愛知県豊田市の川から用水をくみ上げる施設で、大規模な漏水が発生している問題で、現場では仮設のポンプを設置するなどの対応が進められていますが、大きな影響が続いています。

(リポート)
「大規模な漏水から3日目です。こちらに穴があるんですが、川の水はこの穴に向かって流れ込んでいるように見えます。川の水位も昨日よりだいぶ低くなっています」

 豊田市の矢作川から用水を取り入れる「明治用水頭首工(とうしゅこう)」で発生した大規模な漏水。現場の様子を18日と比較してみると、川の水位が下がり、砂が見えている部分が増えていることがわかります。

 上流部の川底に穴があき、水が下流に流れ出したため、取水口から水を取り入れることができなくなっていて、周辺地域への工業用水などの供給に大きな影響が続いています。

 現場では川に土のうを設置し、水が溜まりやすくしたうえで、工業用水をくみ上げるための仮設ポンプを19日までに42台設置しました。

 しかし、一部のポンプでうまく水を吸い上げられないトラブルが発生し、潜水士が川に潜って補修する場面もありました。

 一方、19日午前に下流の安城浄水場で、仮設ポンプでくみ上げた水の取り込みが再開。仮設ポンプがうまく稼働すれば、工業用水の必要量は確保できる見通しになりましたが…。

東海農政局の次長:
「農業用はこれから、確保できるまで対処していきたいと思っております。できるだけ早く対処をしていきたい。農家の方にはご迷惑をおかけしております」

 農業用水のための仮設ポンプの設置は進んでおらず、いまも周辺の農家への水の供給は止まったままの状態が続いています。

 その農業の現場を訪れると、田んぼに向けて勢いよく水が飛び出していました。田んぼに引いていたのは、家庭や農家から出て浄化槽を通った『排水』。

農家の神谷さん:
「使いたくはないです。排水の水ですからね。何とかするなら、排水路から汲み上げてでも水をあげないといかん」

 安城市でコメ農家を営む神谷力さん。農業用水が出ないため、本来は使わない排水でしのいでいますが、水田に必要な5センチの高さには達していないといいます。

 神谷さんが所属する「JAあいち中央」は、愛知県内の稲作に使われる種もみのおよそ半分を供給していて、水不足が続けば、来年のコメの生産にまで影響が及びかねません。

 そうした中、工業用水が優先され、農業用水が供給されていないことついては…。

神谷さん:
「水がいるのはお互いさまだと思うんですけど、時期的に私どもは今本当に必要な時期なものですから、少しでも分けていただけると」

 詳しい原因が分かっていない今回の大規模漏水。東海農政局は引き続き仮設ポンプの設置を急ぐとともに、川底の穴の応急処置を進める方針ですが、復旧のメドは立っていません。