
ノーベル物理学賞の受賞が決まった真鍋淑郎さんは、かつて名古屋大学・特別招聘教授を務めていたことがあり、当時について「非常にいい思い出だった」と語りました。真鍋さんと親交のある関係者からも祝福の声が上がっています。
真鍋さん:
「(受賞は)全くの驚きです。しばらくは毎年名古屋に行って、それで研究してたんですけども、非常にいい思い出が多いですね。大学院の学生やなんかとね、色々ディスカッションして、実に楽しい研究生活を送らせていただきました」
5日、アメリカの自宅で取材に応じた真鍋さん。名古屋での研究生活を「非常にいい思い出」と振り返っていました。
真鍋さんは2014年までの7年間、名古屋大学の特別招聘教授を務めていて、名古屋にゆかりのある研究者です。
真鍋さん(1989年):
「僕が温室効果の研究を始めたのが1960年代の初めですから、今二十何年やっているわけで…」
1989年に名古屋市内の講演会の際、真鍋さんにインタビューしたときの映像。1960年代に地球全体の気候モデルを開発し、大気中の二酸化炭素の濃度が地球の表面温度の上昇に影響することを、世界で初めて示しました。
真鍋さん(1989年):
「これからは、日本もできるだけ若い人にこういう分野に来ていただいて、長期的な立場で温暖化だとかオゾン層の破壊であるとか酸性雨の問題であるとか、そういうものを大いにやってほしい」
この時すでにアメリカを拠点に研究していましたが、日本の若者にも環境分野の研究にもっと参加してほしいと話していました。
それから18年後、名古屋大学の特別招聘教授となった真鍋さん。
名古屋大学の神沢博名誉教授:
「(受賞を聞いて)ビックリしましたね。(気候分野は)ノーベル物理学賞の対象になっていないと、われわれはみんな思っていたし」
こう話すのは、真鍋さんと同じ大気科学分野の研究をし、学会などで30年以上にわたり親交があった名古屋大学の神沢博名誉教授(68)です。
研究熱心な真鍋さんから助言をもらう仲だったといいますが、意外な弱点も…。
神沢名誉教授:
「日常生活が苦手で、切符を買ったりするのが。いつも奥さんがテキパキとなさってて」
実は真鍋さん、普段は新幹線の切符を奥さんに購入してもらっていたといいます。
新幹線では隣同士の席で、東京駅から神沢教授の目的地の大阪まで、およそ3時間喋りっぱなしに。
神沢名誉教授:
「ご自身の研究以外にも本当に色んな事に興味を持って、社会問題にも興味を持って、一家言持っておられましたね」
他にも、学会などを通じ親交があった名古屋大学の須藤健悟教授は、研究に打ち込む姿がとても楽しそうで印象的だったといいます。
名古屋大学の須藤教授:
「学会の発表も、普通だったらちょっと義務的に、つまらなさそうに喋る人もいるんですけども、真鍋先生については本当に楽しそうに、ご自分の研究を発表なさっていて、身振り手振りを入れて。若い学生さんや研究者の方から問いかけがあった時は、非常にニコニコしてたくさん答えられていた。科学・サイエンスへの好奇心は、かなり強いものをお持ちだったんじゃないかなと思っております。最近の話ぶりを拝見させていただいたが、あそこまではなかなか、名人の域だなと。研究の名人でもありますし、発表・喋りの名人でもあるんじゃないかなという感じがしますね」
そんな真鍋さん、好きな食べ物は意外なもので…。
須藤教授:
「ハンバーガーが好きだと聞いたことがありますね。アメリカ人だなと思ったことがありますけど」
コロナ禍で明るい話題となった真鍋さんのノーベル物理学賞の受賞決定。日本出身の受賞者は外国籍を取得した人を含め28人目となりました。