2014年、夏の高校野球といえば、甲子園もさることながら、明石トーカロ球場(兵庫)で行われた軟式野球の全国大会のことを覚えている人も多いのではないか。

 松井大河(当時、中京高校3年)。4日間にわたった準決勝の崇徳(広島)戦で、延長50回を1人で投げ抜き無失点に抑えた鉄腕だ。なお、準決勝だけで計709球も投げている。

 4日間で50回、一体どういうことなのか…。

 大会規定で延長15回で決着がつかなかった場合、サスペンデッドゲーム(一時停止試合)として翌日に試合を再開する方式を採っており、この準決勝は3度のサスペンデッドゲームを経て、両チーム無得点のまま4日目は延長46回から再開。試合は延長50回に中京が3点を取り、3対0で勝利を収めた。

 なお同日、この準決勝の直後に行われた決勝戦でも松井は登板し勝利、全国制覇の立役者となった。

 エース松井は卒業後、中京大学に進学し、準硬式野球部に所属。3年前の2018年、4年生となった松井はここでもエースとなり、全国大会へ導くと、チームは決勝戦へ。そして、決勝のマウンドへ上がった松井は、2014年の夏と同様、相手打線を完封し、九産大を1-0で下し、ここでも全国制覇の立役者となった。

 そんな松井は今、愛知県豊田市に本社を置きガス機器などの販売を手掛ける三河商事に務めながら、その企業チームで軟式野球を続けている。趣味はゴルフだという。

 先日、松井の姿は岐阜県内のゴルフ場にあった。父・志修(しのぶ)さん(54)らと楽しげにラウンドしていた。シングルプレーヤーの志修さんは、息子・大河のゴルフをみながら「下手くそだな~」と言いながら、その表情はなぜか嬉しそうだ。

 気になる大河の腕前は…スコア「108」。なんと、野球のボールの縫い目と同じ数ではないか。やはりこの男には野球と切っても切れない縁があるのか…そんなことを感じずにはいられなかった。

 ゴルフに関しては、「気が向いたときに打ちっぱなしに行く程度」という現状。まだ伸びシロだらけの25歳は、去年結婚し12月にはめでたく父となる。