そのほかのキャストの皆さんの、撮影が始まった当初の様子もお伝えします。
 雄太郎役の羽場裕一さんは、初日に日が暮れてから帰宅する場面を撮影した数日後、高級レストランに未芙由を連れて行く第2話の場面を撮影。雄太郎は隙の無い着こなしで、店員に対しては余裕ある態度を。紳士然としながら、未芙由に接する際はどこかイヤラシさをにじませて。一方、志田さんはこの場面で時に思いつめたような、また時には何かを考えたり、何か企んだりしているような表情を見せます。そんな自在に変化するまなざしに、引き込まれてしまいました。

 雄太郎の愛人・杏子役の真木恵末さんと、杏子の恋人・秀幸役の鶴田亮介さんもこの場面から撮影に加わります。道路を隔てた場所で未芙由たちを監視している杏子たち。真木さんはパトロンの雄太郎を誰かに奪われる危機感を、鶴田さんは杏子の慌てぶりを見て、この状況が“ヤバい”ことに気づく秀幸のノー天気ぶりをどこかコメディタッチに演じていました。
 尚子の娘・美緒役の川島鈴遥さんと、仁美の息子・知也役の前田旺志郎さんは、都内の公園で会話する場面から撮影に入りました。川島さんと前田さんは、それぞれの家庭に問題がありつつ、それを受け入れているティーンエイジャーのさびしい気持ちをシニカルな演技で表現。笑って話しながらも、その声が乾いていたり、瞬時に表情を暗くしたり。若き二人の初々しく熱の入った演技は見応えのあるものでした。
 同様に見応えがあったのが、第1話の冒頭、未芙由と母親・幸惠(芳本美代子さん)のシーン。いつ亡くなってもおかしくない母親が話すことは、未芙由にとっては“理想論”でしかないもの。しかし否定することなく聞きながら、母親に表情が見えないところでは納得のいかない様子を志田さんが繊細に演じ、芳本さんも達観している者にしか言えないセリフを静かな声に、重みをにじませ語ります。芳本さんの表情は聖母のようでもあり、娘への言葉も優しさにあふれつつ、未芙由にとっては呪縛のようにのしかかるものでもあります。芳本さんは微妙なさじ加減で、幸恵のセリフに息を込めていきました。
 
 撮影開始から1週間が過ぎた頃、尚子が通うNPO団体の場面を撮影。団体の代表を務める吉岡役の松本利夫さんは髪を短くして、いつもとは違う雰囲気です。吉岡は本作の原作小説には出てこないドラマオリジナルの人物。松本さんは誠実な役柄を真っ直ぐに演じていました。吉岡は物語の中のさわやかな風のような存在ながら、この先どうなるのか…。親しげな尚子と吉岡を、仁美がどこか冷めた表情で見ていただけに、ここにも波乱の予感が‼?
 
 撮影が始まってから約半月。未芙由と鹿島田家の人々が揃う場面が撮影されました。鹿島田家の長男・隆平を演じる上杉柊平さんは、監督と隆平のキャラクターについて、相談。雄太郎や美緒が未芙由を歓迎していない中、優しく接する隆平は未芙由にとってどんな存在になるかはまだまだ謎。ドラマの冒頭、隆平のキャラクターをどう打ち出すべきか、いろいろ話していた上杉さんと監督は、隆平のある行動から役に“肉付け”をしていきました。
 鹿島田家が集った場面では、松原さんが静かながら周りを圧倒する存在感を見せ、さながら“久子劇場”と呼びたくなる一幕も。要所、要所でドラマを締める久子もまた、只者ではないと感じさせる松原さんでした。
 こうしてようやく第1話が完成。志田さんを始め、キャストの皆さんはセリフ回しに加え、印象に残る表情で、それぞれの人物の心理を巧みに表現しています。未芙由が何を思い、どう動くのか。また未芙由の出現は、鹿島田家を始め周囲の人々にどんな影響を及ぼすのか。第1話から見どころ満載の物語が展開していきます。8月5日(土)スタートの「ウツボカズラの夢」に、どうぞご期待ください!