
自動車盗の被害が後を絶たない。今回、100台以上の高級車の窃盗に関わり逮捕された男性が取材に応じた。「ゲーム感覚」「敷居が低く誰でも出来る」「ハンドルロックはささやかな抵抗」――。犯人グループの実態に迫る。
■オデッセイなど11台 合計2500万円相当が被害に
栃木県大田原市の自動車販売店「ホンダカーズ野崎」。ここで起きた“自動車盗”の様子を、防犯カメラが捉えていた。
深夜の駐車場で、 画面中央の車の近くで動き回る複数の人影。自動車盗の犯人グループが、盗む車を物色している。
【動画で見る】「ここなんかも最高」元自動車窃盗犯からは駐車場がこう見える ランクルやレクサスは「欲しかったら全然やれる」

しばらくすると、暗闇の中で、車のライトが点灯。国道をはさんだ駐車場でも、次々と…。ホンダのシビックやオデッセイなど、人気の車種が11台、あわせて2500万円相当が被害に遭った。
ホンダカーズ野崎 松本正美店長:
「最初は落ち込んだかな。『やばいな、どうしよう』みたいな。車出てくればいいけど、出てこなかったら大変だし。給料払えるかなとか。見つかって本当よかった」
盗まれた車はその後、幸いにも、栃木県内や埼玉県の駐車場などで発見された。

そして、盗まれた車とともに回収されたドライブレコーダーの映像には、“外国人窃盗団”の会話が残されていた。
■「今回も700か800万円」“外国人窃盗団”の会話がドラレコに
ドライブレコーダーに記録されていたのは、盗難車を運転する男たちの、片言の日本語と外国語の会話だ。
<ドライブレコーダーに残されていた音声>
「チイサイクルマ ワタシ アタラシイ カッタ」

この映像をもとに窃盗グループの実態に迫るため、アジア各国から生徒を受け入れている名古屋の日本語学校『ニューワールド国際学院』に協力を求めた。来日13年目の、ベトナム出身のスタッフ・トゥンさんに、ドライブレコーダーの映像を見てもらった。
ベトナム出身のトゥンさん:
「ちょっと中部の表現みたい。ベトナムの中部」
トゥンさんによると、盗んだ車を運転しているのは、声のトーンなどから、ベトナムの中部地方出身とみられる若い男。

ベトナム出身のトゥンさん:
「前回は800万円で、今回も700万円か800万円ぐらいもらえて、合計で1600万円があるから帰国してもいい、と」
このときの自動車盗の報酬の見込みは800万円。これ以前にも、同じような犯行で800万円を手にしたということなのか。大金を得て、ベトナムに帰るつもりだったようだ。

また、盗んだ車については、下記のようなやりとりもあった。
<ドライブレコーダーに残されていた音声>
「オデッセイはスパーダよりいい車だよ。2019年製のオデッセイは、前は31万円で売れた。帰ってから考えて(報酬を)分ける。そうしないと、みんなケンカになる」
■複数の外国人グループで受け渡された?別の車のドラレコには
別の車のドライブレコーダーの映像もトゥンさんに見てもらった。
ベトナム出身のトゥンさん:
「これはもう多分、ベトナム語ではないかもしれません。前半かその一部だけ、最初から一部だけの4分の1ぐらいかな。ベトナム語でしゃべっていて、その後は“他の国”の方ですね」
最初はベトナム語を話す男が運転していたが、キャリアカーで車が運ばれる映像を挟んで、車が街なかを走るときは、“別の外国語”の会話が記録されていた。盗難車が、国をまたがる複数の外国人のグループの間で受け渡された可能性がある。

トゥンさん:
「犯罪をやってこういうお金をもらっていて、(ベトナム人として)恥ずかしいと思う。許せないと思っています」
警察庁のまとめでは、2025年に自動車盗で検挙された容疑者は744人。このうち外国人は51人(6.9%)で、ほかの犯罪と比べ、とくに外国人の割合が高いとは言えない。

