なぜ?自動車盗が“急減”…中東情勢が『盗難車ルート』直撃か 専門家は“リバウンド”を警戒

全国ワーストの被害が続いていた愛知県の自動車盗が、いま急減しています。その背景として浮かび上がってきたのは、遠く離れた中東で続く混乱でした。ホルムズ海峡の封鎖で盗難車の流通ルートに異変が起きる一方、専門家からは“リバウンド”を警戒する声も上がっています。
■全国ワーストの愛知で起きた“異変”
2026年9月、警察が公開したトヨタ・アルファード。5月に愛知県犬山市の住宅からおよそ3200万円相当のブランドバッグなどが盗まれた強盗事件で使われ、乗り捨てられていましたが、春日井市内で盗まれた車とわかりました。
自動車盗は2020年以降全国的に増加傾向で、“車どころ”愛知では2024年以降、全国ワーストの被害が続いています。
東海テレビ「ニュースONE」では、1年前の2025年10月からシリーズで、自動車盗の実態や、対策を伝えてきました。
窃盗グループの元メンバー(2026年4月放送):
「敷居低い、結構誰でも出来ちゃう。ゲームみたいな感じですね」
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カーセキュリティー専門店の店長(2025年12月放送):
「これがCANインベーダーになります。赤ボタンを押して認証が始まります。ドアミラーが開きます。スタートスイッチを押してもらうとシステムが立ち上がります」

そうした中で、ある変化が起きています。
愛知県警生活安全総務課 中川元宏室長:
「昨年、非常に多く発生しまして、(愛知県内で)1000件を超える自動車盗難が発生しました。今年は前年に対し、大きく減少しているという状況にあります」

愛知県内の自動車盗は、2025年4月には1カ月で151件発生していましたが、2025年の年末以降低い水準で、さらに2026年3月から減少が続いていました。
全国での発生件数でみても、自動車盗は大きく減っています。

増加しているバイクや自転車などの盗難被害や、やや減った空き巣などの侵入盗と比べても、自動車盗の減り方は明らかに大きく、何か特別な背景があるように見えます。
■ホルムズ海峡封鎖が“輸出ルート”直撃か
いったい何が起きているのでしょうか?
正規の手続きをして、中古車を海外に輸出している愛知県稲沢市の業者を訪ねると、2026年、大きなビジネスへの影響が出ていると言います。
中古車輸出・販売業 達ウマルさん:
「戦争の影響ですね。もう完全に戦争の影響で。中古車輸出業自体がうまくいっていない」

今年3月以降の中東情勢の悪化で、中古車の輸出が大きく減っているというのです。
達ウマルさん:
「主に今まで日本で中古車だったり、中古の部品っていうのは最も送られていた先が(UAEの)ドバイだったんです。そこが去年と比べて90%以上輸出が落ちているんです。ホルムズ海峡の問題とかで、うまくそこを通過できない」
実は、日本からの中古車の最大の輸出先は中東のUAE(アラブ首長国連邦)。

現地にある、巨大な中古車市場を経由して、アフリカなどに再輸出されていましたが、ホルムズ海峡の封鎖などで、このルートが途絶えているのです。
名古屋税関が発表した輸出入実績では、UAEへの中古車輸出が4月にはほぼゼロに。輸出全体でみても、前年度の上半期に比べ、およそ1割減少しました。

名古屋税関の担当者:
「中古車の輸出状況ですが、世界的に見ても今年2月から数量ベースで大幅に減少している状況。中東向けの輸出が特に大きく減っている」
日本で盗まれた車も、バラバラにするなどして不正に中東に密輸されるケースが多いとされ、警察や税関の水際作戦でもたびたび、輸出用のコンテナから盗難車が見つかっていました。

ホルムズ海峡封鎖の前から被害は減少傾向だったため、すべてを説明できるわけではありませんが、車の盗難に詳しい専門家は、影響は大きいはずと指摘します。
自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子さん:
「一番はホルムズ海峡封鎖だと思います。盗難車って日本から船で行く先って、ほとんどがUAEです。UAE自体が日本の中古車の輸入に対して制限がほぼない」

捜査関係者の一部からも中東情勢の影響で自動車盗が減っているという声が聞かれるほか、ある捜査関係者は「盗まれた車を分解して修理する業者を逮捕できたことは大きい。窃盗犯が持ち込む場所を潰せたから」と話します。
盗難車に別の車の車体番号を付け替えて自動車登録を申請した疑いで2026年8月に男女5人が逮捕された事件など(4人は不起訴)、盗難車の流通ルートを担う犯罪グループの摘発が、大幅に減少した一つの要因だという見方もあります。
■盗難対策を強化も…“リバウンド”への懸念
メーカーやユーザー側の対策の強化も、被害の防止につながっているとみられます。
トヨタの人気SUV「RAV4」は、アラームなどのセキュリティー機能を標準装備。さらに…。
ネッツトヨタ中部プラザ一社の担当者:
「スマートフォンと車の鍵、この2つが揃ってエンジンがかけられるように、そういう設定ができます。泥棒が今流行りのCANインベーダーとかそういう機能を使って、鍵を開けてエンジンをかけようとしても、スマートフォンのアプリの認識ができないとエンジンがかからない」

関係者の間で、被害の減少に貢献しているのではと注目されているのが2025年12月に発売されたトヨタ純正のセキュリティシステム。
通常のカギとともに、スマホがなければドアを開けたり、エンジンをかけたりできなくなる強力な仕組みで、特に被害が多いランクルやアルファードなどに、後から取り付けることもできます。
いったんは減少に転じている自動車盗ですが、今後の国際情勢の変化などで、“リバウンド”のように急増するおそれもあります。
中古車輸出・販売業 達ウマルさん:
Qイラン情勢終わったら増える?
「可能性はありますね。それはあってほしくないですけど、その可能性はあるので、警察の方も去年と比べてすごく活発に動いてくれて、どんどん捕まえて欲しいと思う」
自動車生活ジャーナリスト 加藤久美子さん:
「実際8月以降、盗難報告が増え始めている。緩和というか新しいルートを何か開拓したのかなと、ホルムズ海峡通らないで、何かしら(ルートを)見つけたのかなと思っています」
※東海テレビ「ニュースONE」では、自動車盗についての取材を続けています。car@tw.tokai-tv.co.jp まで情報をお寄せください。
2026年10月23日放送

