新型コロナの感染拡大が続いていますが、今、介護の現場でクラスターの発生が相次いでいます。

「第3波」で愛知県では6つの高齢者施設でクラスターが発生しました。密な接触を避けることができない特別養護老人ホームで感染者が出たら、どういう事態に陥るのか。この夏、実際に入居者ら11人が感染した施設を取材しました。

 腰に手を当て、椅子に座るのを支える職員。ポーチからスプレーを取り出しさっと手を消毒してから、今度は別の高齢者の車椅子を押します。取っ手や手すりの消毒は、1日3回行います。

 名古屋市中川区の特別養護老人ホーム「あんのん」。この夏、過酷な事態に直面しました。

吉田施設長:
「8月21日に職員の感染発覚ということが起きまして、最終的には入居者さんが8名、職員が3名の計11名が感染したという形になっていますね」

 職員は当時、マスクだけでなく防護服や手袋、それにフェイスガードも着けて介護にあたりました。濃厚接触者として自宅待機を余儀なくされる職員も出て、一時ワンフロアを1人で担わざるを得ない状況に。

職員:
「10名ぐらいの方を(1人で)介護していました。排泄もお食事も、全部この格好でやってました」

吉田施設長:
「夜勤が終わった後に、そのまま日勤に入っていって、結局24時間ぶっ続けの勤務とか、そういったことは生じました。もちろん私も含めてですけど、20日以上ずっと休みはなしだとか。『(感染が)怖いです』というふうに言って退職者もありました」

 なぜ感染は広まったのか…。

「あんのん」の入居者は、70代から100歳以上の合わせて30人。ワンフロア10人で、ケアする職員はそれぞれ2~3人です。

 8月21日にまず1階の職員の感染が判明。そして27日に同じ1階の職員、翌28日に入院していた1階の入居者、その2日後には1階の入居者4人の感染が分かります。

 9月に入ると2階からも感染者が…。半月の間に11人の感染が確認され、クラスターに認定されました。レクリエーションや食事など、職員や利用者同士が接触する機会に感染したとみられています。

吉田施設長:
「『何で陽性者と陰性の方を一緒の空間に過ごさせておくんだ』と。この意見も本当にごもっともだなと、指摘を受けながら思うんですけれども。自分でご飯を食べることも、できる人とできない人がいらっしゃいますし、1人で勤務になりますので、10人を見なきゃいけないとなるとですね、個室に入っていたら9人ほったらかしになっているんですね。だから物理的に、食事を食べるといっても10人を1カ所に集めないと無理です」

 そこには、特養ならではの対策の難しさがあります。“認知症”です。

 施設内の様子を撮影した映像を見ても、利用者はマスクをしていません。着用を呼びかけても、嫌がってすぐに外してしまうのだそうです。

吉田施設長:
「(特養の利用者は)認知症がある方というのが基本になってきます。『感染しているからお部屋にいてくださいね』とか、伝えた時には『はい』って言ってくださいますけども、なかなか継続してやっていただくのができないので」