遠方からも注文殺到…三重県尾鷲市に100年以上伝わる郷土料理『あぶり』伝統の味を守る84歳女性職人の思い


 三重県尾鷲市に100年以上前から伝わる郷土料理「あぶり」。小サバを桜の木の煙でじっくり燻す伝統の味です。遠方からも注文が殺到する人気のあぶりを作るのは84歳の女性職人。その思いを追いました。

■尾鷲市の伝統料理「あぶり」

 三重県尾鷲市にある小さな漁師町・梶賀町で、いま最盛期を迎えている「あぶり」(1串400円)。小サバと呼ばれる体長10センチほどの小魚を串に刺し、約2時間かけて煙でじっくり燻します。

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客:
「毎年買っています。一言で言えばビールに合う味です」
別の客:
「ビールを飲むのに最高です」

小サバは傷みやすいため、冷蔵庫がなかった時代には捨てられていました。それを家庭用の保存食として活用したのが、あぶりの始まりです。

手作業で1本1本丁寧に作るのは、この道40年以上の浜中倫代さん(84)です。

浜中さん:
「“あぶり”は塩加減。私はそのあたりにもこだわっています」

まず、水揚げされたばかりの小サバの頭とはらわたを取り除き、約20分塩に漬け込みます。その後、15匹ほどを竹串に刺し、桜の木を燃やした煙で何度もひっくり返しながら、およそ2時間かけてじっくり燻していきます。

浜中さん:
「桜の木は香りがいいし、色がきれいだからおいしいの」

徐々にきつね色に変わっていく小サバ。その焼け加減は、指で触れながら見極めます。40年以上の経験が生み出す職人技です。

燻製ならではの香ばしさと絶妙な塩加減。さらに小サバ本来のうまみが重なり、骨まで柔らかく仕上がります。一度食べるとやみつきになると評判です。

■人気のあぶりと浜中さんの人柄

 この時期になると、浜中さんのあぶりを求めて名古屋や大阪などからも注文が寄せられます。あまりの人気に、注文を断らざるを得ないこともあります。

客:
「なかなか手に入らないです。注文でいっぱいなのはもうわかっていますので」

この日は約90本作りましたが、わずか数時間で完売しました。

人気の秘密は味だけではありません。

浜中さん:
「遠いところから来てくれたから、一つサービス」
客:
「本当に、もうおばちゃん大好き」
別の客:
「まっすぐな人だと思います。気前もいいし、話し方も好きです」

浜中さんとのふれあいを楽しみに訪れる人も少なくありません。

■浜中さんの人生とあぶり作りへの想い

 浜中さんは尾鷲市梶賀町で生まれ育ちました。40年以上前、親戚に教わったことをきっかけに、あぶり作りを始めました。

浜中さん:
「叔母さんが一人であぶりをしていて、それを見よう見まねで始めました」

10年以上前に夫に先立たれた浜中さんは、現在一人暮らしをしながら、あぶりや干物を販売して生計を立てています。

午前6時。浜中さんの一日は、小サバの仕入れから始まります。

浜中さん:
「少し大きいけど、こんなものでしょう。本当はこれぐらいのやつが一番いい」

大きすぎる小サバは火が通りにくく、燻す時間も長くなります。そのため焼きムラが出ないよう、自分の目で確かめながら、できるだけ大きさのそろったものを選んでいます。

かつては梶賀町の多くの家庭で作られていたあぶりですが、作り手は年々減り、今では浜中さんを含めて2人になりました。

100年以上続く町の伝統料理も、後継者不足という課題に直面しています。

浜中さん:
「私も年なので辞めたいと思うこともあるけど、この時期になると頑張ろうという気持ちになります。あぶりは私の生きがいです」

変わらぬ手仕事で伝統の味を守り続ける浜中さん。その一本一本に、梶賀町の歴史と暮らしが受け継がれています。

2026年6月4日放送

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