リニア中央新幹線の工事中に起きた事故で、現場のトンネルでは2回にわたり崩落が起きていたことがわかりました。現場の写真を見た専門家が指摘したのは、トンネル工事そのものの難しさです。

 27日、リニアの工事で初めて起きた死亡事故で、当時の様子がわかってきました。

 事故直後、現場のトンネルを撮影した写真。山積しているのは、掘削に使ったダイナマイトの発破で生じた岩石です。

 JR東海によると、男性作業員(44)が発破後に残った火薬がないかトンネル内を確認中、内部の表層が剥がれ落ちる「肌落ち」が発生。重さ600キロほどの岩石が崩落し足を挟まれます。

 助けようとした別の男性作業員(52)が近寄った際、今度は重さ2トンほどの崩落が発生。2人は巻き込まれ1人が死亡、1人が左足骨折の大ケガをしました。

 現場の写真を、トンネル工事に詳しい名古屋工業大学大学院の張鋒教授に見てもらいました。

名古屋工業大学大学院工学研究科の張鋒教授:
「岩盤の破砕具合から見ても、かなり良いように思われます。実際、発破が終わった直後が一番不安定なんです。(肌落ち事故を)すべて防げるかというと、現時点では無理だと思います」

 張教授によると、死亡事故につながるケースは稀ではあるものの、この工程では予測できない崩落が起きることもあると指摘。しかし今の技術では、人間が立ち入るしかないと解説します。

張教授:
「岩盤が非常に複雑なので、ロボットを使ったとしても実際に完全に(崩落のリスクが)分かるかというとやっぱりクエスチョン。経験豊富な作業員・現場技術者が判断して、どうしても人間の経験値が必要になってくる場合が多いんです」

 避けられなかった不運な事故。JR東海は山岳部での全ての掘削工事を一時中断としました。

張教授:
「特にリニアというのはものすごく注目度が高いので、事故を教訓にして二度とこのようなことが起きないように努力しなければいけないということです」