インタビュー

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小日向眞澄 役 伊藤かずえ さん

2015.12.21

脚本家の中島丈博さんが書かれる作品への出演は初めてだとか。
最初に脚本を読んだとき、作品の持つ雰囲気は“昭和”っぽいし、セリフも時代がかったものが出てくるのに、携帯をはじめ出てくるツールは現代っぽいので、やはり独特だと思いました。どこか劇画っぽさがあるというか。完成した第1週を見たとき思ったのは、キャストの皆さんの感情表現が私の考えていたものより、さらに激しかったんです。『もっと、やっていいんだ』と思いました。
セリフはまさに、“中島流”という言葉がピッタリですね。会見でも“女衒”という言葉を初めて使った、とお話しされていました。
他にも『何だ、これは』という言葉やセリフ回しが続々出てくるんです(笑)。お母さん(萌子)との会話で出てきた、“伏魔殿”という言葉も聞いたことがなくて、調べました。『こんな言葉の使い方があるんだ』というおもしろさはありますね。妹とセリフを読み合わせしたときに気づいたんですけど、中島先生の作品って、ナレーションでなく、セリフで状況を説明していくんです。だから何回も同じようなことを、ニュアンスを変えて言うんですよ。会話をしていても、普通なら“そうよね”と相づちを打つところで、自分の感情をぶつけるようなセリフが出てくることもあって。また、そのセリフが独特なので、完璧に頭に入れておかないといけません。こういう脚本ってなかなかないし、眞澄はセリフが多いんですよ。『もしかして、私が一番しゃべっているんじゃない?』って思うほど(笑)。
伊藤さんほどのキャリアがあっても、セリフ覚えは大変ですか?
もう、必死。書いて覚えています。手書きしたものをクリアファイルに入れ、お風呂にも持ち込んでいます。セリフが多いので、ペンだこが出来ましたし、書き終えると肩こりがするほど(笑)。でも、それくらいしないと覚えられないですね。“ピクチャーメモリー”というか、書いて覚えて、自分が書いたものを“図柄”としてもう一度、頭の中に入れていく感じです。

演じている眞澄という女性については、どう捉えていますか?
登場人物の中で一番まともな人のような気がします(笑)。若い頃、お母さんに女優になるよう勧められても拒んだことがあったし、まともに人生を歩もうとしているんだけれど、周りに翻ろうされてしまう。ただ、それでも眞澄は自分を見失わないんです。普通に生きようとするし、真面目でブレない。もし私が眞澄だったら、ボロボロになっちゃいますよ。眞澄は世奈子さんにガンガン言われても、それを受け止める強さがあるし、どこか一歩引いてものごとを見ている気がします。
強さがある、と?
眞澄は18歳で出産を経験していますよね。それが大きいと思います。何があっても、子供を産むことを諦めなかったし、子供を産んだことで、母としての強さを得たのではないでしょうか。生まれてすぐの娘と引き裂かれた、というのも経験値として大きかったはずですよ。そのことで大人にならざるを得なかった。辛い出来事で、無理やり成長させられてしまったんでしょうね。
眞澄と生まれたばかりの娘を別れさせた、萌子が娘を大人にしてしまったんですね。眞澄と萌子の関係はどう思いますか?
私はこの二人って、似た者親子だと思っているんです。性格的には違いますけど、辿ってきた道は意外と同じで。結婚しないで出産してしまうのは、母娘とも愛に走ってしまったがゆえの決断ですよね。眞澄が大人になってからは、良いバランスだと思います。父親がいない分、お母さんを信頼しているし、夫や娘たちに相談できないことをお母さんに話して発散していますから。

先ほど、伊藤さんには妹さんがいるとお話しされていましたが、ぼたんと美輪子の姉妹愛をどう思いますか? ご自身と妹さんの関係に共通する部分は?
ぼたん(黛さん)や美輪子(逢沢さん)とも話していますけど、実際こういう姉妹は…。ぼたんと美輪子みたいに何かあると抱き合うなんて、私はしたことがありません(笑)。冷静に考えれば主人公たち姉妹も変だし、小日向家だって相当変だと思うんです。でも、どこかズレていたり、常識にとらわれてなかったり。そういう人たちの集まりって演じていておもしろいし、作品としても、魅力的なんですよね。
では、「新・牡丹と薔薇」のどんなところに、伊藤さんは魅力を感じていますか?
人間の感情がこれでもか、と描かれているところです。実際の世の中って、このドラマの中で起きる出来事よりよっぽど怖い事件がたくさん起きていますよね。それも最近はSNSでの誹謗中傷が発展して…というような、人の気持ちが見えない事件も多いじゃないですか。『新・牡丹と薔薇』は、物語自体は過激かもしれませんけど、人と人が思っていることをとことんぶつけ合っていくんです。私は正面から人と向き合う物語に、“救い”すら感じています。
視聴者の皆さんにはこれから、どんなところを期待してもらいたいですか?
物語は週を追うごとにより複雑に、濃厚になっていきます。転がるように話が展開していきますので、次に何が起こるか想像しながら、ご覧いただきたいです。でも、きっと皆さんの想像を超えることの連続になるはずですよ。
ところで、波乱万丈の眞澄ですが、幸せだと思いますか?
幸せ!? そうですね…。いろんな壁が立ちはだかりますからね…。なんだかんだ言って、家族に支えられて生きているので、そういう意味では幸せじゃないでしょうか。