブロックされたシーンだ。このシチュエーション、これまでのシェーファーなら後ろに飛ぶなど“かわすようなプレー”が多かった。しかし、今日は結果的にやられたが勝負した。シェーファーは「いやいや」と苦笑いしながら振り返る。

「ダンクを狙うか迷いがあって中途半端でしたね。(ムーニー選手が)飛び込んでくるのが見えたので、シュートフェイクをするなり、ダバンテにパスを出すなり、選択肢がありました。簡単にブロックされてしまったのは課題だと思っています」

本人はそう悔いるが、シェーファーを指導してきた水野宏太アシスタントコーチ兼通訳の見解はこうだ。
「あれは対策していたシチュエーションでした。シュートフェイクに飛びやすいチームなので、相手を飛ばしてスコアするかアシストを狙うか、練習でも強調して取り組んできました。結果的にブロックされて本人は悔しいと思いますが、リーグを代表する外国籍選手の一人であるムーニー選手に果敢に立ち向かってくれて、彼の成長につながるようなメンタリティの強さが見られて嬉しかったです。ゲームを通してリバウンドで体を張ってくれましたし、ディフェンスでは正しいポジションを取って貢献してくれました。彼の成長を見ることが僕の喜びですね」

GAME2は、プレーオフを争う上でも重要なゲームだった。試合後の取材で、シェーファーに「強豪の千葉ジェッツを相手にいいゲームができた。自信につながったか?」といったニュアンスの質問が飛ぶと、彼はこう答えた。

「たしかに上位のチームにはなかなか勝てていません。でも、簡単に連敗しないのが今の自分たちです。あと、相手のほうが格上とか自分たちのプレーが通用するかどうかとか、そんな気持ちで試合に臨んでいません。自分たちも優勝を狙うレベルのチームなので。強豪と言われるチームが相手でも自分たちがやるべきことにフォーカスし、自信を持ってプレーしています」

Bリーグ発足後の成績を見れば、千葉Jの“格”は上だろう。しかし、選手たちに臆する様子はない。言葉の節々から感じる確かな自信や手応え。新体制になってリーグにインパクトを与え、プレーオフにも出場した昨シーズン。それはもうフロックではない。今の三河は、間違いなく強い。