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オバケ坪井役笠原秀幸さんインタビュー!

2017.01.24 update

リテイク全ストーリーを通してキーパーソンとなっているオバケ坪井。そんなオバケ坪井を演じる笠原秀幸さんのインタビューをお届けします。

笠原秀幸さん(オバケ坪井信彦役)

最初に作品のテーマやコンセプトを聞き、どんな印象を持ちましたか?
僕らの業界の専門用語で、撮り直すことをリテイクと言います。それを、人生をやり直すことを指す言葉にしたのが面白かったです。僕はもともと『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のようなタイプスリップものが大好きで、前から自分が未来に行くとしたら、逆に過去なら?と考えていたんです。だから作品の内容に興味を持ちましたし、筒井さんと成海さんが出演されるとうかがい、より楽しみになりました。お二人ともこれまでに共演経験はありませんでしたが、とても好きな役者さんだったので、やっと一緒にお芝居をすることが出来ると思い、さらにテンションが上がりました(笑)。
坪井の登場シーンはインパクトがありました。服だけでなく、メガネや靴まで真っ白で。
未来から来た人は服が脱色される、という発想が面白いですよね。衣装は第1話で“未来人はこんな雰囲気”ということを坪井の服装を使い、強烈な印象を残さなくてはいけなかったので、試行錯誤しました。今のファッションとして、全身白でもおかしくないので、服だけで“未来人感”を出すのは、案外難しかったんです。そこで中日ドラゴンズの帽子のホワイトバージョンをかぶることにしました。ドラゴンズの帽子と言えば、紺を思い浮かべる方も多いと思います。それが白ということで、違和感が出るだろう、という話になって。
メガネは未来から来たときの白いまま、ということに坪井の“思い”を感じました。
単純に気に入ったっていうのもあるでしょうが、未来から来た坪井には知人もいないし、現代に居場所がないんですよね。自分が自分だと、未来から来た証としてすがれるものが唯一、あの白いメガネだったと思います。失ってしまったら、自分を証明するものが無くなってしまうと思っているほどの、実は“キーアイテム”じゃないでしょうか。
では、坪井を演じる上で大切にしたことは?
ずっと戸籍監理課の二人に捕まらず、追いかけられていたわけで、リテイク者の代表のような気持ちが少しありました(笑)。役としては、普通であることを心掛けました。坪井が現代に来た理由って本当に安直なんですよ。軽はずみに犯罪に加担し、それでも自分は大丈夫だと思っていたら警察に追われ、本屋で見つけた年表を手に『これさえあれば、過去で金儲けできるじゃん』と安易にタイプスリップしてしまいました。その時代に家族もいないし、むしろ失うものが何もないから、過去に来てしまった。決して頭が切れるタイプではないし、かと言って悪党でもなく、善人でもない。そういう意味でも本当に “普通”なので、話し方一つ取っても考えました。
現代でかなり金銭的に余裕のある暮らしをしながら、坪井はなぜか人助けするようになりましたが。
競馬場に現れ、かなりの大金を手にすることができたと思います。それで豪華な暮らしをしたものの、それだけじゃ人生は彩られないことに、ようやく気が付いたんでしょうね。それが坪井を通して、描きたかったことじゃないかと思っています。誰しも未来が分かればいいと思う瞬間も、もう一回やり直せたらと思う瞬間もありますよね。このドラマにおいては、それが可能になっているとはいえ、現代の自分は幸せにできていません。だから物質的には裕福になっても、坪井は現代の自分に何も影響も与えられずにいるから、虚しさがどんどん増していったのだと思います。
満たされるはずが、全然満たされなかった。まさに“代償”ですね。
劇中のタイムスリップって一度過去に来たら、未来に戻れないじゃないですか。それが大きいと思います。これまでの話で描かれてきたのは、『それでもいいから、戻りたい!』という人たちばかりでしたけど、坪井は考えなしに来たわけで。それで現代で暮らすうち、大変なことをしてしまったと気付き、苦悩するようになりました。考えた末、これから起きることが分かるなら、せめて人助けをしたいと思い至りましたが、この展開で坪井の人間性や優しさが出ましたよね。
ところで、初共演となった筒井さんや成海さんとお芝居をしていかがでしたか?
いつこの現場に来ても、筒井さんは新谷さんとして、成海さんは那須野さんとしていてくれたので、一緒にお芝居をしてとても気持ちが良かったです。年末、筒井さんと成海さんとこの番組のスタッフさんとで忘年会をしたんですよ。それでより結束が高まった気がします。筒井さんとは二人のシーンをどんな風に作っていくかお話しさせていただきましたし、気持ちとして自然に流すことができないときがあっても、実際の生活でも何もかもがスムーズにいくわけでないので、なめらかにいかないことも受け止めて演じられているのが印象的でした。筒井さんとは趣味やプライベートまで話すこともありましたし、『兄弟構成はこんな感じでしょう?』とか『血液型は〇型でしょう?』とか当てにくるんですよ。ちなみに全部その通りだったので、驚きました(笑)。
最後に、笠原さんは人生をやり直すための“リテイク”をしますか?
未来に行ったり、過去に戻ったり、妄想はたくさんしましたけど、実際には過去に戻るって選択肢はないですね。これから起きる出来事を、それも楽しいことだけでなく、大変なことも含めて受け止めたいです。何が起きるか分からず、不安だから努力をするし、ときにその努力に意味がなくて、また違うことに力を注いで、というのが楽しいですから。これから先、何が起きることを教えてもらったら、そこで努力することを止めちゃうはずです。僕の性格として(笑)。未来の自分もそこは分かっているはずなので、会いにくることはしないんじゃないかな…。