岐阜市の中古車販売店が水没した車と明かさなかったうえ、車の代金を受け取っても納車していなかった問題で、被害者が販売店の社長を相手取り訴訟を起こしていましたが、名古屋地裁は27日、社長に代金の返還を命じる判決を言い渡しました。

 以下は、岐阜市の中古車販売店と、代金を支払ったものの納車されないと訴える客とのやりとり…。

客:
「納車いつになりますか?」

中古車販売店社長:
「えーっとですね、今日が13日…。ご意向をお聞きしたかったんですよ」

客:
「私は納車だけしてくれれば、それで何も言うことないですよ」

中古車販売店社長:
「ハイハイハイ。対応はさせてきてもらってますし」

 納車されなかった客が、車の代金の返還を求めた裁判。真相を明らかにすべきはずの被告の社長が一度も法廷に姿を見せないまま、裁判は判決の日を迎えました…。

 名古屋市の久世義晃さん(36)。今年2月、黒のワンボックスカーを購入しようと、岐阜市の中古車販売店におよそ270万円を支払い、納車を心待ちにしていましたが…。

久世さん:
「『どうなってますか』と。もう4月に入ってからだったんですが、確認したら『やはり遅れるから納車できません』という返答がございまして。二転三転して4月の中旬に納車できるよという話がありまして、喜んで車屋さんに電車で向かいましたら、向かっている最中に電話があって『エラーランプがついたから、今日は納車できない』という簡単なそれだけの電話で」

 販売店はそれらしい理由をつけて納車を20回ほど先延ばし、結局今も車を手にすることはできていません。

 さらに、不審に思った久世さんが陸運局で車の所有履歴を調べると、購入した車はなんと、九州豪雨で車内まで浸水した水没車…。こうした被害者は久世さんだけでなく、全国にいるとみられています。

 複数の関係者によりますと、販売店の社長は別の会社から「事故車」を安く仕入れて客に販売。その際、事故車であることを伏せていたといいます。

久世さん:
「めちゃくちゃですよね。それ詐欺に当たるんじゃないですかと」

 久世さんはこの夏、販売店の社長を相手取り、車の代金およそ270万円の返還を求める訴訟を起こしました。

 そして、迎えた判決の日…。

<平野望裁判官>
「被告に271万円の支払いを命ずる」

 名古屋地裁は販売店の社長に対し、代金270万円あまりを久世さんに返還するよう命じる判決を言い渡しました。一連の裁判で社長が法廷に姿みせることはありませんでした。

久世さん:
「こちらの要望が認められたという判決かなと思います。一番の無駄はやっぱり時間なんですよね。子どもと一緒に家族で楽しい旅行に行ったり、ドライブに行ったり、楽しい時間を車の中で過ごそうと思っていたものが、一気に破られて」

 訴訟を担当した弁護士によりますと、販売店の社長のもとには全国の被害者から訴状が送られていますが、受けとっていないことに加え、支払い能力がないとみられることから、代金などの回収の見通しは立っていないということです。