“チンチン電車”が姿を変え復活か…岐阜に『LRT=次世代型路面電車』構想 知事の狙いと「岐阜羽島駅ルート」に見る課題

かつて岐阜の街で親しまれた「路面電車」が、姿を変えて復活するかもしれない。岐阜県の江崎知事が突然打ち出した『LRT』の構想。その狙いを取材した。
■“チンチン電車”が復活?知事が打ち出した『LRT構想』
かつて名鉄新岐阜駅前などの大通りを行き交い、“チンチン電車”として長く岐阜市民に親しまれてきた路面電車が、復活するかもしれない。
年々、人通りが減っている岐阜の町のにぎわい復活の切り札に、次世代型路面電車=LRT(ライトレールトランジット)導入の構想がにわかに持ち上がっている。
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「岐阜にLRT」と言い出したのが、江崎禎英知事だ。2025年に、10年後の導入の構想を打ち出した。江崎知事は、人口減少が進む中、高齢者や車を持たない若者にとっても暮らしやすく、遊びに来やすい街づくりにLRTが生きると話す。
江崎知事:
「やはり名古屋の人たち、特に若い人たちが『週末どこ行く?』『それは岐阜でしょう』って言えるような、そんな街にしたい。若い子たちは車では来れませんし、これから高齢社会になっていくと、免許返納したらどこにも行けない方が多いというのは、全国的な課題ですけど」

しかし、岐阜市民からはこんな声も聞かれた。
市民:
「岐阜の場合は道路が狭いから、電車はない方がいい、危ない。電車廃止してから何十年にもなじんだのだから、推進した方が」
「路面電車が通るのは車の邪魔になった。客が降りると危ないじゃない、(道路を)渡ろうとするとひやっとするときがあった」
岐阜の路面電車は明治44年に登場した。長く、通勤や通学、買い物の足として愛されたが、マイカーの普及とともに利用者数は低迷し、2005年に廃止。「乗り降りが危なかった」「渋滞の原因になった」など、マイナスのイメージを持つ人も少なくない。

江崎知事:
「あの頃からはるかに技術が進歩していますから。最先端の技術を使った、今の時代に最もふさわしいシステムなので、前に戻るわけでは決してないということです。(モデルは)なんといっても宇都宮ですね。私も乗ってきたけどバリアフリーは素晴らしい。揺れない」
■知事が手本にする宇都宮のLRTとは
2023年に開業した宇都宮のLRT、愛称は「ライトライン」。黄色と黒のスタイリッシュな車両となっていて、宇都宮市と隣の芳賀町(はがまち)までの14.6キロを結んでいる。
取材したのは平日の午前10時すぎ。クマ出没も話題になった時期だったが、停留所には行列ができていた。
利用者:
「時間が正確、バスは遅れるじゃないですか」
「予定も組みやすい。絶えず乗っている」

ライトラインは、かつての岐阜の路面電車と違い、全ての区間で専用レーンになっている。交差点は車側の信号が連動して変わり、LRTが優先して通れるシステムも。
遅れがほとんどなく、ラッシュ時は6分間隔、初乗り150円という気軽さから利用者数は開業以来年々増え、2025年夏には、想定より半年も早く累計1000万人を達成したということだ。

江崎知事も“一押し”だったバリアフリー。車両の床と停留所は同じ高さで、子供を乗せたベビーカーも乗り降りがスムーズだ。
さらに、LRTの停留所近くには「パークアンドライド」のための無料の駐車場が4カ所あり、マイカー利用からの切り替えを促している。

利用者:
「交通量が緩和されてきた。車で通勤していたけれど、工業団地とかで結構混んでいた」
「朝は大渋滞だった。1時間以上かかったが、今はもうスムーズにいけるので。それがなくなったので“LRTは非常に便利”だと」
岐阜で心配されている渋滞が、むしろ減ったと言い、LRTは今や、ギョーザと並ぶ宇都宮市民の誇りのようだ。
■羽島市から岐阜市へ…インバウンドを呼び込めるか
岐阜のLRTで想定されている路線は3つ。
1.岐阜駅から岐阜城、長良川周辺など観光スポットを回る周遊ルート
2.市街地から岐阜大学方面をつなぎ学生や病院に行く人などの利用が見込めるルート
3.岐阜駅から県庁を通り、岐阜羽島駅まで結ぶルート

なかでも目を引くのは、3つ目の岐阜羽島駅とのルート。今、羽島市に多くの外国人が集まり、その流れを岐阜市にも呼び込みたいというのだ。
江崎知事:
「“人や物が集まる”ということを考えると、羽島は今、たくさんの外国の方が来ている。そこを拠点に岐阜に来てもらいたい」
県内で唯一新幹線がとまる岐阜羽島駅は、確かに、東京から京都・大阪方面に向かうインバウンドの「ゴールデンルート」上だが、本当に旅行客が増えているのだろうか。
駅から車で約5分の日本刀の工房「淺野鍛冶屋」を訪ねると、アメリカのサンフランシスコからの家族が来ていた。日本に2週間滞在し、東京や沖縄などを周遊予定だという。

しかし、羽島市には刀作りのためだけに来ていて、そのほか岐阜県内の観光の予定はないという。
こうしたインバウンドをLRTで岐阜市に呼び込む、というのが江崎知事の構想だが、朝のJR岐阜羽島駅前を確認しても、外国人観光客の姿は全くといっていいほど見られなかった。中国との関係悪化後、団体客が激減しているなどの声も聞かれ、もくろみ通りにはいかない可能性もある。

江崎知事:
「歴史的にも、岐阜城をはじめとしていいものがたくさんあるので、鵜飼や、そうしたものをいかにうまく使って、この岐阜の街を活性化させるかと。(Q.10年後に走っている未来が?)リニアの静岡(工区)がクリアになって、カウントダウンが始まった時期とほぼ揃ってくるといいなという意味で。ちょうどそれぐらいにかけて、まちづくりをやっていくのにもいいかなと、そんな意味での10年です」
LRTが、岐阜のまちに再び賑わいをもたらすのだろうか。
2026年6月17日放送

