高井アナの空言舌語

東海テレビアナウンサー高井一が、正しい日本語の読みや、謂れをご紹介します。

2002/5/24
三、
ゼロでいいの?
 皆さんは電話番号を人に伝えるとき、どのように言いますか?
 変な質問だとお思いでしょうが、多分ほとんどの人が「ゼロ・ゴウ・ニの…」と言うはずです。でも、テレビのアナウンサーは「レイ・ゴウ・ニの…」と言っていることにお気づきだったでしょうか。
 0は零で「レイ」と読む。これはフジテレビ系列だけでなく、すべての放送局がそう決めているはずです。それは何故か。「ゼロ」=ZEROは英語だからです。
 何かにつけてよくやるカウントダウンを思い浮かべてください。「スリー」「ツー」「ワン」「ゼロ」なら問題ないのですが、「三」「ニ」「一」「ゼロ」となると どうでしょう。実際、こう言うことも多いのですが、これは日本語と英語の混合型で統一がとれず、本来正しい用法とはいえません。
  まるで重箱の隅をつついているようですが、アナウンサーはこんなことまで考えてしまうのです。
  では、一体いつ頃から0=零をゼロと言うようになったのでしょうか。
  私は、戦後の外来語大量流入によって、0は「零」から「ゼロ」にかわってしまったと推理しているのですが、いかがでしょう。
  それに「レイ」は舌を巻き上げて撥ねるように発音するのに対し、「ゼロ」は舌の動きが少なくて発音しやすいことも、零のゼロ化に関係がありそうな気がします。
  今や、駅の案内放送では「まもなくゼロ番ホームに入ります列車は……」とやっているし、NTT番号案内の音声も「ゼロ」を使っています。それにテレビでもCMでは「0120」のフリーダイヤルを「ゼロ・イチ・ニ・ゼロ」と放送しているのが現実です。結局「ゼロ」ほど日本語化した外来語はないといえそうです。
  それでも「午前0時」「0勝1敗」「テストの0点」のように、まだまだ生き残っている零(レイ)もあります。皆さんもこれから「零」と「ゼロ」の使い分けを、少しだけ意識してみて下さい。自分がどれほど「ゼロ」に染まっているかがよく分かります。