真上に学校や住宅も…熊本地震で被害広げた“活断層のズレ” 専門家が警鐘「津波等は対策あるが活断層だけ何もない」

熊本地震の発生から1カ月。被災地では住宅や新幹線などインフラに深刻な打撃を与えました。今回の地震で相次ぐ活断層の「ズレ」による被害の実態と、被害を少なくするための取り組みを取材しました。
■今も残る”爪痕”…避難所生活に「今後が不安」
あの日から1カ月、改めて被災地の今を取材しました。
斉木敏人記者リポート:
「熊本地震から間もなく1カ月が経とうとしていますが、被災地ではいまだに倒壊した家屋が多く残されています」
倒壊した家屋の多くはいまもそのままに。
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氷川町の住民:
「生活は電気が来て、水も出るようになって、だいぶ楽になったんですが、ご覧の通り、家は全然変わってないので、仮設の方も早く進めていただければと思います」
7月28日午後4時27分ごろ、再び熊本県を襲った最大震度7の直下型地震。
およそ5万4000棟の住宅が被害を受け、災害関連死の疑いを含め犠牲者は38人に。発生から1カ月間で、震度1以上の地震は727回に上ります。
気温40度近い猛烈な暑さも続く中、被害が大きかった宇城市や八代市では、いまだに2400人以上が避難所での生活を余儀なくされています。

宇城市で避難所生活を送る女性ら:
「今後のことが不安。学校も始まりますでしょ」
「家の中のものが全部倒れたり割れたり、その片付けが大変でまだ終わっていません。次の地震が怖いです」
■高速道路も学校も…活断層の”ズレ”被害相次ぐ
今回の熊本地震の被災地を取材すると、被害に大きな特徴があります。地面の「ズレ」による被害が相次いだことです。
記者リポート:
「南九州自動車道ですが、道路が上下に大きくずれてしまっています」

さらに、八代市の神社では地面が至る所で隆起し、アスファルトがめくれあがっています。
発災からこの地域の断層と被害状況を調査している鹿児島大学の井村隆介准教授は、「ズレ」の原因をこう指摘します。

井村隆介准教授:
「日奈久(ひなぐ)断層っていう断層が、今回の熊本地震では動いたんですけど、それのズレによって新幹線のレールが基礎の部分から断層を挟んで数10cm沈降する、あるいは右横ずれをするっていうようなことで、路面そのものあるいはレールに損傷があったということです」
熊本県益城町から八代海にかけて、全長およそ81キロに延びる日奈久断層と呼ばれる活断層。今回の地震で、そのうちの30キロ以上がズレ動いたと見られ、その真上にあった宇城市や氷川町、八代市に被害が集中しました。

井村隆介准教授:
「こちらのお宅のガレージの部分になるんですけれども、隣のお家との境界がですねカーポートの一番奥ぐらいから右にずっとずれているのがわかるかと思います。完全にこの敷地、あるいはこの建物の真下を断層が通っていたということになります」

八代市で被災した男性:
「ここに住んでからもう35年くらいになるでしょ、何も起きてなかった、びくともしなかったからなめてかかりますよ。これはどうせ崩さないとダメです、全体が傾いているから」
熊本地震発生時の八代市内の映像では、軽トラックが激しく揺れる中、画面後方の田んぼが突然隆起したのが確認できます。日奈久断層がずれ動いた瞬間を捉えたものとみられます。
記者リポート:
「映像が撮られた現場です。アスファルトがめくり上がり、奥には田んぼが隆起しています」

田んぼには、最大1メートルほどの段差ができたほか、周辺の至る所で地割れが発生していました。さらに、その奥には道路がずれた高速道路が見えます。
大きな被害を受けた建物を地図上に並べると、日奈久断層の付近に集中していることがわかります。

八代市にある龍峯小学校でも、グラウンドを貫くように、60メートルにも及ぶ地割れが起きました。

幸いケガ人はいませんでしたが、その先にある校舎も傾き、外壁は崩れ、大きなひび割れも確認できます。
もしもあの瞬間、このグラウンドで児童たちが遊んでいたら…。
■活断層の上に建物が…被害抑える対策も
活断層に詳しい、愛知大学の鈴木康弘教授は、学校や市役所など人が多く集まる建築物について、活断層の上に建物を建てるべきでないと指摘します。

鈴木康弘教授:
「世界では、国によっては断層のそばではこういう作りにしなさいとか、特に『断層の真上の建物は移転したほうがいい』とか働きかけをしている国がある。日本は国土も狭いし断層の数も多いので、そういうことをできないんだとこれまで言ってきましたけど、本当にそれでいいのかと思うんです」
日本国内では、原子力発電所に限っては活断層の上への建設は禁止されていますが、一般的な建物に対しては法律による規制はありません。
そんな中、10年以上前に三重県で活断層の上への建物建設について、対策を打った例がありました。2012年に完成した四日市市立河原田小学校です。

四日市市の担当者:
「もともと西側に旧校舎がありまして、平成20年(2008年)から改築するにあたって、地質調査を行ったところ、設計の段階で委託業者の方から『直下に活断層と思われる地層の状態がある』という報告を受けました」
こちらは河原田小学校の旧校舎と新校舎が並んだ航空写真。もともと西側の旧校舎を同じ場所に建て替える予定でしたが、地質調査で校舎の真下に活断層があることがわかりました。

四日市市の担当者:
「大学の教授等に意見を求めましたら、四日市断層の可能性が高いということと、校舎を新増築する場合には『活断層の直上に建てるべきではない』ということの意見をいただきましたので」
そこで、元々グラウンドだった東側の場所に、校舎の位置を変更しました。
四日市市教育委員会の内田課長:
「東側の安全なところに校舎を建て替えたのは大変よかった。そこに児童がいたと思うと考えたくないですけど、怖いですね」
大地震を引き起こす活断層。1891年にマグニチュード8.0の濃尾地震を引き起こした、岐阜県本巣市の根尾谷(ねおだに)断層や、下呂市から中津川市にかけてのびる阿寺(あてら)断層など、東海地方には、全国の活断層の2割ほどが集まっています。

政府の地震調査委員会は、愛知・岐阜・三重の一部を含む近畿地域の活断層で、今後30年以内にマグニチュード6.8以上の地震が発生する確率を50%から60%とする長期評価を発表しました。
このうち危険度が最も高い「Sランク」とされた活断層は8か所ありますが、このうち「養老・桑名・四日市断層帯(北部・中部)」、「池田山断層」、「伊勢湾断層帯(南部)」、「高茶屋断層帯」の4か所が東海3県にあります。

鈴木教授は局地的に集中する断層の「ズレ」による被害を抑えるために、行政も積極的に取り組まないと、さらに大きな被害を生みかねないと警鐘を鳴らします
鈴木康弘教授:
「土砂災害、水害とか津波に対する対策では、特に危ない地域を指定して、そういうところの人は移転を働きかけるとか、対策をいろいろしてきているんです。活断層だけが何も対策をしていない。あらかじめ行政機関が把握をして対策をとる。そういうことをしない限りは、もしも都市の真ん中を通っているような活断層が地震を起こした時に、神戸の地震のように非常に大きな災害が起こってしまう」
2026年8月28日放送

