中2なのに“最後の夏”…変わる部活の形 公立中学の『地域クラブ』改革現場で聞いた生徒と教師のホンネ


 公立中学校の部活動の在り方が変わろうとしています。国は2026年度から順次、休日の部活をやめ、2031年度末までに段階的に縮小していく方針です。

受け皿となるのが、地元で作る「地域クラブ」ですが、その運営には困難もあるようです。まさに今、改革が始まっている部活の現場を取材しました。

■1・2年にとっても“最後の夏”…生徒の思いは

 7月11日、愛知県一宮市で開かれていたのは、中学校男子ソフトテニス部の夏大会。

一宮市立萩原中学校2年生の瀧悠太(たき・ゆうた 13)くんは、“最後の夏”となる3年生のサポートに奔走していました。

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2年生の瀧くん:
「(先輩は)かっこいいです。来年は選手としてあの場に立ってみたい」

しかし、萩原中学校として出場するのは、これで最後だといいます。

2年生の瀧くん:
「せっかく練習したのに」

1・2年生にとっても、これが最後の夏。一体、どうしてなのでしょうか。

■「部活の地域展開」教師は負担減を実感

 国が進めている「部活動の地域展開」。少子化を背景に、これまで学校単位が前提だった部活から、地元の団体などでつくる地域クラブへ移行する計画です。

教師の負担軽減のため、指導も外部のコーチに委託します。

文科省は2026年4月から順次、原則すべての学校で、まず休日の部活をやめ、さらに2031年度末までに、平日についても改革を進めていくとしています。

一宮市では全国に先駆け、2024年から地域展開をスタート。瀧くんが所属する萩原中男子ソフトテニス部も、平日は週3日ほど、休日は月2回ほどと、活動量を減らしました。

英語を教えつつ、ソフトテニス部の顧問を15年続けてきた入山一郎(いりやま・いちろう 43)先生は、以前よりも負担は減ったと感じています。

入山先生:
「終わりの時間がすごく早くなっている。僕が最初に顧問をやり始めた頃は、(午後)6時とか6時半でしたね。部活動は拘束される時間が多かったので、その時間が先生方の別のやるべきこと、リフレッシュできて、また子供たちと関わることができれば、より有意義な時間になるのかなと」

■「地域クラブ」では大学生コーチが活躍

 部活の地域展開で受け皿となるのが「地域クラブ」です。

一宮市のテニスクラブ「PEACE」と「HOPE」には、萩原中を含む市内8つの中学校から約100人の生徒が参加し、毎週土日のどちらかで、1回3時間ほど活動しています。

中学1年生ら:
「部活は人数が少ないけど、地域クラブはいろいろな中学校の人とやったりする」
「想像以上に楽しいです。自分も上達しているつもりはあります」

指導にあたっているのは、大学4年生の富田誠也(とみだ・まさや 21)さん。中学時代、入山先生にソフトテニスを教わった縁もあり、地域クラブのコーチに手を挙げました。

コーチの富田さん:
「今の自分になれているのは、先生があの時あれを言ってくれたおかげだな…とかあるので。自分が教えた子が活躍している姿を見ると、教えて良かったなと思って、また次も教えたいなと、それの繰り返しですね」

一宮市では、既に64の地域クラブ(20種目)・約270人もの指導者が生まれているといいます。

一宮市学校教育課の担当者:
「理想としては、これから出来上がる地域クラブに参加していた子たちが大人になった時に、次の世代の子たちを指導者として育ててくれるような、良い循環のサイクルができた時に初めて、部活動改革がうまく進んだことになるのではないか」

■「もうちょっと子どもたちと…」教師からはホンネも

 一方、最後の夏の大会を前に練習に打ち込む、萩原中の部活の現場。男子ソフトテニス部顧問の入山先生からは、こんな本音も聞こえてきます。

入山先生:
「僕はもうちょっとやらせてあげたいなと思います。もうちょっと子供たちと、このチームで過ごしたかった」

同じ学校で共同生活を送る先生や友達と汗を流す、部活の魅力。2年生のチームリーダー・瀧悠太くんも、部活に愛着を感じています。

中学で部活に入ったのをきっかけに、ソフトテニスに没頭するようになった瀧くん。地域クラブにも参加はしているといいますが…。

2年生の瀧くん:
「同じ学校の子と出たい。仲が良いし、一緒にいて楽しいし、他の学校の子だとちょっと遠慮しちゃうというか。地域クラブだと別でお金がかかってしまうので、一緒にいられない子とかもいる」

