毒とひまわり 〜名張毒ぶどう酒事件の半世紀〜

2010年6月19日(日)12時放送

ナレーター仲代達矢さんナレーター仲代達矢さん
今までナレーションの仕事はほとんどしてこなかったのですが、「毒ぶどう酒事件」について綿密に追っているこの番組に熱意を感じて、今回、参加させて頂きました。
これだけ執拗に追っていくのはテレビの特性を活かしたドキュメンタリーだと思います。人が人を裁くということはとても難しい。奥西さんが冤罪だとすると、こんな恐ろしいことはないですね。もっと客観的に冷静に語るナレーションもあると思いますが、今回、多少私の主観が入っているかもしれません。その私の思いも、この作品で表現できていればと思います。

東海テレビは、「名張毒ぶどう酒」事件を追い続けています。今回は、その第4弾、弁護団長にスポットを当て、事件を浮き彫りにします。

鈴木泉弁護士

「あなたを見つめる」「熱愛」「愛慕」。これは、ひまわりの花言葉。
弁護士の胸に輝く金色のバッジ、それは「ひまわり」である。
太陽に向かってまっすぐに伸び、花を開くその姿が、
「自由」と「正義」を表している。
鈴木泉弁護士。63歳。愛知県一宮市に事務所を構えている。
鈴木弁護士は、35歳の時、一つの事件に出会った。

『名張毒ぶどう酒事件』…。
昭和36年、三重県名張市で女性5人が毒殺された。
犯人とされた奥西勝死刑囚は、獄中から無罪を訴え続けていた。
鈴木弁護士は、27年前、わずか五人だった弁護団に加わった。
初代弁護団長の故・吉田清氏に話を聞き、1審の無罪判決と2審の死
刑判決を読み比べ、「こんな判決で、人の命を奪うことが許されるのか」
と怒りがこみ上げたのが、弁護団入りの理由だった。

奥西勝死刑囚

しかし、鈴木弁護士たちの再三の再審請求でも、裁判所の扉が開かれることはなかった。

2005年4月 名張弁護団 再審開始決定時の会見
2005年4月 名張弁護団
再審開始決定時の会見
2010年4月 名張弁護団 最高裁の差し戻し決定時の会見
2010年4月 名張弁護団
最高裁の差し戻し決定時の会見

再審への動きは紆余曲折を経ている。5年前、新らたな証拠の積み上げで「再審」=「裁判のやり直し」が認められた。
しかし、検察の異議申し立てにより、その決定は一転取り消し。
そして、今年4月、最高裁は名古屋高裁へ審理を差し戻す決定。

これは、いわば判断の先送り。弁護団は会見で「一点の光が差し込んだ」
と表現したが、奥西死刑囚の年齢は84歳。
この高齢で再審無罪までの道のりは厳しい。
会見する弁護団長の顔に悔しさが滲んでいた。

番組では、名張毒ぶどう酒事件への取り組みを軸に、鈴木弁護士を追い、知られざる弁護士の実際を取材しながら、開いたかに見える『重い扉』の意味を検証したい。