人気のソフト麺にも…『学校給食』にも影を落とす中東情勢 コスト抑えながら質を確保する現場の奮闘

中東情勢の緊迫による原油高やナフサ不足の影響は子供たちの給食にも及んでいます。2026年度からは国の“いわゆる給食無償化”も始まりましたが、現場では国の想定を超える物価の高騰が進んでいて、やりくりに頭を悩ませています。
■物価高×食べ盛りで食費増 学校給食は「ママの味方」
愛知県犬山市に住む岡部さん一家。小学6年生の長男と、4年生の二男、両親の4人家族です。
母親の沙苗さんは週に3日コンビニでパートをしながら、夫とともに家計を支えていますが、最近の悩みの種は「食費の増加」です。
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母親の沙苗さん:
「きょうはから揚げです。これで4人分です。だいたい1000円くらいですかね。安くなっているお値打ちなおつとめ品を買って、その日に調理したりとかしています」

物価高に加え、子供たちの食べる量も増え、月にかかる食費は、ここ2、3年で3万円ほど増えたといいます。
母親の沙苗さん:
「量を減らしたらお腹が空きますし、なるべくお腹いっぱいにさせてあげたいので、それは節約できなくて、その代わりに休みの日は無料のところに行ったりとか、公園に行ったりとか、そこでなるべくお金かけずに楽しめるように節約はしています」
レジャーにかけるお金を節約しても、成長期の子供たちの食費は削れないといいます。

さらに、仕事と家事に追われ、料理に手間をかけられない時も。そんな忙しいママの味方になっているのが“学校の給食”です。
母親の沙苗さん:
「給食は、子供にやっぱりおいしいもの、栄養がある物を食べさせたいので、すごくありがたいですね。朝バタバタして、栄養ある朝ごはんを食べさせられなかったりしたときとか、『給食あるから大丈夫だ』っていう安心感があります」
物価高や共働きの増加で、見直される「給食」。岡部さんの住む犬山市では、2026年4月から給食費の保護者負担が0円になりました。

母親の沙苗さん:
「すごくありがたくて、負担0っていうのが。犬山市は無償化が始まってからも量が減らなかったりとか、今まで通りの給食なので」
■“給食無償化”実現は難しい!? 独自アンケートを実施
2026年度から始まった国の「いわゆる給食無償化」。子育て支援などを目的に、公立小学校の児童1人あたり、月に5200円を国が補助することになりました。
しかし、物価の高騰で、食材にかかる費用は増加の一途です。自治体ごとに給食にかかる費用は異なりますが、東海テレビが愛知・岐阜・三重の全125自治体に行ったアンケートでは、およそ9割が「5200円を超える」と回答し、ほとんどの自治体が国の補助だけでは足りないことが分かりました。

そのため、差額を自治体の予算から負担したり、別の交付金をあてたりしていますが、13の市と町では、足りない額の全額または一部を保護者に負担してもらう(予定含む)としていて、国が当初目指した「給食無償化」は実現できていません。

愛知県弥富市も、保護者負担を決めた自治体の1つです。
弥富市 学校教育課の担当者:
「国の方から月額5200円という補助をいただける形にはなっていますが、1食あたりにすると300 円となっています。(弥富市は)1食あたり360円になっていまして、そこからはみ出た60円の分を保護者に負担をお願いしている形になっています。これからどんどん給食費が上がる可能性が否めないところがあるものですから、(差額を自治体が負担するのは)財政負担的なものとするとなかなか難しいところがあるかなと」
弥富市内にある小学校の給食の時間、この日のメニューは鶏肉の和風だしから揚げに、小松菜のなめたけあえ、若竹汁など栄養も彩りも豊かです。

弥富市では給食センターではなく、それぞれの学校で給食を作っていて、できたてを提供できる反面、コストがかかります。さらに、地元の食材を積極的に使うなど、食育にも力を入れているといいます。

弥富市 学校教育課の担当者:
「PTAの方にも保護者負担について伺ったところ、食育の観点でもあることからご理解いただいているという認識でおります。正直なところ、いま保護者負担いただいている部分についても、やはり国の方でみていただきたいなとは思いますね」
コストを抑えながら、給食の質をいかに確保するか、そこに影を落とすのが「中東情勢」です。
弥富市 学校教育課の担当者:
「油の値段だったりとか、原材料費があがっていますので、(今後も)上がっていくんだろうなという危機感は常に持っております。今、切羽詰まったところまで来てますけど、地産地消で少しでも安く仕入れるような材料や、缶詰製品使ったりとかしながら、どこまで切り抜けて行けるか分からないですけど、精一杯そこで努力をさせていただきたい」

東海テレビが東海3県の自治体に行ったアンケートでは「中東情勢が給食の運営に影響している」と答えた自治体は4割を超える56の市と町にのぼり、今後さらに拡大するとみられています。
<アンケートの回答>
「調理場内で使用するポリ手袋や使い捨てエプロン等の値上げ」(清須市)
「包装資材の高騰や供給不足により、献立の見直しを行う可能性がある」(豊橋市)
他にも「デザートのゼリーが容器の不足で提供できなくなった」(豊田市)など、現場からは切実な声が寄せられました。
■ナフサ不足に重油高騰…人気のソフト麺に“中東情勢の影”
中東情勢の影響は、子供たちに人気のメニューにも及んでいます。
愛知県高浜市の「刈谷麺粉」は、学校給食向けのソフト麺などを製造していますが、麺の包装に使われるフィルムが高騰を続けています。

愛知県学校給食めん協会 藤田晃会長:
「今は3割ほど高くなっています。この先7月まではこの価格で取引がありますけど、2学期入ってからまたどうなる状況か分かりません。(袋がなかったら)学校には持っていけません」
ナフサ不足の影響で、フィルムの単価は4月に3割以上値上げされ、今後、確実に調達できる見通しも立っていないといいます。

さらに、麺をゆでるために使うボイラーの重油も高騰しています。この工場では前日に麺を作り、当日の朝に温めて届けていますが…。
藤田会長:
「A重油、3月の1リットルあたりが105円になってます。それが4月1日は147円、5月1日から153円、これだけ価格が上がっています」
2カ月で50円近くという、過去に経験のない値上げです。しかし、ソフト麺の価格に反映したくても、できない事情があります。

藤田会長:
「学校給食は年間契約ですので、いまさら上がったものを、値上げを申請することはできないので、全部こちらがかぶる。『これだけ上がりましたから値上げします』というのは受け付けてもらえません」
愛知県学校給食会によりますと、給食に出される主食や牛乳は、年間契約が基本で、期間中の価格改定は、通常行われないといいます。

愛知県で給食にソフト麺を提供する工場は、ソフト麺が学校給食に登場した60年前は43社ありましたが、現在はわずか12社になりました。設備の老朽化や人手不足などで廃業したといいます。
藤田会長:
「12社で全県を網羅している状況ですので、やめたところを他が引き受ける状況になっています。麺は子供さんに非常に好きなものだと言われていますので、それを励みにずっと製造を続けていきたいと思っています」
給食にも忍び寄る中東情勢の影。おいしくて栄養のある給食を子供たちに届けるために懸命の努力が続きます。
2026年5月29日放送

