新型コロナウイルスの感染拡大で、愛知県稲沢市の「国府宮はだか祭」の「もみ合い」が中止となりました。密が避けられないためです。

 長い歴史の中で、かつて「ある人」の一言で中止になったこともありましたが、実はその時は…。

 天下の奇祭「国府宮はだか祭」。下帯姿の裸男たちが神男に触れて厄を託そうともみ合う勇壮な祭りで、毎年2月に行われています。

 前回は、愛知県の内外から裸男およそ8000人、20万人の参拝者が訪れました。しかし…。

(リポート)
「毎年こちらの参道は下帯姿の裸男達で埋め尽くされますが、新型コロナの影響で、来年のはだか祭のもみ合いが中止となりました」

国府宮神社の権禰宜:
「非常に寂しいですね。悪疫退散ですね、悪いものを追放すると。ですから本来、コロナウイルスを追放できればいいんですけれども、どうしてもコロナ禍には勝てないということですね」

 およそ1250年の歴史を持つはだか祭ですが、これまでにも織田信長の言いつけによって「祭り」が中止になったことがありました。

国府宮神社の鈴木さん:
「歩いている村人だったり飛脚を捕まえて儺追人(神男)にして、刀とかなぎなたを持った人たちが、境内に追い払うスタイルだったと思います」

 神事とはいえ力ずくで人を捕まえ、乱暴に追い回すのは危険ということで中止させたのです。

 しかし、祭りをやめた3年の間には、疫病が流行したり、飢饉に見舞われたりと災難が続いたことで、祭りは復活。江戸時代末期に、今のような祭りのかたちになって以降「もみ合い」が中止となるのは、1989年の昭和天皇崩御の時以来2度目のことなんだそうです。

 かつての神男で作る「鉄鉾会」の大野善光会長。

国府宮鉄鉾会の大野会長:
「私からやめるということは言いにくかったんですが、私にとってはだか祭りは一年の中で元旦よりも重いお祭りでございますので、それがないということは非常に残念」

 はだか祭りには欠かせない、厄を落とすための布などを扱うお店では…。

さはし呉服店の佐橋さん:
「はだか祭りっていうのは、本当に元気をもらいます。出ない方も。まち全体が寂しい感じがしますね。早く収まって次にはできるようにしてほしいですよね」

 国府宮神社によりますと、はだか祭りの「もみ合い」は中止となりましたが、それ以外の神事は感染対策をとったうえで実施する予定で、人々の厄を背負う「神男」もこれまで通り選ばれるということです。