
東海テレビニュースONEでは、シリーズで「SNSな人々」をお伝えしています。いまや“社会そのもの”といっていいほど私達をとりまいているSNS。そんな時代を「うまく生きる」ヒントをさまざまな人の声から探ります。
子供たちを狙った性犯罪は、SNSでの悪意のない「何気ない投稿」がきっかけとなることも多いという。番組では『14歳女子中学生』としてXのアカウントを作成し、どんな言葉が犯罪者に狙われているのか、検証した。
■次々と「誘いの言葉」…SNSが子供たちの性被害のきっかけに
「X」のアカウントに次々と届くダイレクトメッセージには、性的欲求を満たそうと、女子中学生を誘い出すための言葉が並んでいた。
【動画で見る】“14歳女子中学生”のSNSアカウント作り検証 犯罪者はどんな投稿を狙うのか

届いたメッセージ:
「会ってえっちなこととかしてみないー?」
「俺普通にロリコンでもあるから中学生とか全然大好きだよ?笑笑」

SNSは誰とでも気軽に繋がることができるが、望まない相手とつながってしまうリスクもある。
国際大学GLOCOMの客員研究員で、埼玉県警のサイバー犯罪対策技術顧問も務める小木曽健さんは、こうしたメッセージ送ってくる相手には特性があるという。

SNSリテラシーに詳しい 小木曽健さん:
「社会経験がないほうが言う事を聞かせやすい、騙しやすいっていうところから中学生を狙いがち。『エッチな会話しようよ』っていう言葉を投げつけることによって、99人にブロックされるけども、ブロックしない1人を探している」
子供たちのSNSの利用率は男子よりも女子が高く、小学校高学年の女子は75%、中学生の女子は96%が、何らかのSNSを使用している。

そして、SNSをきっかけに性犯罪などの被害に遭った中高生を含む子供は、去年2024年の1年間で1486人と、毎年1000人を超えている。
街で実際にSNSで誘いのメッセージが送られてきたという子供に話を聞いた。
13歳の女子中学生:
「一緒に遊ぼうとか、写真送ってとか。顔写真とか。(相手は)17歳の男。プリクラの顔を隠したやつを送った。顔は?って言われた、それで無視」
17歳の女子高校生:
「下半身の写真みたいな感じで、男性の。『送られてきて、どう思った?』みたいな。3回くらい体の関係になろうみたいな感じで言われたりとか。『会う時に困らないように写真送ってほしいな』とか」
■狙われやすいメッセージは…『14歳女子中学生』のアカウント作り検証
SNSには多くの危険が潜んでいる。SNSに詳しい小木曽さんは、何気ない投稿の中にも、犯罪者に狙われやすいフレーズがあるという。
小木曽健さん:
「話しかけやすいキャラクターとして、『暇だ』とか、『友達が欲しいな』とか、そういう書き込みなんかも入れて、 #(ハッシュタグ)に『JC』とか『中2』とか、『つながりたい』みたいな言葉を入れておくと、より見つけられやすくなるのかなと」
番組では小木曽さん監修のもと、検証を行った。Xのアカウントを2つ作成し、いずれも「14歳中学2年生」の設定で、顔写真は掲載しない。

検証にあたっては「先に相手に接触しない」、「相手を誘惑するような返信はしない」ことをルールとした。
1つのアカウントには、プロフィールに「ことし14 中2です」と入力し、「X始めてみた!」と投稿した。

もう1つのアカウントには、女子中学生を意味する「JC」というワードをプロフィールにつけ、「友達が欲しい」と投稿した。

すると、投稿からわずか5分ほどで「いいね」やフォローがつき始め、その後、メッセージが届き始めた。
届いたメッセージ:
「えっちなこととか、ちょっとでも興味あったりしますか?色々お話ししたいです」
「男の人とぎゅーしたいとかちゅーしたいとかは思ったことありますか」

返信があったのは、「JC」というハッシュタグを入れたアカウントで、相手は30歳の男性だという。

その後、メッセージの内容はさらに過激になっていく。
届いたメッセージ:
「会ってえっちなこととかしてみないー?色々教えるよ?」
「#JC」をつけなかったアカウントにリアクションはなかったが、「#JC」を入れ、「友達が欲しい」とつぶやいたアカウントには、わいせつなメッセージだけでなく、「話そう」「仲よくしよう」などのメッセージも多く届いた。

