百八十二、
2010/4/9
アベック
フィギュアスケート世界選手権で、高橋大輔と浅田真央が共に優勝しました。各メディアがこの快挙を伝えるのに使った言葉が「アベック優勝」です。「アベック」、とは懐かしいですね。
入社当時、先輩から「放送ではアベックは使わない。『カップル』あるいは『二人連れ』とする」と教えられました。実際、ニュースでは「行楽地は家族連れや若いカップルで賑わい…」などとして、アベックとは言いません。
しかし、60年代はデート中の男女を指す言葉はアベックでした。それが70年代後半にはカップルにとって代わられました。調べてみると、「アベック」は仏語で、英語のwithにあたる言葉です。日本でのアベックは、本来の意味とは違う和製仏語だったのです。
現在、カップルは夫婦から恋人同士まで一組の男女を表すのに使います。他にペアもありますが、一対という意味合いが強く、食器や道具類がふたつ揃って一組という場合もペアです。バドミントンの「オグ・シオ」のように同性でもペアと呼ぶことは可能です。
高橋・浅田の優勝はなぜアベックだったのでしょう。「カップル優勝」「ペア優勝」、あるいは「コンビ優勝」は使えないのでしょうか。カップルは恋人同士みたいだからチョット使いづらい、二人一緒に滑ったのではないのでペアでもコンビでもない、ということでしょうか。
思い出すのが、かつての王・長嶋の「ONアベックホームラン」です。ONでなくとも、スポーツ新聞などでは今でも「アベックホームラン」を目にします。スポーツの世界だけ「アベック」が生き延びているのでしょうか。
考えてみるとONのホームランは、本来の意味の「王with長嶋」で使われたのかも知れません。その流れで解釈すれば、高橋・浅田を「アベック優勝」とするのは腑に落ちる気がします。以上は私の勝手な解釈ですが、死語になったと思っていた言葉が甦るのは嬉しいものです。“アベック”にはこれからも合いたいものです。