
東海テレビニュースONEでは、シリーズで「SNSな人々」をお伝えします。いまや“社会そのもの”といっていいほど私達をとりまいているSNS。そんな時代を「うまく生きる」ヒントをさまざまな人の声から探ります。
さまざまな理由で不登校となる子供たちが増える中、インターネットの学校「オンラインフリースクール」が注目されている。仲間や講師たちとつながりながら自由に学ぶことができ、子供たちの「新たな居場所」になっている。
■不登校の子供たちの支えに…「つながる」オンラインフリースクール
岐阜県高山市に住む小学3年生、さよちゃんは平日の朝、同級生が小学校に行っている時間に、自宅でパソコンに向かう。
【動画で見る】家の中からまず“外の世界”へ…不登校児の新たな居場所『オンラインフリースクール』ネットでつながる学びのカタチ

クラスガイドの男性:
「みなさんおはようございます、きょうは水曜日ですね。水曜なのでAとDにわかれてやっていきます」
クラスガイドの女性:
「みんな桜見てる?」
さよちゃん:
「桜咲いてない」

メタバース空間の教室で学ぶ『オンラインフリースクール』では、子供たちは自分のアバターを動かし、マイクやチャットで会話もできる。

さよちゃん:
「ここでは、Aクラスで自習していたみんなが集まっているみたい。ゲームしたり、友達としゃべったり、自由ですね」
さよちゃんは、全国でさまざまな体験学習を手掛ける会社が2年前に開校した、「aini school(アイニスクール)」に通っている。

aini school では全国のおよそ100人の小中学生が学んでいるが、そのほとんどが不登校で、さよちゃんもその1人だ。
■学校に行かない“選択”…オンラインで「つながり」を
さよちゃんは公立小学校に入学して1カ月ほど通ったが、自分のやりたいことが自由にできないことに違和感を持ち、学校に行かない選択をした。
さよちゃんの母親:
「1年生の時は5月まで頑張って、たぶん彼女なりに頑張って、そこからやっぱり本当に行きたくない感じになって」
さよちゃん:
「本当に限界になった」
さよちゃんの母親:
「で、もう『行かない』という選択をしましたね」

高山市内には、市が運営するものも含め、3つのフリースクールがあり、見学にも行ったが、さよちゃんには合わなかった。
さよちゃんの母親:
「行かなくなってからしばらくは気力ないし、表情も重かったですし、私も誘い出すんですけど、やっぱり乗らないことも多かった」
さよちゃんは、母親が見つけたオンラインフリースクールに通い始めた。
さよちゃん:
「何かいろいろ、学校で学ぶ算数とか国語とかじゃなくて、いろんな昔の話とか書道とか、いっぱい習ったりしてる」
母親も最初は不安だったという。
さよちゃんの母親:
「不安でしたね。まだ低学年ですし、どんなふうにコミュニケーションとれるかなとか、やっぱり個人情報の問題もありますし、自分でどれだけ判断ができるかなっていうのは不安だったんですけど、そこはaini schoolで、オンラインリテラシーっていう授業もしてくださったりとか、仲間同士でも教え合う関係性があって、逆に今は安心ですかね。そういう場でスタートできたことはすごく大きいなって」
■ネット上に子供たちの「居場所」…外の世界に出るきっかけに
オンラインフリースクールを支える講師も、さまざまな場所からつながっている。講師にあたるクラスガイドの“ジェイ”こと青中潤也さんは、広島県三原市の自宅から子供たちをサポートしている。

aini schoolでは、子供たちが自分のやりたいことを選べる仕組みで、この日は、ひとりの子がやっていた英語のゲームを、画面を共有しながらみんなで考えていた。

その時、青中さんは教室から離れて、ひとりでいる子供を見つけた。
青中さん:
「ぽちた、どうした?やりたいこととか、やること見つからん感じかな、何かしたいことある?今ね、下でホラーゲームやってるけど」

ぽちた:
「脱出ゲームやりたい」
青中さん:
「じゃあちょうどやってるよ、英語部屋にそのまま入り」
ひとりでいる子にも声をかけ、それぞれの意見を否定することなく、やりたいことを見つけられるよう手助けしている。
青中さん:
「やっぱり家から出られない子っていうのがいるんですね。そういった子にどのようなサポートができるかってなった時に、手としてはオンライン。学校に行ってない子って、大半は家にずっといる子が多いんです。そこを『外に出ようよ』って、1個前のアクションとしてオンラインフリースクールはすごくいいんじゃないかと思っております」
■「画面開けばつながれる」…学びの新たな選択肢に
岐阜県高山市から通うさよちゃんは、この日は大好きなパン作りの授業を選んだ。オンラインで先生に作り方を教えてもらいながら、自宅のキッチンで抹茶味のパン作りに挑戦する。

さよちゃん:
「お水か豆乳、なんですか?」
講師:
「きょうは豆乳140グラム」
さよちゃん:
「140グラム?豆乳足りんかも」
講師:
「足りなかったら、豆乳入れた後にお水とか足したらいいよ」
さよちゃんは慣れた手つきで生地をこね、先生のお手本を見ながら成型していく。

オーブンで焼き上げると、おいしそうなパンができあがった。
さよちゃん:
「めっちゃいい感じ。いただきます。おいしい、抹茶、圧倒的抹茶。グッジョブ」

安心できる家から、まずは外の世界とつながってみる。aini schoolでは、修学旅行などのイベントも開いていて、オンラインがきっかけで、オフラインのつながりを持てる子供たちも多くいるという。

2017年に施行された教育機会確保法では、不登校の子供がフリースクールなど、学校以外の場所で学ぶことの重要性について明記された。
aini schoolの利用料は月額2万7000円で、一般的な民間のフリースクールよりは割安だが、パソコンやインターネットの環境を整える費用も必要となる。
国や自治体に支援を求めるものの、オンラインを含めフリースクールに通うための助成金などは、ほとんどの自治体で整備されていない。
aini事業責任者のジャー・ファンファンさん:
「フリースクールの願いとしては、自治体のほうでフリースクールに通うご家庭向けの補助金みたいなところを出していただけると、保護者の方も、より気軽にオンラインに参加しやすくなるんじゃないかとは思っている」
小学1年で不登校となったさよちゃんはオンラインフリースクールがきっかけで、小学校にも興味を持つようになり、体育など授業を選びながら登校する日もあるという。

さよちゃんの母:
「自分が安心してつながれる場所をリアルでもそうですし、オンラインでもそれは可能だってすごく思っていて、オンラインだからできるっていうのは、『いろんな場所にいるお友達、仲間がいるよ』って『画面開けばつながれるよ』って。そして自分が安心のお家からつながれる人がいるっていうのは心強いと思います」
さよちゃん:
「(オンラインフリースクールは)楽しい場所!」
2025年4月17日放送