小木曽さんは、時間をかけて相手を手なづける「グルーミング」(性的てなずけ)の可能性を指摘する。
グルーミングとは最初は優しい言葉で近づき、長い期間をかけて親しくなってから、わいせつ行為を強要するという手口だ。

小木曽健さん:
「ものすごく時間をかけて、相手との関係を構築してから、数カ月後により過剰な過激な要求をしていく、ちょっと興味持ってやりとりしようものなら、とんでもない脅迫、強要を受けてしまう可能性があるということは知っておいてほしい」
また、小木曽さんは多くの若者が使う『裏アカ(裏垢)』も、犯罪者に狙われやすいという。

「裏アカ」とは「裏アカウント」の略で、通常使っているアカウントとは別に作られ、匿名で普段はいえない本音や愚痴などを、投稿することが多いという。
小木曽さん:
「『裏アカ男子と繋がりたい』。完全にターゲットが喜びそうなワードですよね。この子は普通に本音で話している同世代の男の子とつながりたいなと思っているだけなんですけど、『年齢偽って近づいてやろうか』という動機にはなるハッシュタグです」

警察庁によると、SNSで性犯罪などの事件に巻き込まれた子供の7割以上が、自身の投稿がきっかけで犯罪者と知り合ったが、そのおよそ半数は、日常生活や趣味などの“何気ない投稿”だったという。
■オンラインゲームでも…24時間監視の現場は
子供たちに忍び寄る、新たな危険となっているのが「オンラインゲーム」だ。ゲーム中に行われるユーザー同士のやりとりが、性犯罪や闇バイトの勧誘につながるケースも確認されている。
東京に本社を置く「イー・ガーディアン」は、ゲームの運営会社などから委託を受け、犯罪につながるやりとりがないかを24時間監視している。モニターには、不正が疑われるワードが、次々とピックアップされる。

イー・ガーディアンの安藤広貴さん:
「パパ活だったりママ活だったりとか、そういった出会いをほのめかすような投稿なので、ここもNGとして判断しております。NGとして投稿された後は、クライアント側にその情報が連携されて、実際にやりとりができない状態になります」

危険なやりとりが見つかれば、アカウントが停止されることもあるが、相手もそれをくぐりぬけようと、知恵を絞ってくる。
Q.『線』って何ですか?
安藤さん:
「LINEです。隠語ですね。外部のコミュニケーションツールの方に、誘導しているものになるので『NG』」

オンラインゲームで知り合い、SNSで要求をエスカレートさせていく。ゲームを離れると、これ以上、監視することはできない。
■子供の世界を広げるために…SNSを『正しく怖がる』
神奈川県横浜市の中学校では、入学したばかりの中学1年生が、SNSやオンラインゲームの危険と、未来の可能性について学んでいた。講師がオンラインゲームをしているか尋ねると、一部の生徒が手を挙げた。

スクールガーディアンの柳田理紗さん:
「ゲームでどれだけ仲良くなっても、どれだけすごく信頼できる人であっても、実際に会うのは非常に危険です」
学校向けに講演などを行う会社「スクールガーディアン」は、学校などの依頼で、SNSでの“いじめ”や、個人情報の流出がないか、ネットパトロールも行っている。
スクールガーディアンの柳田理紗さん:
「(別の学校では)対戦ゲームをしている中で、全く知らない人と会話をしながら戦っている時に、相手をののしるような言葉遣いをしてしまって、個人を特定して学校側にクレームの電話が入った。私たちはパトロールをするが、どうしても後手に回ってしまうので、だからこそ子供たちに啓発活動を通して、危険性を知ってもらいたい」

子供たちの世界を広げるSNSには危険も潜んでいる。SNSを『正しく怖がる』ことが、自分を守る事につながる。
小木曽健さん:
「インターネットって、普通に私たちが日々暮らしている時間では到底なしえないような、何百倍もの人間同士の出会いっていうのを経験できるものなんです。子供にスマホを渡すということは、自分の子が玄関ドアを1人で開けて1人で飛び出していくことと同じ。そこに1人で送り出す作業なんだよっていうのを、大人が認識してほしいです」
2025年5月30日放送