
名古屋市の街頭で、深編笠をかぶり、侍の格好をしてサックスを吹く「サックス侍」の路上ライブには、毎回多くの観客が集まります。普段は市内で務める会社員ですが、魅力が少ないといわれる名古屋の「観光地」に自分自身がなりたいと、音を響かせています。
■名古屋の街頭で人気の「サックス侍」
名古屋市千種区の地下鉄今池駅。この日、駅構内には30人ほどの人だかりができていました。
【動画で見る】自らが“魅力少ない街”の観光地に…深編笠かぶり侍姿で演奏『サックス侍』2人の子を持つ40代会社員が奏でる夢

その先にいたのは深編笠をかぶってサックスを吹く男性、名古屋では有名な「サックス侍」です。

演奏を生で聴きたいと、はるばる東京から来る人もいました。
駅での演奏を終えるとバイクに楽器をしまい次の演奏会場、名古屋市昭和区の「鶴舞(つるま)公園」へ。

この公園は、週に3日ほど演奏をしているという、いわばサックス侍のホームグラウンドです。

サックス侍:
「きょうはここで夕方から演奏します。だいたい毎週木曜日、あと土日の間時間。そのほうが皆さんわかりやすいので」
■サックス侍の正体は2人の子供を持つ40代の会社員
学生時代に趣味で始めたサックスで、約10年前からストリートライブをしているという男性。

侍の格好をしているのは、コロナ禍でフェイスシールドがわりに深編笠(ふかあみがさ)をかぶり、侍のような恰好で演奏したところ思いのほか好評で、それ以来“サックス侍”と名乗るようになったといいます。

素顔こそ隠してはいますが、正体は名古屋市の会社に勤める40代後半の会社員で、大学生の子供が2人いるお父さんです。家族には、サックス侍としての活動を明かしています。

平日は仕事が終わる夕方から演奏し、休日は1日中ライブ。ほぼ毎日「サックス侍」としての日々を送っていますが、家族や会社が、活動に理解を示してくれているといいます。

この日は、最低気温氷点下1度と「最強寒波」襲来の真っ只中でしたが、開演5分前になると、広場に人が集まってきました
■観客の中心は中高年「人の悲しみに寄り添う」
そして午後6時、いざ演奏が始まると、ファンだけでなくその場で足を止める人も加わり、60人以上が美しい音色に耳を傾けていました。

この日は「眠れぬ夜は誰のせい(MISIA)」「I LOVE YOU(尾崎豊)」「メロディ(玉置浩二)」「雪の華(中島美嘉)」など8曲を、ノンストップで45分間演奏しました。

観客の女性:
「本当に涙が出ちゃう。染み入りますね、サックスの音ってね」
別の観客の女性:
「もう感無量で、幸せです。この年になって追っかけって初めてなので、私たちの心の拠りどころです」
観客の男性:
「音色きれいやったし、選曲もよかったし、ちょっとジーンとしました」
また別の観客の女性:
「よかったですね、寒かったんですけど、サックス侍さんの曲が私にもマッチしていて、何度聴いてももう度聴きたいと思う」
サックス侍の演奏を聴きに来る観客は中高年が中心です。
サックス侍:
「僕の演奏する曲は、元気な音楽じゃないんですけれど、人の悲しみに寄り添うって大事なことなのかなと思ってですね」

演奏するのはほとんどがバラードで、人生の悲哀を歌った曲も多く、これが大人たちの心を掴んでいるようです。
■海外からオファーも…サックス侍の夢は「自分を名古屋の観光地に」
最近では全国のイベントでも引っ張りだこで、2025年2月末に福岡のショッピングモールで行った演奏会では、九州の人たちの心もしっかりと掴んでいました。

九州の演奏会を訪れた男性:
「まさか本物のサックス侍を九州で聴けるとは」
一緒にいた女性:
「感動して涙が出ました」
2025年は台湾とシンガポール、2026年にはドイツで演奏する依頼もあるといいます。

サックス侍:
「自分が好きでやっていることなんですけど、それを聴いて『感動した』とか『明日から頑張れる、励みになった』と言ってくださる人が非常に多くて、自分が好きなことが誰かの役に立つのは幸せなことだなと思って。活動のテーマとしては『自分を観光地』にしたい。名古屋が魅力のない街ナンバーワンみたいなニュースがあって、侍って格好ですし、人が観光の資源になるっていうのも1つのリソースとして面白いんじゃないかなと思ってこの活動をしているところも、今は。まあ夢ですかね」
2025年3月6日放送