金属高騰で増加…『アルミ缶持ち去り禁止条例』で被害は減ったか「弱い者いじめだ」路上生活者が警戒する“もう1つの制度”

名古屋市でアルミ缶の持ち去りを禁止する条例が2026月4月に始まった。開始から1カ月が経ち、持ち去りの被害は本当に減ったのか?路上生活者からは「今は様子を見ている」との声もあり、今後の先行きは不透明だ。
■アルミ缶「持ち去り禁止」に…背景に“価格高騰”
名古屋の中心部を走る若宮大通、高速道路の高架下に、多くの路上生活者が暮らしている。
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10年以上にわたり、路上生活者の支援を続ける東岡牧(ひがしおか・まき)さん。若宮大通で生活する人たちのもとを訪れ、食料を配り、生活で困っていることの相談に応じている。

最近の話題は、4月から始まった『ある条例』について。
野宿者を支援する会 東岡牧代表:
「アルミ缶は1、2週間やめといて様子見てるんだよね?」
路上生活者の男性:
「アルミ缶の単価が250円/kgになってるんです。みんなやるじゃんね、単価いいと。自分は仕事ないもんで、これでお金作ってるみたいな。お風呂入ったりとか」

東岡さん:
「ウクライナへのロシア侵攻で(単価が)上がって、さらにイラン情勢で上がって、250~290円」
路上生活者の男性:
「一番高いところは300円」
東岡さん:
「『今とらなきゃ』って思ってる。でも条例もあるし、無理してとりたくないから」

今は様子を見ている理由は、名古屋市で4月に「家庭廃棄物等の持ち去りの防止に関する条例」、いわゆる“アルミ缶持ち去り禁止条例”が施行されたことだ。
この条例により、アルミ缶をはじめ、粗大ごみや不燃ごみなど、すべての家庭ごみの持ち去りが禁止となった。

名古屋市環境局の担当者:
「数年前から金属の価格が高騰した結果、アルミ缶を中心に抜き取りが多発していて、排出された資源やゴミを適切に処理することを目的として、条例を施行しました」
金属価格の高騰により、持ち去りの被害は増加し、2024年度の通報件数は152件と、4年間で25倍あまりに急増した。

名古屋市の損失額は、2024年度の推計で、少なくとも5000万円にのぼるという。
■パトロールに抵抗も…“持ち去り”は減った?
条例のスタートに伴い、名古屋市はパトロールを行い、アルミ缶の持ち去りに目を光らせている。
自転車にアルミ缶を乗せて走る男性を発見すると、車を降り、条例を知らせるチラシを見せて注意を促した。

中には、指導員の制止を振り切り、立ち去ってしまう人もいた。
資源ごみの集積場所でアルミ缶を集めていた女性は、なかなか話を聞こうとしない。
指導員:「持ってっちゃダメなやつを、目の前で持って行かれると…」
女性:「いいです。返せばいいんでしょ?」
指導員:「返せばいいじゃなくて」
女性:「だって、みんなとってる!」

それでも条例の効果があったのか、アルミ缶の持ち去りは減っているという。
名古屋市環境局の担当者:
「収集部門からは、アルミ缶が(条例施行前の)4月以前よりも排出量が出ている。いわゆる“抜き取り”が減っている。もう少し長い目で見ないと何とも言えないところだが、今のところ体感としては、条例の効果があるのではないかという感触ではあります」
被害に悩まされていた住民たちも、変化を感じていた。

閑静な住宅街が広がる昭和区妙見町では、条例の施行前は、軽自動車から降りて、アルミ缶が入っているとみられる袋を持ち去る人物や、別の日には袋をあさり、トラックで中身を持ち去る人物も目撃されていた。

名古屋市では、回収された資源の量に応じて、補助金が入る仕組みがあり、町内会では対策に頭を悩ませていたが、4月以降は資源ごみの回収日に見かけていたアルミ缶を持ち去る車を、見ていないという。
妙見町公民協会の会長:
「私も町内回っていて、持ち去っていく人、4月に入ってから1度も見ていないです。けさもアルミ缶出しに行った場所、違う場所に出してきたが、そちらも減っていなかったので持ち去りされていないんじゃないかと思います。効果が出ているのかなと感じています」
■今は様子見…警戒するのは「青切符」
本当に条例でアルミ缶の持ち去りを防ぐことができたのか?
路上生活者を支援する東岡さんが、アルミ缶を集めていたという男性に話を聞くと…。
路上生活者の男性:
「俺は(アルミ缶)とるほうもあるけど、重きを置いてるのは自転車のほう。自転車でいっぱい積めないじゃん。結局自転車で止められて『罰金払え』と言われたら、何のためにやってるのとなるから」
男性が警戒しているのは、同じく4月から始まった自転車の「青切符」制度だ。対象となる違反の1つに、かごなど決められた場所以外に荷物を載せて走る「乗車積載方法違反」があり、5000円の反則金が科される可能性がある。

ハンドルに荷物をぶら下げることも禁止で、アルミ缶を大量に運んだ場合、違反になるという。
Qアルミ缶集めはやめるのか?
路上生活者の男性:
「いったんやめます。いったん貯めている(アルミ缶を)ちょっとずつ出しながら」
東岡さん:
「1日1回は炊き出しあるからね、それで何とかしのでいでるけど、生活保護申請する?」
路上生活者の男性:
「それは『にっちもさっちも』の時だね、今はまだこれ(アルミ缶)でと。気楽なんですよね。自分でやって一人事業主みたいなもん」
男性は、アルミ缶の回収をやめ、仲間と仕事を探すといいます。
Q条例に対して言いたいことは?
路上生活者の男性:
「まあ弱い者いじめだね、端的に言うと弱い者いじめだね」

別の男性:
「『とっちゃいかん』と単純に言うなら生活保護ちゃんとくれるんですかと。例えば100人が生活保護受けたら、それだけで年間2億くらいかかっちゃうわけですよ。ただ単にアルミ缶持っていかれて損してるというのは、ちょっと違うんじゃないかな」
■“アルミ缶”集めずに…どう生計を立てるのか?
東岡さんが次に声をかけたのは87歳のイトウさん、アルミ缶収集歴は15年以上になる。

東岡さん:「きょう(薬)飲んだ?」
イトウさん:「きょうは…まだ飲んでない」
条例が始まる前の2025年11月に取材した際には「4月以降の生活はまだ考えていない」と話していたが、今はどう思っているのか。

イトウさん:
「もううるさくなるんじゃない?10月位から切符きる(罰金)みたいだから、どういうところで線を引くかだね」
現在は店舗などから出されたアルミ缶を直接もらっているというが、すでに87歳、体力の限界を感じている。
イトウさん:
「きょう(自転車を)こいでいても全然進んでいかない。物積んでいて横風もらったらひっくり返る。まあ体力はないわね。60代、70代の10分の1あればいいところ。まるっきり体力無くなったね。潮時は過ぎてる。でもこんな気ままな生活はないな」
路上生活者たちが抱える事情は1人1人異なっている。東岡さんは働く意思がある人のために、行政による仕事の斡旋を求めたいとしている。

東岡さん:
「『生活保護受けるんだったら福祉事務所に同行するし、アパートも一緒に探すから安心して』と言って、『行き場のないようなところには持っていかないから、どうしたいかは自分で決めて』と個別に説明しています。『俺たちはアルミ缶で満足してるわけではない』、『仕事があったら僕たちはやりたいんだと、まだまだやりたいんだ』という気持ちがある人が多いので、仕事の斡旋のほうを頑張ってほしいと思います」
2026年5月1日放送

