ドラゴンズの計画にも名乗り続々…プロ野球『2軍本拠地』に自治体から熱視線 10周年の市が実感する効果と課題


『ナゴヤ球場』の老朽化に伴い移転が決まった、中日ドラゴンズの2軍本拠地。現在、22市町が誘致の意向を示す“争奪戦”となっている。先行したソフトバンクの事例から、球場誘致がもたらす「街おこし」の期待と課題を探った。

■ヒビも目立つほどに老朽化…2030年代前半を目指して移転へ

 未来のドラゴンズを担う“若竜”が活躍する2軍戦の舞台になっている『ナゴヤ球場』。1948年からおよそ半世紀、ドラゴンズのホームとして数々の名勝負を見守ってきた「歴史の証人」ともいえるスタジアムだ。

1988年10月7日のヤクルト戦では、”闘将”星野仙一監督が就任2年目で優勝を掴んだ。この日の実況「郭はもう泣いています」はあまりにも有名だ。

1994年10月8日には、同率首位で並んだ巨人の最終戦、いわゆる「10.8決戦」の死闘も。

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しかし今、至るところで隠し切れない老朽化が。さらに場所も手狭なことから、球団は、2030年代前半を目指して移転することを発表した。

ドラゴンズファン:
「こんな好立地なところはございませんので、移転してほしくないです」
「この球場がなくなるのはさみしい。でも選手の環境を考えると致し方がない。ちょっと複雑な気持ち」

かつて多くの選手たちが訪れた球場近くのラーメン店「竜」の元店主・吉田さんも…。

吉田和雄さん:
「この街はこれがあって繁栄している。中日ドラゴンズがあってね。それだけに、みんなショックなんじゃないですかね」

■移転先を巡って“争奪戦” 22市町が誘致の意向

 ファンが寂しがる一方で、期待を寄せているのが「自治体」だ。

球団が新天地を“公募”で決める方針を示したため、相次いで誘致を表明。愛知だけでなく、岐阜や三重も含む22の市と町が誘致の意向を示している。

愛知・蒲郡市 鈴木寿明市長:
「ファンが中日ドラゴンズを愛している。観光とのコラボレーションも期待できる」
岐阜・笠松町 古田聖人町長:
「大きな経済効果、あるいは関係人口・交流人口の増加という、賑わい創出につながるということでは、大きな期待はしています」

その1つ・愛知県小牧市では、小牧市民球場を含むおよそ9万2000平方メートルの総合運動場周辺が候補地で、2026年1月から職員を中心に検討を進めている。

小牧市 市長公室・駒瀬勝利公室長:
「地域経済の活性化だとか、交流人口の増加は当然のことなんですけど、将来を担う子供たちに夢や目標を与えることができる。非常に魅力的な取り組みだと考えています」

球団側が示した現時点での“移転の条件”は、
・メイン球場のほかにサブ球場なども整備できる6万平方メートル以上の敷地
・本拠地のバンテリンドームから車で1時間ほどの立地
などが挙げられていて、詳細な条件や公募の方法は今後発表するとしている。

小牧市 市長公室 駒瀬勝利公室長:
「ドラゴンズの方から実際に具体的な条件が示されていないので分かりませんが、昭和63年に(球場が)オープンして以来、中日ドラゴンズのオープン戦も複数回やっています。そういうところも含めて、中日ドラゴンズと地域の“親和性”があるのではと考えています」

■誘致に手を挙げた愛知県津島市 地権者の思い「地元の活性化を」

 津島市に住む遠松清仁さん(51)は、津島市が2軍誘致の候補地として考えているJR関西線・永和駅北側の土地を所有している地権者の1人だ。

地権者の遠松清仁さん:
「津島市が手を挙げている。『120%頑張る』と言っているので、市と地元と一緒になって、誘致をやっていけたらいいと」

遠松さんによると、全体のおよそ8割にあたる、地権者66人の同意が取ることができたという。

この場所は、面積がおよそ“25万平方メートル”で、バンテリンドーム5個分以上の広さがある。さらに、JR永和駅の目の前にあって名古屋駅まで15分などと、利便性もアピールポイントの1つとしている。

地元の商工会や地権者も要望書を提出するなど、街を挙げて準備が進められている。

要望書の提出にも関わった遠松さんの自宅には、歴代のユニフォームや歴史を彩る様々なグッズなど、親子3世代で集めてきたドラゴンズグッズで溢れている。全員が、筋金入りのドラゴンズファンだ。

父・久雄さん(81)
「私は生まれてから中日ファン」
長男・紀仁さん(18)
「僕は気付いたころから中日ファンになっていました」
地権者の1人 村井和博さん(79):
「70年くらいのファン歴」

