
愛知県の岡崎市役所に初登庁した中根康浩新市長が市長選で公約に掲げたのが、新型コロナウイルス対策として全ての市民への一律5万円の給付です。しかしその公約の実現には壁があるようです。
21日朝、岡崎市役所に初登庁した中根新市長。早速開かれた会見で…。
中根新市長:
「100%実現できると思っています。最終的に12月31日になってでも年内にということにはこだわり続けていきたい」
公約に掲げた「市民一律5万円の給付」の実現に前のめりの中根新市長。しかし、そこには越えないといけない様々な壁が…。
岡崎市の人口は38万人余り。市民全員に5万円を給付するにはおよそ190億円が必要です。
岡崎市の今年度の一般会計予算は1270億円余り。給付にはその15%を一度で使う計算に。年間の市の教育予算およそ168億円を超える額です。
中根新市長は、190億円の財源として建設が予定されているコンベンションホールの計画凍結や、およそ80億円の財政調整基金、災害時などの時のために貯めてある基金の活用を検討するとしています。
先日まで岡崎市の舵取りを務めていた内田康宏前市長は…。
内田前市長:
「市役所にいて税務担当者と収支の話をしたり、財政をかじっている人間として、そんな無責任な公約はできません」
ただ、規模は違いますが、政府が全国民に一律10万円を給付した際に一般会計のおよそ12%を使った例があるため理論上できなくはないとも言えそうですが…。
市長選で自民・公明・立憲・国民国政の与野党4党は前市長の内田さんを支援したため、中根新市長を支持する市議会議員は少数。5万円給付には市議会の協力が不可欠です。ある市議は…。
<岡崎市議>
「今回は5万円で有権者を買収、釣ったようなものだから」
「12月末までにやるというのは難しいのでは」
一方、岡崎市の幹部は…。
<岡崎市幹部>
「市長にやれと言われたらやるしかない。かき集めるしかないでしょうね」
一律5万円給付という大盤振る舞いの公約に市民は…。
中根さんに投票した男性:
「バラマキかなと思ったんですけど、もう一方の内田さんの方だとコンベンション施設はいらないかなと思ったので、だったら5万円もらえるし」
中根さんに投票した別の男性:
「中根さんの方はみんなの為に、コロナの対策の為に5万円を出しましょうと言っている。無駄な税金を使わないで、そういう本当の市民のために考えてくれる人が欲しかったんじゃないかな」
投票に行かなかった女性:
「無理だと思います。多いんで。結構人数が多いから無理だと思います」
内田さんに投票した男性:
「40万人市民がおって、そうすると200億だわね。そんな大金を市民に配って、また財政を悪化させてもしょうがない」
一律5万円給付という、選挙目当てとも取れる公約を掲げた候補が当選したことについて専門家は…。
愛知大学 後教授:
「ある意味、いい目の付け所で新人の候補者としては、一種のなんというかクリーンヒットを打ったという事になるんじゃないかと思うんですよ。コロナの状況とそれなりの財政力で初めてかろうじて成り立った話なので、どこでもかしこでも財政力を無視して広がるとなればそれは問題だと思うんですけれども」
中根新市長:
「これはできない理由は探せばいくらでも見つかるが、できる方向で物事を考えていただき動けば100%できるというふうに思っております」
果たして「5万円給付」は実現するのか。早ければ11月の臨時市議会に関連の議案が提出される見込みで、中根新市長と議会との間で論戦が繰り広げられることになりそうです。