盗まれた車は、海外に不正に輸出されることが多いとされているが、暴力団など様々な犯罪グループが自動車盗に関わっているとみられる。
■「ゲームみたいな感じ」元窃盗犯が取材に応じる
さらに取材を進め、かつて自動車盗を繰り返した男性にたどり着いた。
男性は愛知県出身で、2年ほど前に警察に逮捕され、不起訴処分になった“元”窃盗犯だ。今回、顔と声を隠すことを条件に取材に応じた。

元自動車盗メンバーの男性:
「全然その辺にある、月極駐車場とかはやれるっすよ、普通に。やれる車はどこでもやられるっす、結局。やりにくくても、欲しかったらやられちゃう」
Qこれまでに盗んできた車は
「トヨタ、レクサスばっかりです。ランドクルーザーとか(レクサスの)LXとか」
Qどうして狙ったのか
「お金になるので。1台200万円とか、それぐらいじゃないですかね」
Q利益のお金はどこにつかうのか
「博打と酒と女ですかね。敷居が低いんじゃないんですか。結構誰でもできちゃう」
男性は、仲間に誘われ自動車盗を始めたという。裏社会で流通している、車のカギ代わりになる装置=CANインベーダーを使い、100台以上の高級車を盗んだという。

元自動車盗メンバーの男性:
「針(のような端子)を挿すだけなので誰でもできます。めっちゃ簡単です」
Qキャンインベーダーってどうやって買う
「ネットで買えるんじゃないんですか。僕は買ったことあります、1回ぐらい。100万円しないぐらいじゃないですか」
Q最初の感覚は
「ゲームみたいな感じですね」
■元窃盗犯が証言…盗む車種は「ヤードからオーダー受け」
いったいどんなグループが自動車盗をしているのか。
元自動車盗メンバーの男性:
「オーダーは…ヤードからあったりもしますけど。『この車種のこれが欲しい』とかはありますね」
Q毎週依頼があるのか
「(依頼が)なくても、そういう車だったらお金にできるので、『あったらいこうか』みたいな感じですね」
男性の説明によると、自動車盗の拠点になっているとも指摘される自動車の解体場=ヤードを運営する人物から、秘匿性の高い通信アプリ「テレグラム」などを通じて連絡があり、盗んでほしい車種の指定が来ることもあるという。
紹介者を介して集合場所に集められた日本人や外国人のメンバーが、盗み役・見張り・運び役など、それぞれ役割を分担していたというが、指示役の正体など組織の全体像は男性自身も知らないのか、言葉を濁した。

元自動車盗メンバーの男性:
「言わないですよね、みんな多分。分からないと思いますよ、上の方は。たどりつかないんじゃないんですか、難しいと思いますよ」
■市街地を回った男性「ここなんかも最高」ハンドルロックは「意味がない」
男性とともに、名古屋市内を見て回る。道路の側から中が見えづらい駐車場では…。
元自動車盗メンバーの男性:
「ここなんかも最高ですね。この中とかも分からないじゃん、分からなくないですか。あそこなんか、中見えなくないですか、今のところ」
男性は、次々と「盗みやすい車」を指摘していく。

QこのレクサスNXは
「これ全然やれますね。場所っていうよりかは車種ですね」
Qあそこにアルファード止まっているが
「欲しかったら全然いきます」
Qでもハンドルロックがついている
「でも別にいけるんで。意味ないです。ささやかな抵抗です。すぐ切れますよ。ランクルにしろ、(レクサス)LXにしろ、高級車じゃないですか。ドアを閉めると、中の音ってあまり聞こえないんですよ。“ウィーン”ってやっても、多分聞こえないです」

※東海テレビ「ニュースONE」では、自動車盗についての取材を続けています。car@tw.tokai-tv.co.jp まで情報をお寄せください。
2026年2月20日放送