それだけに、2軍本拠地の誘致に気合が入るが、加えて“地元を活性化してほしい”という思いもある。

地権者の遠松清仁さん:
「もともと津島市が(永和駅北側を)『南の玄関口』として位置づけをしていた。今の時点では玄関と言いながらも扉がない状態。しっかりとした企業に来ていただいて、この地域を活性化してもらうのが津島市への想い。地域が1つになってドラゴンズを一緒に誘致して盛り上げていけたらいい」

■誘致成功は“街の活性化”に繋がるのか 「SB」の例は

 2025年に5年ぶりの日本一に輝いた「福岡ソフトバンクホークス」。ソフトバンクも、かつて福岡市内に2軍の本拠地があったが、手狭となったため移転を決意した。

公募で、33自治体の中から、2016年に50キロ離れた福岡県筑後市に移った。

7万平方メートルほどの敷地に、1軍本拠地「みずほPayPayドーム」と同じ大きさの球場を2つ構え、クラブハウスや寮も敷地内に完備されている。

さらに、充実した練習施設が立ち並び、ここから1軍で活躍する選手を何人も送り出してきた。

(リポート)
「特別に室内練習場に入らせてもらっています。まず天井が高いですね。そして広い。ここでもしっかりとした練習が出来そうです」

なぜ筑後市を選んだのか。公募で手が挙がった全ての候補地を見て回った、ソフトバンクの三笠杉彦GMに話を聞いた。

三笠杉彦GM:
「充実したすべての施設が含まれる施設を作りたい、というところでしたので。まずここは、7万平方メートルくらいあるんですかね。それに合うような土地を提供してくれることと、(1軍本拠地から)遠く離れていないというのが条件」

福岡市の「みずほPayPayドーム」からは、車でおよそ1時間。さらに、九州新幹線の駅が目の前にあり、博多駅から30分程という利便性。ソフトバンクが考える条件と合致したことで筑後市に決めたという。

筑後市の市長も、知名度アップに2軍本拠地の存在は大きいと感じている。

西田正治筑後市長:
「『筑後市は福岡県のどの位置にありますか?』というようなことが多かった。2軍本拠地ができて、「ホークスの2軍本拠地がある筑後市です」と。かなり知名度が上がった。その効果が1番大きいと思います」

実際、筑後市は誘致前からの人口減少率が0.5%と、周辺の自治体に比べて圧倒的に低く、“ホークス効果”が伺える。

3月20日に開かれた移転10周年のイベントには、多くのファンが詰めかけた。

斉藤和巳2軍監督:
「2軍球場もすべてではないけど、数多くの球場を見てきましたけど、これだけの規模のファーム施設というのはありません」
筑後市民:
「やっぱり開けましたね、ここ筑後市が。田んぼばっかりだった」
福岡市から来たファン:
「選手も『トレーニング施設がすごい整っていて、筑後がパラダイスだ』と言っていたりとか。若手の育成で入ってきた選手がどんどん活躍してくれているのはすごいうれしい」

しかし、“町おこし”という点では、まだ課題も多いという。

西田正治筑後市長:
「筑後市に来る方も増えてきているけど、残念ながら2軍戦ですから、日帰りで帰られる方が多い。周りのお店もそんなにない。今後は周りの整備について、どう着手していくのかが1番の問題・課題」

選手を大きく育てる2軍本拠地が街おこしに。球団もファンも、そして地域も喜べる、新しい姿を描けるのだろうか。

■阪神と巨人も…2軍の本拠地移転が進む背景は

 プロ野球界で2軍の本拠地移転は今、“トレンド”になっている。ソフトバンクのほかにも、阪神と巨人が2025年から2軍本拠地を移転した。阪神は2025年、2軍戦の観客動員が20万人を超えている。

ヤクルトは2軍本拠地を茨城県守谷市への移転を決め、既に工事に入っている。また、ロッテも移転を決めている。

更に日本ハムは、千葉県内にある2軍本拠地を1軍と同じ北海道内に移転させる方針で、道内の3都市に絞り検討を進めているということだ。

球場移転などを研究・分析する尚美学園大学のスポーツマネジメント学科・田中充准教授に、2軍の本拠地移転の背景について話を聞いた。

田中准教授によると、球団にとっては、老朽化が進んで移転場所の確保が必要で、さらに収益化が求められる中で公募することで、球団主導で建設ができるメリットがある、としている。

また自治体にとっても、プロ野球は12球団しかないため2軍でも希少性は高く、誘致できれば地域経済の賑わいを創出できる上、街のシンボルにもなり得る存在であるため、誘致のメリットは大きいとしている。

2026年4月3日放送

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