1回ごとに参加費が500円ほどかかるという一宮市の地域クラブ。他にも課題はあると、市の担当者は率直に明かします。

一宮市学校教育課の担当者:
「費用負担に加えて、会場が自宅の近くにあるとは限らないので、送迎の負担も心配事としてあります。課題は様々あるので、子供たちがこれまでと同じように気軽に参加できる仕組みを整えることが、改革の中心かなと思う」

■たった4人の吹奏楽部…地域展開「できない」市も

 一方で、そもそも地域クラブが作れないという自治体もあります。

名古屋から電車とバスで3時間弱、新城市の八名(やな)中学校。7月中旬、最高気温が35℃に迫ったある日のこと。授業を終えた生徒4人が、何やら大きな荷物を手に学校前のバス停へ…。

中学3年生:
「友達もいないし、あまりなじみがない学校なので、すごく違和感しかないです」

違和感と大荷物を抱えながら市営バスに乗り込み、山道を揺られること約30分。たどりついたのは、お隣・新城中学校の音楽室です。

八名中吹奏楽部の部員は9人(※取材した日は2・3年生の4人)。この人数ではコンクールへの出場は事実上できないため、他校の吹奏楽部との合同合奏をしているのです。

10年後には、ほぼすべての中学校で生徒数が「半減」する見通しの新城市。

しかし、一宮市のような地域クラブではなく、学校の部活の形を残さざるを得ないといいます。その理由について、市教委の担当者は…。

新城市教育委員会の担当者:
「子供たちが『こういう習い事をしたい』という思いを持っていたとしても、それに当てはまる講師の方が見つからない」

“指導者不足”は特に文化部では深刻で、山間地域ではなかなか見つからないといいます。

新城市教育委員会の担当者:
「教員の働き方改革からスタートしていると思うのですが、(子供たちの)活動量はものすごく減っていると思います」

新城市では顧問の負担も考えて、部活動を平日は週2日、休日は月に2回までとしているものの、それに代わる受け皿=「地域クラブ」が用意できていない現状があります。

往復約1時間かけて移動したこの日の八名中と新城中の合奏も、練習できたのはわずか1時間半でした。

新城中学校吹奏楽部の原田映子先生:
「コンクールや地域のイベントなど行事はあるので、練習時間が欲しいんですけど、その時間がしっかり確保できない。でも行事はあるというところで、今はちょっと中途半端な感じなのかな」

■幕を下ろす部活…最後のミーティング

 部活としての“最後の夏”の大会に臨む、一宮市立萩原中ソフトテニス部。1年生から3年生まで、円陣を組んで気合を入れます。

萩原中ソフトテニス部の部員ら:
「最後の夏大、みんなで力を合わせて頑張るぞー!おー!」

1回戦は難なく勝ち進んだものの、2回戦で惜しくも敗退。“萩原中”として戦う夏が終わりました。

2年生の瀧くん:
「すごく上手いなと思いました。勝ってほしかったし、悔しい気持ちがあります」

入山先生:
「本当だったら、『次の夏の大会は、自分たちが頑張るんだ!』って、ここからがスタートなんですけどね。学校の顧問としての試合はこれがラストです。うーん…寂しいですね、やっぱり」

15年間の顧問生活に幕を下ろす入山先生。教え子たちに、最後のミーティングです。

入山先生:
「ソフトテニスを続けるかどうかは、またこれから考えてくれればいいけど、楽しいなと思ってくれたのであれば、また続けてくれると嬉しいし。中学校の部活動としては試合に出られなくなっちゃうけど、違うステージになったとしても、みんなは先生の自慢の生徒たち。とても良い試合をありがとう。みんなで戦えて最高やったな!じゃあ、全員起立!区切りにしたいと思います。ちょっと終わりたくねぇけどな…」

萩原中ソフトテニス部の部員ら:
「ありがとうございました!」

一宮市ではことし9月から、土日の部活が完全に「廃止」されます。教師のため、生徒たちのため、模索が続きます。

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