- ドラマオリジナルの人物・吉岡を演じる上で、どのような面を大切にしていますか?
- 原作の世界観を吉岡が壊さないように、という気持ちもありつつ、原作にない役だからこそドラマ版『ウツボカズラの夢』を引き立たせられたら、と思っています。吉岡は本当に真面目で熱い男なので、良い意味でこの作品のスパイスのような存在になれれば。
- 吉岡をどんな男だと思いますか?
- サラリーマンを7年間やった後、パッと思いついて捨て猫を救うためのNPO法人を立ち上げたっていうところからも、吉岡が情熱家で強い意思があることが分かります。普通、7年もの間、安定した生活を送っていたら、そのすべてをいきなり捨てるって迷いや不安があるはずです。でも吉岡はやりたいことを実現するため、前に進みました。そこに吉岡らしさが集約させているような気がして。今回は吉岡という“フィルター”を通して、人間の持つ熱さや真面目さってどういうことか、という点を表現できたらいいな、と思っています。
- とは言え、あまりに愚直な気もします。
- 生き方は不器用ですよね。それはそうですけど、人から信頼されるのは吉岡のような人間じゃないでしょうか。初対面の印象も悪くないはずですよ。自分で演じていて、言うものなんですけど(笑)。
- 吉岡と尚子の関係をどう思いますか?
- 簡単に言ってしまえばふたりは“不倫”かもしれないです。吉岡の想いは完全に愛だと思うし、尚子さんに対しては、怖いくらい真っ直ぐですから。とはいえ、吉岡は自分のせいで尚子さんの家庭が壊れることは望んでいない気がします。冷静に現実を見れば、自分と尚子さんは釣り合うとは思えないし、でも一緒にいたいし…。と、吉岡の中でも矛盾だらけなんですよね。
- 吉岡は最初、仁美のアドバイスに従い尚子に近づきました。当初は打算があったのか、それとも、もともと好意があったのか。実際演じて、松本さんはどう感じましたか?
- 最初から好意があったのだと思います。それで近づいてみると、『やっぱり素敵な人だな』と。そこからどんどん尚子さんへの気持ちが大きくなっている状態ですよね。NPO法人の資金問題があったにせよ、吉岡の尚子さんに対する誠実さを僕は感じているので、このドラマの中で一番まともなのは吉岡なんじゃないか、と思っているんですよ(笑)。未芙由、尚子さんを始めとする鹿島田家の人たち、仁美さんなどいろんな生き方がある中、吉岡を含めて誰が一番幸せなのか聞かれたら、僕は吉岡かな…という気がします。
- ドラマそのものの感想を聞かせて下さい。
- 作品自体が世の中の良い部分と悪い部分の両極端を描いていて、そのどちらがいいのかを問いかけているのだと思います。生きていく上でお金は必要で、子供がいたらある程度の水準の生活だってさせてあげたいはずです。半面、お金がなくたって幸せになれるだろうし、そういう人もいっぱいいるでしょう。でも、人ってそれまでの生活のレベルをいきなり落とすのは大変なことで…。このドラマを見ていると、何が幸せか、何か正しいのか。考えずにいられなくなるんですよ。吉岡もドラマ同様に、尚子さんに問いかけをしている気がします。世の中には高級なものがたくさんありますけど、高価でなくても素敵なものもたくさんあります。高くておいしいものもいっぱいありますが、安くてもおいしいものもいっぱいあります。吉岡は尚子さんに、『あなたはどちらを選びますか?』と。尚子さんはどちらを選ぶのでしょうね?
- 松本さんは未芙由のような女性をどう思いますか?
- 周りのことをひっかき回していますけど、未芙由の発言を聞いていると正論なときもあります。未芙由のような女性を信用はしませんけど、彼女のしていることを100%否定できないのも事実ですね。仲間のふりをして、その人の触れられたくない“パンドラの箱”を開けちゃうのも、『それはダメだろ!』って言いたいですけど、面倒なことに気づかぬふりをしてニコニコ笑って生きているほうが幸せなのかと言えば、それも違う気がして。未芙由のやっていることって生々しいから嫌悪感もありますが、“生きる”ってそういうことだから、彼女から目が離せないのもしれないですね。
- ところで松本さんは未芙由のように、ウツボカズラの要素はご自身の中にありますか?
- ないですね。仕掛けるのも、仕掛けられるのも嫌なので。常々、甘い物には罠がある、と思うようにして生きているんです (笑)。男からしたら“ウツボカズラ女”の悪い匂いが魅力的なのは理解できます。分かっているからこそ、近づきません(笑)。



